大昔の小説

シャイ

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年下くんと年上くん

①ちゃんと訊いとけよ。

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過去作

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年下×年上です。

とにかく年上が
強気です。

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「やめろ!抱きつくな!」

抱きついてきた後輩の浅倉あさくらを押しのけた。何が楽しくて男の浅倉と抱き合わなくちゃいけないんだ。

黒野くろの先輩!いいじゃないですか~!減るもんじゃあるまいし」
「いいや!俺の生気がお前に吸い取られる!」
「そんな能力ありません!僕はただアナタと付き合いたいんです!」
「ちょ、ここ学校!大声で叫ばんでくれ!」

と、いいつつも最早これは学校の名物となっている。流石に男子校だけあって恋愛対象が男に向けられるということが多い。
しかし、いや、でもまさか自分がその対象になるなんて思わないだろう?しかも、こんなくりっとした目に可愛らしい顔の男子に告白されるなんて…。俺はいたって普通で、いたって平凡…のはず…!
どこをどう見て恋愛感情を抱いたんだろうか。

「黒野先輩!僕はアナタの事が好きなんです!先輩の穴、掘らせてくださいよ!」
「っざけんなー!可愛い顔して、下品なこと言ってんじゃねー!」
「じゃあ、下品じゃなかったらいいんですね!先輩の排出器官に僕の性器を挿れさせてください!」
「変わらんわー!」

あーだこーだと廊下で男二人叫びながら言い争う俺らを最早止めるものは誰もいない。寧ろ、面白がって「付き合えー!付き合えー!」という声もあがる。ふざけんな、俺は面白くもなんともない。
ギッと浅倉を睨みつけると、可愛らしい瞳に涙の膜が張り出して俯いてしまった。この場面で、悪者扱いは絶対俺。でもな、俺は知っている。コイツのは演技なのだ。可愛い顔を利用して周りの者をたぶらかしてんだよ。しかし、俺には通用しないぞ。何度、それで騙されたか。

「先輩は…、そんなに僕のこと嫌いですか…?」
「ああ、嫌いだね」

ふんと威張るようにして言い放つと、彼は涙の溢れた瞳で俺を見た。

「…、そうですか…。それも…、そうですよね。男の僕に告白されても気持ち悪いだけですもんね…。あの…、今までごめんなさい。これからは、もう付きまといませんから…!」

そう言うなりして、走って行った浅倉。あれ?なんか、今日は…違う…。妙な違和感に俺は少し苛ついた。そうだ。どうせまた、明日俺のとこにやってきて「付き合ってください!」とかなんなり叫ぶに決まっている。
そう勝手に解釈した俺は何事もなかったかのように教室に戻った。


ーーーーーーーーーー


「…俺はどうしてこう…アイツのことで頭を悩ませなくてはならんのだ…」
「黒野があの子に酷いこと言ってるからじゃない?」
「浅倉にはあれぐらいで十分だ!」
「おっと、俺はあの子とは言ったけど浅倉君とは一言も言ってないよ?」

ばっと横の友達、上谷かみやを睨みつけた。コイツは2年生に上がってからの友達で今は仲良く喋ってたりする。

「くそ…、この野郎…、嵌めたな!」
「はは、やっぱり気になってんじゃない。いつも来るはずの浅倉君が今日は来なくてショックだったんでしょ?」
「…、う…。…そんなわけ…、むむむ…」

ショックと言うよりも意外だった。毎日、嫌というほど俺につきまとって散々好きという言葉を吐きにくるのに。それがアイツの普通だと思ってて…。

「ま、ぶっきらぼうに扱われてお前のこと嫌いになったんじゃない?」
「嫌いで結構。そもそも俺のどこを好いたのわかんねぇし…」
「ふぅん…?」

うーん、と意味あり気に唸る上谷。なんだよ。なにか間違った事言ったか、俺。

「まあ、黒野がそう思ってんならそれは無自覚というんだろうね」
「は?無自覚…?」
「なんでもない。それよりさ、次の5時間目の授業、数学だよ。サボらない?」
「あ、いいな。じゃあジュースでも買ってくるかなー」

ふんふんと鼻歌を歌いながら教室を出ようとしたら上谷に腕を掴まれた。何故かその上谷の掴む手が異様に痛い気がして…。

「ジュースなんて買ってる時間ないよ。それに、これから楽しいゲームするんだ。早く行こうよ」

ニコッと笑った上谷に一瞬恐怖を垣間見たような感じがしたが、気のせいとして片付けた。ていうか楽しいことするなら尚更飲み物とか飲みながら遊びたくねぇのかな。時間ねぇっつってるからそういうことなのかな。

「ま、まあ、暇さえ潰れればいいしな。じゃ、あの教室に行くか」

あの教室とは、もう誰も使っていない教室。使うとしても多分物置ぐらいだと思う。サボる時はいつもそこでサボってるわけで…。

「じゃあ、行こうか」

そろそろチャイムがなるから生徒達が集まり出した教室を出た。
今日はスッゴいムカつく日だ。毎日来てた浅倉が来なくなって俺は苛つき気味。
それに対してムカついてる俺もウザい。とにかく、今はそんなことは忘れてこの1時間はゆっくり過ごそうなど考えていた。


ーーーーーーーーーー

以下🔞

「いやー…、いつ来てもここは本当に汚ねーな…」

パンパンと床の埃を払って自分の座る場所を確保する。が、しかし、上谷が急に俺を組み敷いてきて尻と言わず背中全体が埃だらけとなってしまった。

「ちょ、何すんだよ…!どけよ…!」

腕に力を込めて上谷を押しのけようとするがびくともしなくて。こいつってこんなに力あったっけ…?

