銀と灰の世界

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プロローグ

#4

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「ただいまー」

玄関から音がして、母さんの声が聞こえた。

「あ、起きてたの翼、だめよー、あんまり寝すぎると。目に悪いんだって」

そう言って声をかけてきた母さんは買い物袋を抱えていた。

「手伝ってもらおうかと思ったけど、あんたよく寝てたから。あー、重かった。特売だったから買い込んじゃった」

 ・・・・・なんだ、買い物に行ってたのか。それなら書き置きでもしといてくれたらよかったのに。

「珍しいね。こんな遅くに買い物にいくの。」

「遅く?何言ってんの。こんな真昼間に。まだ寝ぼけてるの?」

 ・・・・・は?昼間?今は夜じゃないか。いくらなんでもそんなに時間が経ってるわけがない。あの不気味な夢だってそんなに長く感じた覚えはない。精々1時間程度だろう。
 そういえば、あの目眩も治ってるな。病院には行った方がいいかもしれないが取り敢えずはよかった。

「本当に大丈夫?寝ぼけてるのだけならいいけど、最近あんたぼーっとしてるから」

 母さんが心配したように声をかける。最近?確かに頭がぼーっとするのはあるけれど、それは昨日見た夢から今日にかけてのはずだ。
 そんなに心配させるほど普段の僕は気が抜けているのだろうか。僕は僕はが心配になってきた。

「うん、たぶん大丈夫。けどちょっと心配事があって、後で相談するよ。取り敢えずお腹すいた」

「はいはい。それじゃ作るから、少し待ってなさい」

 母さんがご飯を作り始めると僕はソファーに座ってリビングのテレビを着けた。そしてニュース番組を見た。
 そこに映っていた日付は、僕が眠りについた時から2日後の土曜日のものだった。

「・・・・・・え?」

 ・・・嘘、だよな。冗談だよな。だってさっき寝て起きたばかりだぞ?

「母さん今日何曜日だって?」

「だから土曜日だって」

 自分の息子がまだ寝ぼけていると思って軽くあしらうように母さんが答える。
ちょっと待てよ、どうしてこんな事が起きている。テレビの日付も確かに僕が知っているものよりも2日進んでいる。母さんも当たり前の事のように今日は土曜日だと答える。

 それなら、僕は昨日何をしていた?その記憶がない。母さんが何も不思議がっていないということはそのまま学校に行っていたのだろうか。でもそれこそ不気味だ。僕は記憶のないまま行動していたことになる。
 いや、記憶というよりも意識がすっぽりと抜けてしまっていたみたいだ。そう考えて、自分の身に起きた事が急に怖くなった。
 嘘・・・だろ。
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