この結婚、喜んでお受けします!~婚約者をボコした皇女は隣国の皇帝に嫁ぎます〜

瑚珀

文字の大きさ
上 下
7 / 8

8 出会い

しおりを挟む


 ー13年前ー
 「あら!あなたの髪、まっしろでお空の雲みたいね!」

そう言いながら少年の髪を触る少女

シルバーブロンドにオリーブ色の瞳の可愛らしい笑顔を向けるその子に、一瞬で心を奪われた少年

 「くもなんていわれたの、はじめてです…」
 
 「そうなの?こんなにキレイな白なのに!」

 「ゆきのようだと、いわれてます」

 「雪?見たことないわ!」

 「おやイヴィ、雪を知らないのかい?」

少女の横から現れた茶髪の少年が雪について語り出す

 「真っ白で冷たくて、何もかも飲み込んでしまうものさ

人の命を奪うこともある恐ろしいものだよ」

 「…」

 「まぁヨハネス、物知りなのね」

まあね!と鼻を伸ばす少年

 「でも、この子の髪の毛を見て?
まっしろでふわふわで、

陽の光にあたってキラキラしてるのよ!

雪みたいって言われてるなら…
きっとこの子みたいにふわふわで柔らかくて、

キレイでロマンチックなものなはずよ」

うっとりと白髪の少年を見つめ、頭を撫で続ける少女


 「ありがとう…ございます」

 「いーえ!そうだ、いいこと教えてあげる!」

ずいっと耳元に近づく少女
突然の事に驚き、顔を赤らめる少年

 「わたしね、あの男の子と将来結婚するの、婚約者ってやつ!ステキでしょう?

あなたも、愛する人と出会ったらわたし達みたいに

愛し愛される2人になるのよ?あなたなら出来るわ!

とってもロマンチックな容姿だもの!」

ばいばーい!と手を振り、少年に手を引かれ走り去る勢いのある嵐のような少女だった…



彼女の声を閉じ込めるように耳を押える少年



この時から、彼の心にはずっとあの少女が居続けた




 














