パイルバンカー~我、悪を穿つ鉄杭なり~

絶対に斬れない刃

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第四部 『スパルタン』は死なない

第二十六話 稲妻は戦場を駆け抜ける

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稲光が光る。
それも上から下、
重力に引かれる様に落ちる様に、ではなく。

、光っていた。

光が走る度に何十・・・・・・・、
いや。
何百という数が焼かれていった。
だが、その数は減ることなく、
増える一方だった。
稲光の終着点。
そこに一人の女性がいた。
肩まで伸ばした蒼い色をした髪を自身の動きで揺らす。
振り返る。
そこには。
焼き払ったにも関わらず、
既に群れに埋め尽くされていたのが目に映る。
「・・・・・・・・・・っ!!!・・・・・・・・多いね!!!」
だけどね、と言葉を続けた。
「ここにいるのは、っ!!!」
直後。
彼女の横を一発のミサイルが飛んで行った。
大きさはさほど大きくはない。
故に。
ミサイルが駆け抜けて集団に直撃した後も彼女は立っていられるわけだ。
しかし、問題はそこではない。

誰がミサイルを撃ったのか。

彼女には一人の人物が思い浮かんでいた。
もし、彼女の他に訊くのであれば他の答えが返ってくるのかもしれない。
しかし、同じ答えが返って来るであろうというのは誰かに訊かなくても分かっていた。
何故なら、
ミサイルなど等ということをしているのは、ただ一人だけだからだ。
振り返る。
身体を揺らして、大きく息を吐く白い装甲に覆われたがそこにいた。
そのの名は知ってはいる。
だが、誰もがそうは呼ばない。
何故なら、
・・・・・・・ッ!?」
をそう呼ぶのが、暗黙の了解となっているからだった。
息を絶え絶えにしながらも、は答えた。
『ハァ・・・・・・・・・、ハァ・・・・・・・・、よぉ・・・・・・、ウルナ・・・・・・・。なんか・・・・・・・、困ってるか・・・・・・?何だったら・・・・・・、手伝っても・・・・・・・、良いんだぜ・・・・・・・?』
いや、私を手伝うより自分をどうにかするのが先じゃないかな・・・・・・・・・?
ウルナと呼ばれた女性は胸中でそんなことを思っていた。
・・・・・・・声には出せなかったし、出す勇気もなかったのだが。
咳払いを一つ。
「私の方はなんとか・・・・・・・。だけど、『砦』の方がちょっと・・・・・・ね。」
言いながら、煙が上がっている『砦』の方を見る。
どれほどの時間が経っているのか、
それは彼女には分からない。
もう既に反撃する手段を失ったのか、先程まで聞こえていた銃声は止んでいる。
今聞こえるのは、『砦』が攻撃を受け、壊れていく音だけだ。
その音が聞こえる度に、横に立つに何と言えばいいか。
それが分からなくなる。

完全武装要塞フルアーマー・フォートレス』というモノがある。


そう、、だ。
『旅団』と呼び、呼ばれた七人の集団があった。
その者たちは多くの者たちの道しるべとなるために、何かが起こるといつも先頭を立っていた。
死なせないため?
殺させないため?
それは誰も分からない。
だが、一つ分かることがある。
は全ての者たちの希望であったということだ。
その者たちが作った
決して誰からの侵入も、
誰からの侵略も完全に防いできた、
その要塞が今、陥落する寸前となっている。
最強と言われた『』と呼ばれる主を持っていた者たちがいても防げなかった。
それは自分たちには無理だと、
誰かを守って戦っていたとは違う、と。
そう言っている気がしたのだ。
故に、ウルナを唇を噛み締める。
伝説と呼ばれた『』がいなくても大丈夫だと、
私たちだけで大丈夫だと、
そう言いたかったからだ。
だが、現状はそうではなかった。
それが、
それだけが、悔しかった。

