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4 氷血の皇子

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ウィリアム・ノア・アルステッド


デイビス帝国と親交のあるアルステッド帝国

軍事力がこちらより遥かに上だが、
一年中雪が降り続ける氷の国

その国の第一皇子 ウィリアムといえば


雪のように真っ白な白髪に、目が合えば凍ってしまうと言われている氷のように冷たい青い瞳

戦場では感情を一切出さず淡々と敵を葬り、
返り血を浴びても尚平然としている男…




 「アルステッド帝国…」

 「イヴ、気が進まなければ丁重にお断りするから…」

 「そうよ、あなたの気持ちが1番大事だわ」

皇帝と皇后が優しくイヴリンを諭す

 「どちらからの、申し出ですか?この縁談…」

 「…それは…」

言葉に詰まり、横にいる皇后に目配せをする皇帝

 「ウィリアム皇子からよ」

皇后を見るイヴリン



あのウィリアム皇子が私との結婚を望んでいる…?


驚きで目を見開くイヴリンを見た皇帝は
心配そうに声をかける

 「やはり、丁重にお断りしよう…」




 「待ってください」



今年で22歳になる皇女

元婚約者を殴った暴れん坊皇女

この縁談を逃せばもう二度と婚期が訪れないかもしれない…


何故私と結婚したいのかは気になるが、
それは嫁いでからでも聞き出してやろう


 「その結婚、お受けします!」












 ー1ヶ月後ー
愛する家族に別れを告げ、雪の吹き荒れるアルステッド帝国にやって来たイヴリン

 「っ~寒い…!」

念入りに着込んだはずなのに
肌に刺さるような寒さで身震いが止まらない

 「皇女様、着きましたよ」

御者に言われ馬車の外を見る

雪の中に聳え立つ皇城は、この雪の中に消えてしまいそうなほど真っ白だった

馬車の扉が開くのを待つイヴリン


しかし、扉を開けたのは御者ではなかった



 「お待ちしておりました。イヴリン皇女様」


 「ウィリアム…陛下…」


自分より4歳下とは思えないほど大人びた彼

2週間前に皇帝に即位したウィリアム

噂で聞いていた白髪は、
光が当たるとダイヤモンドダストのように
キラキラと輝き、

氷のような青い瞳は、確かに凍ってしまいそうなほど魅力的で

吸い込まれてしまいそうだった



目の前に差し出される大きな手

おずおずとその手に応えるイヴリン


 「長旅でお疲れでしょう。部屋へ案内します」

眉根ひとつ動かさず淡々とした表情や口調は噂通りね。
そう心の中で呟き、

彼のエスコートに応える







案内されたのは白で統一された豪華な部屋

寝台の傍にある暖炉ではパチパチと薪が鳴り響き、

心地の良い空間だった。

 「気に入っていただけただろうか?」

 「はい…とても心地の良い部屋ですね」

 「…なら、よかった」

先程の固い口調ではない声が聞こえ
思わず彼を見上げるイヴリン

表情は変わっていなかった

一瞬、柔らかい気配を感じたのは気のせいだったのだろうか…


 「夕食の時間にまた呼びに来ます」

 「あ、はい…ありがとうございます」

驚いた。
自分から呼びに来るのかと勘違いしそうになったが、

執事やメイドに頼むのだろう




 「…ほんとに呼びに来るなんて」


 「?呼びに来ると言いました」


キョトンとイヴリンを見つめるウィリアム

彼の半歩後ろを着いて行く




カチャカチャとカトラリーの音が響く食卓

どうにも落ち着かないイヴリンは姿勢を正した


 「あの、ウィリアム皇子殿下」

 「はい」

 「1つお伺いしてもよろしいでしょうか?」

 「はい」

グッと拳に力が入る

 「…何故、私との縁談を望まれたのですか?」

 「なぜ…」


ここに来る前から聞きたかったこと

早々にこんな事を聞くのは無礼かとも思ったが、

考えるより先に行動してしまうのがイヴリンだった。


 「恥ずかしながら私は今年で22となります。
皇子より4つも上です。

その上、元婚約者には不貞をされ挙句にぶん…

…婚約破棄となった傷物皇女ですので…」

咳払いでぶん殴ったという単語を遮るイヴリン



 「…私は年齢など気にしません。

貴女の婚約者が行った愚行については聞いております。

ですが、貴女が傷物となった訳ではないでしょう?悪いのは不貞を行った婚約者です。…元ですが」



 「そんな風に…思ってくださっていたのですね…」



彼なら、愛してくれるのだろうか?

両親のように愛し愛される夫婦となれるだろうか…

今度こそ信じてみてもいいだろうか…


 「皇女様?」




心配そうにこちらを見るウィリアム


イヴリンから見たその姿は、
噂のような凍った男とかけ離れていた
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