「今日はさー、浅倉が来なくて本当ラッキーだったよ。こうして黒野と二人きりになれたしね」

いつの間にかに取られた胸元のネクタイを腕にくくりつけられ自由を奪われた。こういうタイプは暴れれば暴れるほどキツくなるタイプだ。下手に暴れないほうがいいのはわかりきっているのだが抵抗をやめると、どうしても負けたような気がして…。

「上谷!お前、ふざけんな!解けよ!」
「ふざけてなんかないよ。俺はいたって大真面目」

そういう奴ほどふざけて見えるのは俺の特権。とにかく、上谷の手から逃れようと身をよじるが体の上に乗っかられているためどうしようもなかった。

「1時間は長いようで結構短い。楽しもうじゃないか、黒野…」
「…っ…ふざけんな……、んっ…!」

自分でもあまり弄らないというのに。胸の突起を押し潰すようにしてこねる手つきに俺はびくりと体を震わせた。

「黒野って感じやすいんだ」
「ゃ…、め…っ!…はっ…あ…」

次第に敏感になっていく体。胸からの刺激に反応する己に俺は驚いた。女じゃあるまいし、胸からの刺激だけで立ち上がったものだから凄い羞恥にみまわれた。
それも、相手は同級生の男。屈辱的だった。

「…ん?黒野ー?これは何かなー?」

膨張した熱が収まりきらずズボンの下から押し上げているそれを撫でる。

「あっ…、ゃだ…っやめ…ろ……!」

自分でしか触れたことのないそこに他人の手が触ることによって更に体は敏感になっていった。

「しっかり感じてんじゃない。やっぱりここは素直だね」

いいこいいことあやすようにさする上谷の手つきに焦れったさを感じる。
だけど、もっと触ってなんて口が裂けても言えるわけがなく。

「う…、ふぅ……っ」
「黒野やらしー。あんなに可愛い浅倉君も惚れるわけだ」

「…わかってるなら、黒野先輩から離れてくれませんか?」

毎日、嫌というほど聞いていた声に目を見開く。どうしてここに?今授業中で、助けてくれる人なんて誰もいない筈なのに。

「浅倉君かあ…。どうして君がここにいるのかな?俺達、今いいとこなんだ。邪魔しないでくれる?」
「ふざけんな!俺はお前となんか…、…あっ…!」
「黒野は黙ってて」

ねっと起立を握られ反抗出来ず。こんな姿、浅倉に見られたくなかった。

「……、…」
「わかってくれたかな?」
「……ろ…」
「え?」

俯いたから泣いているのかと思ったら大間違いで。急に上谷を見上げた浅倉の瞳はあの可愛いくりんとした瞳ではなく…。

「失せろっつってんだよ」


ぎりっと上谷を睨みつけた瞳は、まるで肉食獣のようだった。

「…浅倉君さあ、黒野に付きまとうのやめたんじゃなかったの?」
「はあ?一時だけに決まってんだろ」

俺はこんな浅倉は知らない。あの可愛らしい容姿からはとても想像できない姿だった。その時の浅倉がどういう訳か、かっこいいと思ってしまった俺はずいぶんいかれている気がした。

「おい、黒野」
「……?」
「俺はお前が好きだ…」

いつもと違う告白。同じ「好き」なのに、今日の「好き」は凄く心に響くような…。毎日散々言われていた「好き」より全然嫌ではなかった。
俺は顔が紅潮していくのを感じた。

「あ~あ、もう~!俺、完全に悪者扱いじゃん。つまんない~」
「ふん。言ってろ。てか、その前に黒野からどけ」
「はいはい、退きますよ~だ。すっかり俺の息子も萎えちゃって…。やっぱり浅倉君なんて大嫌い」

はあ~あ、なんて溜め息をつきながら俺の上から退く上谷。そのまま手を後ろにあてて、鼻歌を歌いながら出て行った。
それを確認した浅倉は、俺が身動きをとることを許さない腕のネクタイを解く。

「あの…、俺…」
「無理に言わなくていい。気持ち悪いんだろ?」
「いや、違う…そ、じゃなくて…」

俺が言いたいのはそんなことじゃなくて。ありがとうよりも先に言わなくてはならないことが…。

「俺、今日さ…、浅倉が来なくて正直ショックだった…。あんなに毎日来てた浅倉が当然のように来ると思ってて…。それで、俺…なんかムカムカしてきてさ…」

静かに聞いてくれる浅倉に俺も淡々と話を続けた。

「だ…、だから、ここでこのイライラをスッキリさせたいと思う」

赤くなった頬を隠すようにして俯いた。恐らく、今の俺の声はちゃんと聞いてないと聞こえないくらいのボリュームだと思う。だから、

「ちゃんと訊いとけよ…」

そう前置きを添えて小さく呟いた。

「俺…、は…多分……浅倉のこと…、が好き…なんだと思う…」

言い終えた途端、浅倉に強く抱きしめられた。くっくっと笑い声が聞こえる。

「多分か…、黒野らしい」

そして、そのままキスをされ、くしゃりと浅倉の顔が甘い微笑みに変化した。

「て、てか!俺のほうが先輩なんだぞ!浅倉の分際で俺に恥かかせんじゃねぇ!」
「はいはい…、それはどうもすみませんでした。黒野先輩」
「それはそれで苛つくー!」

浅倉だから「愛してる」なんて、絶対言ってやらない。せいぜい「好き」までだ。

「あ、先輩。エッチは次、しましょうね」
「ふざけんなー!!!!」

授業中の教室に俺の叫び声はさぞかし響いたことだろう。
そんな俺の平凡を奪われたコイツに一生つきまとってやろうと決心した俺であった。

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