・・・・・・・・・・だが、は何も言わなかった。

ただ、鼻で笑うように笑った。
『へっ・・・・・・・・・・・、そりゃそうだろ・・・・・・・・・。・・・・・・・・、ウルナ・・・・・・。』
「で、でもっ!!でも・・・・・・・・っ、・・・・・・・。」
言外で悔しいと語る彼女の肩を、
は優しく、ポンと叩いた。
『いいか・・・・・・・・?モノってのはな・・・・・・・・・、壊れるもんだ・・・・・・・・・。壊れねぇもんなんて・・・・・・・・・・、そんなもんなんざ・・・・・・・、何処にもねぇ・・・・・・・・・・。』
いいか・・・・・・・?と言葉を続ける。
『別にな・・・・・・・・?壊れたって・・・・・・・・、いいんだ・・・・・・・・・・。壊れたら・・・・・・・、直せばいいんだからな・・・・・・・・。だが・・・・・・・・、問題なのは・・・・・・、そこじゃねえ・・・・・・・・・。そこじゃぁねぇのさ・・・・・・・・。』
言外に分かるか?と訊いている気がした。
顎に手を置く。
「・・・・・・、誰もが・・・・・・・、・・・・・・・・?」
恐らくは正解なのだろう。
は笑いながら、ウルナの肩を叩いた。
『そうだ・・・・・・・・。へっ・・・・・・・、分かるじゃねぇか・・・・・・。』
「そ、それは、私の『』も『』だからね。」
ウルナの言葉を聞くと、
はまた笑った。
『そうだな・・・・・・・・・。ああ・・・・・・・・、そうだな・・・・・・・。』
意味ありげに言うの方を向く。
・・・・・・・?」
その彼女の疑問に、
は中に液体が入った容器を渡すことで応えた。
『まだ・・・・・・・・、・・・・・・・?』
その疑問に、
彼女も笑いながら、
「もちろんだよっ!!!」
答えながら、渡された容器を手に持った。
蓋を開ける。
形容しがたい匂いが鼻にこびりつく。
だが、臆していては先に進めない。
飲む。
一口、二口。
喉を動かす。
徐々に空になっていき、
そして、何もなくなった。
すると、
先程まで気怠さがあった身体にやる気漲って来るではないか。
「この匂いがもう少し良かったら、文句はないんだけどね。」
ハハハッ、と笑う彼女に、
は再び訊いた。
『頼めるか・・・・・・・・・?』
その言葉に、
ウルナはの身体にコツンと拳を当てることで応え、
笑顔で答えた。
「・・・・・・・・・・・っ、任されて、っ。」
直後。
彼女は再び稲妻となって戦場を駆け抜けた。
『早いな・・・・・・・・・・。』
ああ・・・・・・・・・・・。
『早いな・・・・・・・・・・、あいつ・・・・・・・・。』
まだ呼吸が戻っていない。
だが、ウルナはもう出ている。
ここで自分が遅れるわけにはいかない。
『ああ・・・・・・・・・、そうだ・・・・・・・・・。』
ケンジは思う。
まだ、だと。
まだ、と。
そう思いながら同時に思う。
これからだ、と。
これから、と。
故に、
続けた。
いつもの様に。
誰でもない、
自分自身に言い聞かせるように。
言うようであり、
呟く様に。
口を開く様に、
閉じる様に。
ただ口にした。
『「死にたがりの大馬鹿野郎スパルタン」は・・・・・・・・、・・・・・・・・。』
ああ、そうだとも。
・・・・・・・・・・。』
何故なら、
『「死にたがりの大馬鹿野郎スパルタン」・・・・・・・・、だからな・・・・・・・・っ!!』
もう一度。
もう一度、身体に喝を入れて、
ケンジは戦場を駆けていく。




完全武装要塞フルアーマー・フォートレス』。
完全武装と言われ、呼ばれたその要塞は今。
攻撃を受けていた。
要塞とは言えども、動けるわけではない。
・・・・・・・・動ければ、それはそれでどうなのだろうとは思わなくもないが。
しかし、反撃の気配が全くなかった。
そのせいで、今まで攻撃をしていた『魔人種バイオス』は気付くことが出来なかった。
・・・・・・・いや。
、と言うべきか。
何故ならば。

誰も、ミサイルをそこにぶち込んでくるとは考えなかったからだ。

爆風が巻き起こる。
「ナ、ナンダッ!!!ナニガ起コッタ!?」
攻撃の指揮を執っていたのだろう。
一体の『魔人種バイオス』が疑問の声を上げた。
だが、は戦場。
そんな声などすぐに消えてしまう。
誰も誰が疑問して、
誰が答えたか。
そんなことなど考える暇はなかった。
この『要塞』の中には数少ない『人類種』の精鋭がいる。
つまり、ここを破壊すれば、『人類種』の希望は無くなる。
反抗など出来ない。
戦うことなど出来ない。
自分たちには力はないのだ、と。
そう、思い込ませることが出来る。
故に、
攻撃の手は止まない。
止むはずなどない。
そうだ。
誰もが考えなかったのだ。