懐かしい夢を見た



幼い頃、城で出会った白髪の少年

覚えたての“ロマンチック”という言葉を使いまくっていたあの頃

意味こそよく分かっていなかったが、

その言葉はあの子にピッタリだった



あの、雪のような白い髪…


あの時来ていたのは、アルステッド帝国の使節団

そこに同伴していたのは当時の皇帝とその息子



もしかして…

 「おはようございます、イヴ」

 「っ!ウィル…起きていたのね」


肌と肌が密着し合う

抱きしめられたイヴリンは彼の腕の中で尋ねる


 「ウィル…貴方もしかして、幼い頃デイビス帝国に使節団と一緒に来ていた?」

 「…はい」

 「やっぱり…じゃあ、あの時会った男の子は」

柔らかく微笑むウィリアム
初めて見る彼の笑顔に、思わず見惚れてしまった

 「やっと、思い出してくれましたか」

 「え」

 「僕は、初めて会ったあの日から
貴女のことだけを想い続けていました。

婚約者がいると知っていましたし、僕にも婚約者がいました。

でも、抗えなかった。心の中には貴女が居続けるのです…

僕の髪を優しく撫で、明るい日差しのような笑顔を向ける愛らしい貴女が」




彼は、ずっと私を想い続けていた

私がヨハネスに熱を上げている間もずっと…




数ヶ月前、

イヴリンの婚約が解消された話を聞きつけた彼は、

迷うことなく彼女に縁談を持ちかけた


婚約者の公爵令嬢には側室でもいいからそばに居たいと縋られたが、

たった1人の愛しい人を、
愛し愛される存在となれるよう

自分の身勝手さに申し訳なく、心苦しく思いつつも断ったのだ。



 「…ヨハネスが屑野郎でよかった」

 「え?」

 「じゃなきゃ、貴方と結婚できなかったんだもの」

 「そこだけは、感謝しないとですね」

 「貴方は、不貞なんてしちゃダメよ?」

 「絶対有り得ません。
貴女だけを愛していたのですよ、10年以上もずっと」

 「あら、一途ね」

 「当たり前です。それに、そんな事しようものなら貴女から鉄拳が飛ぶでしょう?」

 「!知っていたのですね…」

 「貴女のことなら全て知っています。
…身体も隅々まで」

 「まあ!私だってウィルの事知ってるわよ!」

布団にくるまりながら笑い合う2人

薪の鳴り響く部屋

外では空気中に舞う雪の結晶が陽の光に反射し
ダイヤモンドダストが美しく輝く





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をしてくれた王太子殿下、ありがとうございました

hikari
恋愛
オイフィア王国の王太子グラニオン4世に婚約破棄された公爵令嬢アーデルヘイトは王国の聖女の任務も解かれる。 家に戻るも、父であり、オルウェン公爵家当主のカリオンに勘当され家から追い出される。行き場の無い中、豪商に助けられ、聖女として平民の生活を送る。 ざまぁ要素あり。

義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです

珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。 そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた 。

自称地味っ子公爵令嬢は婚約を破棄して欲しい?

バナナマヨネーズ
恋愛
アメジシスト王国の王太子であるカウレスの婚約者の座は長い間空席だった。 カウレスは、それはそれは麗しい美青年で婚約者が決まらないことが不思議でならないほどだ。 そんな、麗しの王太子の婚約者に、何故か自称地味でメガネなソフィエラが選ばれてしまった。 ソフィエラは、麗しの王太子の側に居るのは相応しくないと我慢していたが、とうとう我慢の限界に達していた。 意を決して、ソフィエラはカウレスに言った。 「お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!」 意外にもカウレスはあっさりそれを受け入れた。しかし、これがソフィエラにとっての甘く苦しい地獄の始まりだったのだ。 そして、カウレスはある驚くべき条件を出したのだ。 これは、自称地味っ子な公爵令嬢が二度の恋に落ちるまでの物語。 全10話 ※世界観ですが、「妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。」「元の世界に戻るなんて聞いてない!」「貧乏男爵令息(仮)は、お金のために自身を売ることにしました。」と同じ国が舞台です。 ※時間軸は、元の世界に~より5年ほど前となっております。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

乳だけ立派なバカ女に婚約者の王太子を奪われました。別にそんなバカ男はいらないから復讐するつもりは無かったけど……

三葉 空
恋愛
「ごめん、シアラ。婚約破棄ってことで良いかな?」  ヘラヘラと情けない顔で言われる私は、公爵令嬢のシアラ・マークレイと申します。そして、私に婚約破棄を言い渡すのはこの国の王太子、ホリミック・ストラティス様です。  何でも話を聞く所によると、伯爵令嬢のマミ・ミューズレイに首ったけになってしまったそうな。お気持ちは分かります。あの女の乳のデカさは有名ですから。  えっ? もう既に男女の事を終えて、子供も出来てしまったと? 本当は後で国王と王妃が直々に詫びに来てくれるのだけど、手っ取り早く自分の口から伝えてしまいたかったですって? 本当に、自分勝手、ワガママなお方ですね。  正直、そちらから頼んで来ておいて、そんな一方的に婚約破棄を言い渡されたこと自体は腹が立ちますが、あなたという男に一切の未練はありません。なぜなら、あまりにもバカだから。  どうぞ、バカ同士でせいぜい幸せになって下さい。私は特に復讐するつもりはありませんから……と思っていたら、元王太子で、そのバカ王太子よりも有能なお兄様がご帰還されて、私を気に入って下さって……何だか、復讐できちゃいそうなんですけど?

魔法が使えなかった令嬢は、婚約破棄によって魔法が使えるようになりました

天宮有
恋愛
 魔力のある人は15歳になって魔法学園に入学し、16歳までに魔法が使えるようになるらしい。  伯爵令嬢の私ルーナは魔力を期待されて、侯爵令息ラドンは私を婚約者にする。  私は16歳になっても魔法が使えず、ラドンに婚約破棄言い渡されてしまう。  その後――ラドンの婚約破棄した後の行動による怒りによって、私は魔法が使えるようになっていた。

変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑) 妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?! ※適宜内容を修正する場合があります

婚約破棄された令嬢の父親は最強?

岡暁舟
恋愛
婚約破棄された公爵令嬢マリアの父親であるフレンツェルは世界最強と謳われた兵士だった。そんな彼が、不義理である婚約破棄に激怒して元婚約者である第一王子スミスに復讐する物語。

処理中です...