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新幹線で奏でたピアノ
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僕は趣味で音楽をやっているのだが、音楽仲間に20代の女性ボーカリストがいて、とにかく歌がうまい。
この子と一緒にバンドをやっているときはよくSuperflyのコピーとかやっていたが、難しい歌を難なく歌いこなす。
後でギターを弾きながらその姿を見ては
(凄いなこの子)
といつも思っていた。
このボーカルの友達が結婚することになって、彼女が披露宴で歌をお願いされたとのこと。
まあ、彼女の歌唱力からしてお願いされるのは当然だと思う。
そして、曲の作成もお願いされ、本番は彼女のオリジナル曲を歌うということだった。
彼女の作曲でメロディーは完成したが、曲に合うコード(和音)がつけれないということで、バンドメンバーの誰かにコードをつけてほしいという依頼がきた。
僕もたまに作曲する。コードをつける作業とかよくやるので、僕が引き受けることにした。
もらった曲を聞いてみると、バラードな感じのステキな曲だった。
曲に付けれるコードは一つではない。オシャレな音を入れたりして、様々なコードが選択できる。様々な音を入れることにより曲自体をオシャレな感じにすることができるのだが、僕はそういった知識があまりないので、いらんことをせずに素直なコードをつけていった。
これでコードをつけるという作業は終わりだが本番はピアノの伴奏を披露宴会場で流してその伴奏のみで歌うとのことだったので、ピアノ伴奏の音源まで僕が作成することになっていた。
僕は簡単な音源を作成するとき、Macに標準でついている『Grage Band』という作曲用ソフトを使用するので、今回も『Grage Band』で音源を作成することにした。
このソフトはフリーソフトだがいろいろできるので当時は愛用していた。
「ジャーン、ジャーンとコードをシンプルに流すだけで良い」
とのことだったので、それほど作業に時間はかからない。
ちょうど、この週の金曜日に朝一移動で東京出張が入っていたので、この移動時間で音源を作成してしまおうと思った。帰りの新幹線は飲んでしまうから、行きの時間に仕上げようと思った。約2時間半、十分な時間だ。
当日、Macを持ちこみ新幹線に乗り込んだ。早速『Grage Band』を立ち上げて、鳴らしたい音のところへ音譜を打ちこんでいく『打ち込み』という作業に入る。
鳴らしたい音の鍵盤を鳴らすように設定するのだが、このとき音の長さ、強さなども併せて設定する。
このように音を打ちこんでいくだけの作業なので、打ち込みなら実際にピアノが弾けなくても音源が簡単に作れてしまうのだ。
もらったメロディーはiPhoneに入れていた。伴奏はMacで作成する。
なので、少しめんどくさかったがメロディーを確認するときはiPhone、伴奏を確認するときはMacという形で、いちいちイヤフォンジャックを差し替えていた。
コードは既につけていたが、実際に曲を聞いていると少しコードを変えたくなったりしてくる。こっちのコードの方がいいかな?いや、こっちがいいかな?と「ジャーン、ジャーン」とMacでコードを鳴らしながらいろいろ試していた。
新幹線が京都に着く。
コード変える作業に没頭していたので、進捗が遅れ気味。
(ちょっとペース上げていかないと)
そう思っていたとき、隣に座っていた男性から声をかけられた。
「すみません。音がちょっと…」
しまった!音もれてたんか…
そういえば途中聞こえにくくて音量を上げたりした。
「すみません!うるさかったですか。音小さく…」
ささってなかった…イヤフォンジャックが…iPhoneにささってた……この瞬間、顔面蒼白である。
「あの、本当にすみませんでした!!」
全力で謝った。Macの内蔵スピーカーから新幹線の車内へそのままお届けしていたのだ。しかもお届けしていたのは曲ではなく、
「ジャーン、ジャーン」
という、よくわからないピアノの和音。
それがひたすら繰り返されていた。
「音がちょっと…」
とかそんなレベルではない。
隣の人のみならず、車両の人の大半に聞こえていたのではないのか。自分では小さく聞こえるはずだ。イヤフォンと思っていたそれは、ただの耳栓になっていたのだから。
(ほんとうに、本当にすみませんでした!!)
と隣の人だけでなく、近隣の人にも心の中で謝った。
いつからだろう?新大阪を出てすぐ、このコードでもいいかなとiPhoneメロディを確認した。そのあとMacで作業を始めた。なので、多分新大阪出てすぐにこの状態になっていたと思われる。というか、隣の人は京都まで耐えてくれてたのか。15分くらいあったはずだ。
15分間、わけのわからない
「ジャーン、ジャーン」
という和音に耐えてくださったのか。それを思うと、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。それ以降は作業する気になれず
「ごめん、今日中に音源送るって言うてたけど、週末になりそうです。」
そうボーカルの子にLINEし、Macを鞄へしまった。近隣に座ってらっしゃったみなさま、新大阪から京都までの15分間。わけのわからない音をお届けしてしまい申し訳ございませんでした。
「あいつ、何してんねん?」
と思われたみなさま、ピアノでコードの音源を作っておりました。本当にすみませんでした。次からは、新幹線ではiPhoneの音源はMacに送って、Macのみで作業するようにします!!