最強だと恐れられた『』と呼ばれていたが、
に居て、
に居るなどと。

手に槍を持ち、投擲しようとしていた一体の。
背に衝撃が襲い、
胸部から鉄杭が出てくる。

「・・・・・・・・・・アッ?」
何だこれ?と疑問する前にその一体に、数多くの槍が投げ込まれる。
ハリセンボン。
そう形容できなくなった『魔人種バイオス』の身体をどかす様に、
一人の『機械人種メカノイス』が姿を現す。
『・・・・・・・・ったく。人を無視した挙句に、分かったら分かったで槍投げてくるとかお前らひどくねぇか?ちとは「お前は誰だ!?」とか訊けよ。普通は訊くだろ。』
えぇ?
『訊くだろ?・・・・・・・なぁ?』
ややふて腐りながらは意見を求める様に近くに居た『魔人種バイオス』に訊く。
だが、返ってきたのは期待するモノではなく、
「エエエエエイ!!!死ヌガイイ!!!」
罵声と共に炎弾が返ってきた。
その反応に、
は避けようともせずに、
ため息を吐きながら、頭を掻いた。
なぜ避けようとしないのか。
周囲に居た『魔人種バイオス』はそう思っていただろう。
避けなければ、炎に包まれて灰になるだけだというのに。
何故なのか、
その答えは、が炎に包まれる瞬間に判明した。
何故ならば。
「ナッ!?」
炎に包まれると思っていたのに、
はそこに立っていたのだ。
包むはずだった炎を消して。
故に、
魔人種バイオス』達は疑問した。
「オ前ハ・・・・・・・、ナンダ・・・・・・・?ナンナノダ・・・・・・・・?」
その疑問に、
は鼻で笑った。
『今更、その疑問か。出すにしちゃ遅すぎだわな。』
そう言い終わると同時に。
右腕を疑問を投げかけて来た一体に向け、
親指を
直後、
一つの乾いた銃声が周囲に響いて、
向けられた一体が倒れる。
『あ~、しまったな。お釣りもなしにってのはちと品がなかったか。う~む・・・・・。こういうのは慣れてねぇからよく分からねぇや。』
難しいねぇ、と悩み始めるを他所に。
「貴様ガ、誰デアロウトモ!!我等ニハ関係ナド!!!!」
槍を手に持ち一体が勢いよく進んでくる。
「ナイワァァァァァァァ!!!!」
ため息。
『だから、はダメだって言ってるだろうが。』
再び銃声。
咆哮し、飛び掛かろうとしていた一体が倒れる。
魔人種バイオス』達は恐怖した。
自身を恐れずに立ち向かってくる。
更には引くこともしてこない。
それは、自分が強いと分かっているからか?
自身よりも強い相手など、と。
そう思っているが故に、
は恐怖せずに、
恐怖を与えるというのか。
戦うのではなく、
ただ話しかけに来たというたったそれだけで。
それだけの理由で来た者に自分たちは消されるのか。
支配しようと企んでいた自分たちに、
支配されてなるモノかと立ち向かうのではなく。
支配しようとする者に疑問するというたったそれだけのことをするために、
それだけの行為の為に来て、打ち倒そうというのか。
多くの者はこう思うだろう。

くだらない、と。

誰もが鼻で笑い、笑いを含んだ声で言うだろう。
だが。
だが、目の前にいるは違った。
笑うこともなければ、
言うこともない。
そう。
ただ答えを待っているだけなのだ。
だが、問題はそこではない。
その答えに答えられる者がいない、
それこそが、ここにいる者たちにとっては問題だった。
の背後で稲妻が駆け回っている。
稲妻が駆ける度に、
仲間たちが焼かれていく。
今度は自分たちか、と。
恐怖を感じるが、
それよりも大きな恐怖が目の前にいる。
稲妻に焼かれるのではなく、
たった一発。
たった一発の弾丸。
それだけで死ぬ。
死への恐怖が周囲の『魔人種バイオス』達に伝播する。
しかし、彼らは答えなかった。
答えられないからか。
いや、そうではない。

で応えずに待っていれば焼かれることはないからだ。

ため息を吐く。
『あ~、はいいから。』
適当に、という様におもむろに右腕を上げて、一体に狙いをつけ、
押し込んだ。
銃声。
一体が倒れる。
再びため息。
『そういうわけだ、お前ら。』
いいか?
『答えるのなら俺は待つが、答える気がなけりゃ撃つ。答えても間違えたら撃つ。』
まぁ、それでも。
『お前らがどうしようとお前らを一体残らず倒すってのは決まってるんだがな。』
の言葉に一体が抗議する。
「デ、デハ、最初カラ・・・・・・・・・。」
その一体の言葉は正解だったのだろう。
は笑いながら左腕を上げて六つの銃口と、
いつの間にか右手に握っていた銃口をに向けた。
『そういうことだ。』

