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第一章

ぼくのすてーたす

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 彼は、ひとり荒野に立っていた。
――目に見えるのは、ほとんど何もない、ひたすら広い草原だけ。
 自分の手足を見て、すでに装備された皮鎧を見て、ようやくあれは現実だったのかと受け入れる。

 キャラクターは作ったが、確認するにはどうしたらいいのかとか、聞くのを忘れたことを今さら気付く。


キャラクターステータス

為我井ためがい 勇樹ゆうき

キャラクターLv.1

【体力 :12】
【器用度:16】
【知力 :10】
【生命力:10】

【HP:200/200】
【MP:240/240】

種族:ドワーフ

スキル
創作の心得 Lv.1

魔法
--

【装備】
全身鎧
<地竜の皮鎧>

マント
<亜竜のマント>

武器1・細剣
<白薙>

武器2・弓
<鳴弦乙女>


 とりあえず彼はほっとした。
 種族はドワーフになっているが、まぁランダムだそうなので仕方ないか。モテなさそうだなぁ、エルフとかモテそうなのが良かったなぁ。
 ステータス全般はとりあえず見ることが出来た。ならば、可能な限りその詳細を見たい。
 まずはスキル。

スキル
創作の心得 Lv.1

 ドワーフ専用スキル。
 製作系スキル使用時に自動発動。
 大成功率を0.1%上昇させる。

 いきなり突っ込みどころ満載だった。
 まず、製作系スキルだが、見たところ、現状彼に製作スキルらしきものはない。
 すぐに得られるものならいいが、習得するのに苦労するようなものだったら最優先で取らないともったいない気がする。しかもそれで得られる上昇率は0.1%。1000分の1の確立だ。
 いっそ使わないというのも手か、と思いつつ次の項目へ。

<地竜の皮鎧>
[ステータス]
 系列:皮鎧
 防御:5
 魔法防御:5
 属性:地
 防具レベル:1
 質:良
 耐久:70/70
 使用者制限:為我井ためがい 勇樹ゆうき
[説明]
 グラウンディアの岩のような皮を加工した鎧。
 見た目ほど防御力はないが、とても軽く、動きやすい。

 見た感じものすごくゴツい鎧だ。
 確かにそれにしては軽いなぁと思っていたが、ドワーフは力があるイメージだったので、むしろそのおかげかと思っていた。
 ついでに「グラウンディア」について後で調べよう、と覚えておくことにする。

<亜竜のマント>
[ステータス]
 系列:マント
 防御:5
 魔法防御:5
 属性:風
 防具レベル:1
 質:優良
 耐久:80/80
 使用者制限:為我井ためがい 勇樹ゆうき
[説明]
 何匹かの亜竜の内皮、主にグラウンディアとスウィーフィアの内皮を鞣した皮で作られたマント。
 非常に薄い皮を合成して作られているため、盾のように使用しても合成した皮が剥離することはない。

 鎧の質と比べて、質がいいらしい。
 また名前が出たグラウンディアのほかに、スウィーフィアという名前も出て来た。
 地竜のマント、ではなく亜竜のマントなので、恐らくスウィーフィアというのも竜の一種なのだろうと推測しつつも、やはり後で調べる候補に覚えておくことにする。
 次は武器だ。

<白薙>
[ステータス]
 系列:細剣
 攻撃:20
 属性:闇
 武器レベル:1
 質:優良
 耐久:100/100
 使用者制限:為我井ためがい 勇樹ゆうき
[説明]
 ルイルティアの骨で作られた、白い刃を持つ細剣。
 骨をとある技術で極限まで鍛え上げているため突いても薙いでも折れにくいが、万一折れた場合には修復不能となるため、取り扱いに注意。折れる前に修理すべし。

 骨、と聞くと確かに骨に見えて来るが、知らなければ金属にしか思えない重厚な見た目だ。
 が、なるほど。これもドワーフだから軽く感じていたのかと思えば、やはり元々軽い素材だということなのだろう。そしてルイルティア。また調べる単語が増えたようだ。
 耐久が同じ優良のマントより高いのは、やはり使う頻度が高い方が耐久設定は高いということだろうか。

<鳴弦乙女>
[ステータス]
 系列:弓
 魔法攻撃:15
 属性:聖
 武器レベル:1
 特殊能力:鳴弦
 質:極良/ユニーク
 耐久:300/300
 使用者制限:為我井ためがい 勇樹ゆうき
[説明]
 セイクリッドの枝で作られた弓。
 しなりの良いセイクリッドをとある技術で弓にしたもの。
 恐らく二度と同じものを作れる者は現れないだろう。

 これは当たりなのだろうか。ユニークだから当たりな気がする。
 レア度的に、比較するものがないので何とも言えないが、まず他のと比べて圧倒的に耐久が高い。攻撃力が低いのが気になるが、特殊能力が付いているのでとても期待できる。

 とにかく一度町に行きたいところだ。

 モンスターとかいるんだろうか、という恐怖もそうだが、装備を観察している間に、すでに夕日が沈もうとしているのだ。いや、説明の文字は読めるのだが。

 それにしても、町はどっちだろう。

 見渡す限りの草原。建物などひとつも見当たらないし、そもそも暗くてあったとしてもわからないか。高い建物でもあればいいが、何度も言うが見渡す限り何もない。当然ながら、ドワーフに空を飛ぶ技術などはない。

――と、ふと、腿のあたりに何かを感じた。

 ワンテンポ置いて、聞き覚えのあるポップな音楽――電波ソングをポップと言っていいなら、の話だが――が流れる。
「えっ?」
 さすがに信じられず、それでも惰性でその振動源を探る。

「――え、うっそマジか」

 彼が予想したものがそこにあった。
 高校に入ってすぐ、親に頼んで中古で買ってもらって以来、大事に大事に扱ってきたモノだ。
 少し動作が重くなったりしていたものの、風呂と学校の時以外は常に手に持って暮らして来た。

 スマートフォンだ。

 流れる電波ソング――アラームに設定していた曲だ――をフリックして止め、お約束の電波チェックをするが、やはり圏外という表示に苦笑してしまうのは、まぁそこまで期待はしていなかったものの、少しは「もしかしたら」という感情があったのかもしれない。
 ともかく、とりあえず「あと他の持ち物は」などと一通り自分の持ち物を探る。

 2つあった。

 ひとつは、服。
 鎧の下には、現実で来ていた服をそのまま着ていた。
 ドワーフになったからか服のサイズが体に合わせて変化していたが、むしろそれはありがたいことなので無視することにする。

 ひとつは、金。
 正確には、ポケットに財布が入っていた。
 コンビニのポイントカード各種や銀行カードは使えないだろうが、小銭は金属だし、この世界の通貨がどんな材質か次第では、もしかしたら価値があるかもしれない。いや、その逆に全く使い道がないという可能性はあるが、今は考えないでおこう。

 そうして、彼はそれらを携帯のライトを使いながら確かめて、ようやく少しだけ実感した。

 為我井ためがい 勇樹ゆうき。確かに装備たちにはその名前があったが、自分の体がドワーフへと変化した今、実は少しだけ自信がなかったのだ。
 だから実感できたことは、彼には嬉しいことだった。

 何故なら、これで彼は胸を張って言えるのだ。
 自分の名前が、為我井ためがい 勇樹ゆうきである、と。
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