(二度と同じ過ちを犯さないようにしよう)
隣で15分間耐えてくださった方をもう一度見て、心の底からそう思った。
この子と一緒にバンドをやっているときはよくSuperflyのコピーとかやっていたが、難しい歌を難なく歌いこなす。
後でギターを弾きながらその姿を見ては
(凄いなこの子)
といつも思っていた。
このボーカルの友達が結婚することになって、彼女が披露宴で歌をお願いされたとのこと。
まあ、彼女の歌唱力からしてお願いされるのは当然だと思う。
そして、曲の作成もお願いされ、本番は彼女のオリジナル曲を歌うということだった。
彼女の作曲でメロディーは完成したが、曲に合うコード(和音)がつけれないということで、バンドメンバーの誰かにコードをつけてほしいという依頼がきた。
僕もたまに作曲する。コードをつける作業とかよくやるので、僕が引き受けることにした。
もらった曲を聞いてみると、バラードな感じのステキな曲だった。
曲に付けれるコードは一つではない。オシャレな音を入れたりして、様々なコードが選択できる。様々な音を入れることにより曲自体をオシャレな感じにすることができるのだが、僕はそういった知識があまりないので、いらんことをせずに素直なコードをつけていった。
これでコードをつけるという作業は終わりだが本番はピアノの伴奏を披露宴会場で流してその伴奏のみで歌うとのことだったので、ピアノ伴奏の音源まで僕が作成することになっていた。
僕は簡単な音源を作成するとき、Macに標準でついている『Grage Band』という作曲用ソフトを使用するので、今回も『Grage Band』で音源を作成することにした。
このソフトはフリーソフトだがいろいろできるので当時は愛用していた。
「ジャーン、ジャーンとコードをシンプルに流すだけで良い」
とのことだったので、それほど作業に時間はかからない。
ちょうど、この週の金曜日に朝一移動で東京出張が入っていたので、この移動時間で音源を作成してしまおうと思った。帰りの新幹線は飲んでしまうから、行きの時間に仕上げようと思った。約2時間半、十分な時間だ。
当日、Macを持ちこみ新幹線に乗り込んだ。早速『Grage Band』を立ち上げて、鳴らしたい音のところへ音譜を打ちこんでいく『打ち込み』という作業に入る。
鳴らしたい音の鍵盤を鳴らすように設定するのだが、このとき音の長さ、強さなども併せて設定する。
このように音を打ちこんでいくだけの作業なので、打ち込みなら実際にピアノが弾けなくても音源が簡単に作れてしまうのだ。
もらったメロディーはiPhoneに入れていた。伴奏はMacで作成する。
なので、少しめんどくさかったがメロディーを確認するときはiPhone、伴奏を確認するときはMacという形で、いちいちイヤフォンジャックを差し替えていた。
コードは既につけていたが、実際に曲を聞いていると少しコードを変えたくなったりしてくる。こっちのコードの方がいいかな?いや、こっちがいいかな?と「ジャーン、ジャーン」とMacでコードを鳴らしながらいろいろ試していた。
新幹線が京都に着く。
コード変える作業に没頭していたので、進捗が遅れ気味。
(ちょっとペース上げていかないと)
そう思っていたとき、隣に座っていた男性から声をかけられた。
「すみません。音がちょっと…」
しまった!音もれてたんか…
そういえば途中聞こえにくくて音量を上げたりした。
「すみません!うるさかったですか。音小さく…」
ささってなかった…イヤフォンジャックが…iPhoneにささってた……この瞬間、顔面蒼白である。
「あの、本当にすみませんでした!!」
全力で謝った。Macの内蔵スピーカーから新幹線の車内へそのままお届けしていたのだ。しかもお届けしていたのは曲ではなく、
「ジャーン、ジャーン」
という、よくわからないピアノの和音。
それがひたすら繰り返されていた。
「音がちょっと…」
とかそんなレベルではない。
隣の人のみならず、車両の人の大半に聞こえていたのではないのか。自分では小さく聞こえるはずだ。イヤフォンと思っていたそれは、ただの耳栓になっていたのだから。
(ほんとうに、本当にすみませんでした!!)
と隣の人だけでなく、近隣の人にも心の中で謝った。
いつからだろう?新大阪を出てすぐ、このコードでもいいかなとiPhoneメロディを確認した。そのあとMacで作業を始めた。なので、多分新大阪出てすぐにこの状態になっていたと思われる。というか、隣の人は京都まで耐えてくれてたのか。15分くらいあったはずだ。
15分間、わけのわからない
「ジャーン、ジャーン」
という和音に耐えてくださったのか。それを思うと、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。それ以降は作業する気になれず
「ごめん、今日中に音源送るって言うてたけど、週末になりそうです。」
そうボーカルの子にLINEし、Macを鞄へしまった。近隣に座ってらっしゃったみなさま、新大阪から京都までの15分間。わけのわからない音をお届けしてしまい申し訳ございませんでした。
「あいつ、何してんねん?」
と思われたみなさま、ピアノでコードの音源を作っておりました。本当にすみませんでした。次からは、新幹線ではiPhoneの音源はMacに送って、Macのみで作業するようにします!!
(二度と同じ過ちを犯さないようにしよう)
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