『お前ら、「魔人種バイオス」には最初から選択肢なんざないんだよ。』

そうが呟いた直後。
左右合わせて七つの銃口が、
火を吹いた。
一体、一体を倒していくように、
両腕を開いていく。
死から逃れる様に、
目の前にある脅威から逃げる様に、
魔人種バイオス』達は。
攻めることを忘れ、
逃げるために、
『砦』を背にする様に駆けていく。
だが、は攻撃の手を緩めない。
軽い音と、
重い音が、
テンポを刻むように弾丸を弾き出していく。
一つ、
また一つと、
弾丸が撃ち出される度に逃げ惑う『魔人種バイオス』は。
一体、
また一体と、
屍を増やしていく。
その様子を見る者はこう思うだろう。

は悪魔を滅ぼす鬼神だ、と。

そう思う者たちが多い中で、
を知る数少ない知り合いたちはこう思うだろう。

ああ、、楽しんでやってるな、と。

攻撃の手が止んだことを不審に思って『砦』から出てきたエルミアは、
ただ純粋にそう感じていた。
は自身の主である。
その為に、援護するためにこちらから攻撃を加えてもいいのかもしれない。
だが、
の場合はそうではない。
それが楽しんでいるなら尚のことだ。
楽しみを邪魔されたと思われて不快な気分にさせてしまうからだ。
分かってくれれば、そうはならないが、
分かってくれなければ、しばらく時間が掛かってしまう。
・・・・・・・と言っても、三日くらいだが。
たった三日ならば特に問題はないだろうと思われるかもしれないが。
その三日で
くだらないことで口喧嘩をして、
仲直りが出来ないままに、
ということもあるのだ。
それが分かっているのだろう。
不快な気分になるのは短くなっているのかもしれない。
だが、変わってはいないかもしれない。
何故ならば。



とすれば、エルミアに出来ることはただ一つ。
こうして己の主たるを見守り、
に手を出そうとする輩を倒せばいい。
であるがしていた様にすればいい。
それは簡単な様に思えて、
同時に。
・・・・・・・・・・・・・難しいですね。
どうしたものか、と悩むようにエルミアはそっと息を吐く。
だが、吐いたことで解決されるわけもない。
屍を増やしていくに向かって、多くの魔法が向かって行く。
周囲を焦がし燃やしていく業火、
辺りを徐々に凍らせ砕いていく氷風、
地を割りながら立つモノを指していく地針、
後方で響く稲妻にも負けぬ音量で空気を割く雷。
それらが向かって行く。
いくらなんでも無事では済まないだろう、
そう思った者たちはいたかもしれない。
だが、



誰もが望んだ希望を、
誰もが祈った望みを。
嘲笑うかのように、
白い装甲に身を包んだは立っていた。
その光景を見て、誰もが恐怖し、
戦慄した。

誰があんなに敵うのか、と。

そう思う者たちを他所に、
その姿を見て、
勇気づけられる者たちがいた。
誰もが諦め、
望みが絶たれたと感じていた。
だが、
その姿は、
そう感じていた者たちにとっては、
正に希望だった。
故に、
誰もが思った。

は誰なのだろうか、と。

名は知れてはいない。
知る者が誰もいない。
あれほどの力を持つ者を知らぬ者などいるはずがない。
『砦』にいた者たちは誰もがそう思っていた。
そして、こうも思っていた。

