上 下
2 / 7
序章 プロローグ 始まり……。『ウィズ ファントム ハート』

一夜……。

しおりを挟む



「ねぇ……? シてたでしょ……?」





「えっ!? し、シてない!!」





 俺は、ようやく床から│這《は》い上がり、彼女と向かい合わせに座りつつ……部屋の入り口近くの浴室とトイレの扉が開けっ放しになっているのを、チラリと後ろ目に振り返り確認する。



 「何のことだ?」というワザトラシイ言葉の代わりに│生唾《ナマツバ》を一瞬ゴクリと飲み込んだ俺は、振り返り様に彼女の瞳を一瞬チラリとだけ見て、すぐに視線を落とした。



 アレなはずの彼女の顔と目。

 直視出来ない真夜中の凍りついた時間。



 本来、アレなはずの彼女との遭遇で、恐怖で金縛りとかにあい身動きの取れない状況下のはずなのだが、俺は、別の意味で凍りついている。

 これが、金縛りなのか……?

 気まずい……。

 身動きが、取れない……。



 しかし、俺は│俯《うつむ》きながらも、薄ボンヤリとした彼女の浴衣から覗く、隠しきれない白い胸の│輪郭《ライン》を、どうしても見てしまう。

 けれども、彼女の身体の向こうに透けて見える部屋の隅っこを、言い訳も出来ない自分自身の│体裁《ていさい》を保つために見つめ続けていた。





「私ってさぁ……。ま、良いか……。男の人が、シてるの見たことなかったからさ。君が、シてるのをジックリ見ちゃった」





「えっ!? み、見たって?」





 「何のことだ?」と。

 とぼけようの無い俺の心臓が、正直に反応してドキドキしている。

 彼女の正体よりも、突きつけられた自分自身の恥ずかしさに、手に汗を握る。



 もし、彼女の正体が、アレならば……。

 真夜中の「ゾッ」とする時間のはずなのに、やり場の無い俺自身の羞恥心と目の前の彼女の口から発せられた言葉とに挟はさみ撃ちをされ、固まる俺。





「君ってさぁ……。なかなか、立派……だよね?」





「な、何がっ!?」





 思わず、顔を上げてしまった俺。

 いや、ようやく別の意味で、俺自身が凍りついていた時間から解放される。



 俺の目の前で、ちょこんと正座している彼女と改めて目が合う。

 マジマジと俺の目を見つめる彼女の瞳。

 アレなはずの彼女なのに、やっぱり可愛い。



 よく見ると、まだまだ│歳《トシ》の端も行かない若い女の子のようにも見える。

 なぜか、アレなはずの彼女の│表情《カオ》が、血色が良い。

 フル回転する俺の頭の中の疑問よりも、俺の心臓の鼓動が、ドキドキしていて止まらない。



 「明日も仕事だから」と。

 まっとうな意見を言って、さっさと布団にでも潜り込めば良いものを、俺は、目の前のアレなはずの彼女を放っておくことも出来ず、さらに言うと、俺の頭の中の悶々とした気持ちと鳴り止まない俺自身の心臓の高鳴りに再び支配され、身も心も身動きが取れなくなっていた。





「シて……あげよっか……?」





「えっ……!?」





 高鳴る俺自身の心臓がドクドクと脈打ち、さらに加速して鼓動を刻み打ちつける。 





「嘘ウソ。明日も、早いんでしょ……?休まないと、身体に毒だよ?」





「い、いや。寝れない……かな」





「もう……。しょうがないわね……。じゃ、する?」





 眠れないのは確かに身体に毒だが、もはやアレなはずの│彼女《キミ》と出会ってしまった真夜中のこの時間こそが、毒。



 こういう今の自分自身の状況こそが、取り憑かれているとでも言うのだろうか?



 アレなはずの彼女の金縛りから解けた俺は、ヨロヨロと立ち上がり、再びベッドへと……潜った。





 スゥ……と、立ち上がるアレな彼女。

 ホワ~ン……と、漂う彼女の良い香り。



 アレなはずの彼女が……。

 ベッドへと、入って来た……。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

【R18】淫魔の道具〈開発される女子大生〉

ちゅー
ファンタジー
現代の都市部に潜み、淫魔は探していた。 餌食とするヒトを。 まず狙われたのは男性経験が無い清楚な女子大生だった。 淫魔は超常的な力を用い彼女らを堕落させていく…

女の子がいろいろされる話

ききょきょん
恋愛
女の子がいじめらたり、いじられたり色々される話です。 私の気分であげるので、性癖とか方向性はぐちゃぐちゃです、よろしくお願いします。 思いついたら載せてくゆるいやつです。。

バスト105cm巨乳チアガール”妙子” 地獄の学園生活

アダルト小説家 迎夕紀
青春
 バスト105cmの美少女、妙子はチアリーディング部に所属する女の子。  彼女の通う聖マリエンヌ女学院では女の子達に売春を強要することで多額の利益を得ていた。  ダイエットのために部活でシゴかれ、いやらしい衣装を着てコンパニオンをさせられ、そしてボロボロの身体に鞭打って下半身接待もさせられる妙子の地獄の学園生活。  ---  主人公の女の子  名前:妙子  職業:女子学生  身長:163cm  体重:56kg  パスト:105cm  ウェスト:60cm  ヒップ:95cm  ---  ----  *こちらは表現を抑えた少ない話数の一般公開版です。大幅に加筆し、より過激な表現を含む全編32話(プロローグ1話、本編31話)を読みたい方は以下のURLをご参照下さい。  https://note.com/adult_mukaiyuki/m/m05341b80803d  ---

俺の彼女が黒人デカチンポ専用肉便器に堕ちるまで    (R18禁 NTR胸糞注意)

リュウガ
恋愛
俺、見立優斗には同い年の彼女高木千咲という彼女がいる。 彼女とは同じ塾で知り合い、彼女のあまりの美しさに俺が一目惚れして付き合ったのだ。 しかし、中学三年生の夏、俺の通っている塾にマイケルという外国人が入塾してきた。 俺達は受験勉強が重なってなかなか一緒にいることが出来なくなっていき、彼女は‥‥‥

処理中です...