誰かが、を知っているはずだ、と。

でも、誰が・・・・・・?
そう考えた直後だった。
魔人種バイオス』のが終わったからか、
右手に握った黒光りしていたモノをと、
は周囲を見渡した。
『・・・・・・・さて、と。これで周りのは終わったか。・・・・・・・・まぁ、周りって言っても「砦」の周りだけどな。・・・・・・・・ウルナの方はまだ片付いてないみたいだし、援護に向かった方がいいか?いや、でもな・・・・・。』
うむむ、どうすっかな、と。
悩み始めたに向かって、
誰よりも早くにエルミアは駆け寄って行った。
110ッ!!よくご無事で!!!」
『・・・・・・・・・・・・・あっ?』
一瞬、
誰なのかよく分からなかったはそんな声を出して、
『・・・・・・・・おお、エルミアか!!!お前も無事で何よりだ。』
「い、いえ、貴方ほどではありませんよ。」
『おいおい、「完全武装要塞フルアーマー・フォートレス」をしてくれたのによく言うぜ。』
そう言ったの言葉に、
エルミアは表情を曇らせた。
「・・・・・・・申し訳ありません、110。貴方方が御作りなられた『要塞』を。」
『あ~・・・・・・・・・悪い悪い。俺が悪かったから、なっ?そんなに暗くなるって。別に直せばいいってだけなんだから。』
落ち込むなよ、と言うの言葉に、
「そう・・・・・・・、ですか・・・・・?」
疑いつつもエルミアは顔を上げた。
『ああ。ああ、そうだとも。お前らが無事で、「要塞こいつ」はボロボロになった。自分の本分がやっと果たせたんだ。「要塞あいつ」も嬉しいだろうさ。』
まぁ、
『この戦いが終わったら、前よりもいい感じのにしないといけないだろうが、な。』
エルミアに、
は、
ケンジは笑うように言った。
・・・・・・・・・・・よく頑張ったな。
攻撃の手は容赦なく掛かってきたのだろう。
ところどころ、損傷が目立つ。
大きくヒビが入っていたり、
壁が融解していたり、
既に完成品としてそこにあるモノを、
どうしたかったのか。
いくら何でもこれは酷いと思いつつ、
・・・・・・・・・・・・直せるとこは完璧に直してやるからな。
『旅団』の七人がいれば、すぐに終わるだろうけどな。
そんなことを思いながら立っていると、
「ああ、ごめん。、終わったよ。」
『お疲れさん、ウルナ。どうだ、久々に骨が折れた感想は?』
ようやくが終わったのか、
髪を風に流しながらウルナが寄って来た。
「ja。そうだね・・・・・・・、やっぱり、『魔人種バイオス』は嫌いだよ。」
『へぇ~・・・・・・。なんでだ?』
答えなどだいたい分かっていながらもケンジはウルナにそう訊いた。
その質問に、
彼女はわざとらしくため息を一つ吐いて、
「だってさ・・・・・・・。あいつら、数は多いわ、魔力態勢あるわで一発で倒せないんだもん。一回、倒せなくて何回かといけないし。私、嫌いだな。」
頬を膨らませながら答える。
頬を膨らませながら言う彼女の反応は可愛さがあるモノだ。
だが、話している内容は断じて可愛いと感じられるものではなかった。
そうであっても、
ケンジは笑った。
『だろうな。「旅団」の連中、全員が嫌いだったし。』
ああ、
『勿論、俺もな?』
何故なら、
『最初の頃は魔力障壁で防ぐわ、魔法使ってくるわ、回復魔法で回復するわで腹立って、頭に来てありったけ爆薬、火を点けて爆発させたパーティーしてたからな、俺。』
懐かしいな、と。
昔を思い出しながらケンジは呟いた。
機械人種メカノイス』は魔力がない。
その為、魔法などとは一切使うことが出来ない。
それ故に、魔力障壁など展開されたらどうにもすることは出来ない上に、
攻撃魔法を受けた際にはどうにもすることが出来ない。
更には、ダメージを与えても魔法で回復されるわ、
蘇生魔法で復活するわで、対処の仕様がなかったのだ。
その仕様に頭に血が昇ったケンジは、
『アイテムボックス』にあったありったけの爆薬を、
その文字通り
点火してお祭り騒ぎをしていたわけだが。
・・・・・・・・・そう言えば、『電磁式六連投射砲塔レールガトリングカノン』作って、潰そうぜとか言ってたヤツがいたな。
んな持ちにくいモノを作って使うヤツは何処にも居ないだろうに。
ったく、誰だよ、そんな『夢物語ロマン』武器、作ろうぜとか言ったの。
・・・・・・・・・・俺だわ。
最終的に発射構造に悩んで電磁式ではない『挽き肉製造機ガトリングランチャー』になったのだ。
だって、電磁加速投射砲レールガンの仕組みなんざ、分からないし。
いや、分かってたけど六連にどうやってするのか分からなかったし。
・・・・・・・・・・難しいもんだな。
ため息を吐く。
そのため息に二人は顔を見合わせた。
・・・・・・・・・・どうしたらいいかな。
どうしたら、いいのか。
己の欲を特に話したりなどしない、
が何を思い、
何を願うのか。
それは付き合いが長いウルナも、
を主に持つエルミアにも分からなかった。
仮に。
理解出来るモノがいたとしても、
その人物はここには居なかった。
何故ならば。

その人物は地上ではなく、天の上にいたのだから。
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