1 / 8
1 皇女と婚約者
しおりを挟む「愛しているよイヴィ」
「私も愛しているわ、ヨハネス」
仲睦まじく肩を並べる若い男女
1人はアダムス帝国の公爵家令息 ヨハネス・フォトン
そして、もう1人はデイビス帝国の第一皇女、
イヴリン・クラーク・デイビス
幼い頃から両親の愛を間近で見続けてきた皇女は、
一途に愛し愛される2人に憧れていた
そんな彼女にも、6歳の時に縁談が持ち込まれ
この15年、愛し愛される婚約者として振舞っていた。
今この瞬間も、愛する彼の腕に寄り添い
彼から囁かれる愛の言葉に胸が締め付けられていた
ヨハネス公爵令息は、同年代の中でも一際目を引く容姿を持ち、
おまけに謙虚で聡明な男として有名だった
「君からの愛を僕一人が独り占めしてしまうなんて、
神様に嫉妬されてしまわないか心配だよ」
優しく微笑むヨハネス。
「まぁヨハネスったら!」
幸せで顔を綻ばすイヴリン
彼女の弟 第一皇子アレンがあと1年で成人となり
皇位を継ぐ
そうなれば、イヴリンは正式に婚姻を結ぶ事ができ、公爵夫人として
愛するヨハネスと生涯を共にできる
そう信じていた…
「何を、してらっしゃるのかしら?」
「!!!?!イ、イヴィ!?」
婚約してちょうど15年目の今日、
愛する彼にサプライズをしようと
こっそり公爵邸にやって来たイヴリン
手に持っていた手作りのクッキーを入れた箱がミシミシと音を立てる。
「…随分と、仲がよろしい様ね?そちらの令嬢と」
「ち、ちが、いや…これは…っ」
「だってそうでしょう?服も着ずに
肌と肌を密着させて寝転がり…あらあら、
汗まで滴っているではありませんか。
随分と激しく運動されたのねぇ」
笑顔を絶やさないイヴリン
初めて見る婚約者の凍ったような笑顔に恐怖で震えるヨハネス
「イ、イヴィ…話を、」
「皇女の婚約者ともあろう者が…
正式な婚姻を結ぶ前に不貞とは…」
「わっ…わたし、帰りま」
「お座りなさい」
「ぁ…ハイ…」
ガタガタと震える裸の令嬢
ゆっくりとヨハンに近づくイヴリン
「イ、ヴィ…?」
縋るように涙目で見上げてくるヨハネス
「歯、食いしばりなさいませ」
バゴォンッッ"
鈍く重い音が寝室に響く
「ヒィッ」
「さぁ…ご令嬢。貴女も無罪ではありませんのよ?」
「で、ヨハネス公爵令息とコニー伯爵令嬢を殴り飛ばしたと…」
「はいお父様」
頭を抱えるのはイヴリンの父である皇帝 イーサン
その傍らには笑いを堪えきれない弟 アレン
「やり方は褒められたものではないかもしれませんが…
婚姻前の、しかも皇族の婚約者が不貞となれば、処分を考えなければいけませんね陛下」
冷静にその場を収めるのは皇后 エラ
「申し訳ございません、お父様、お母様…」
「…辛かったわね、イヴリン」
優しく娘を抱きしめるエラ
「今日は、もう休みなさい」
「…はい、失礼致します」
部屋を後にするイヴリン。
「父親としてはその屑野郎をぶん殴って処刑してしまいたいが、
皇帝としては…これから忙しくなりそうだな」
「あら。どんな時もお支えしますよ」
「…君は、本当に頼もしいな」
部屋で寝台に横たわるイヴリン
もう21歳だというのにこの騒ぎ…
この国の令息達は私が不貞を行った婚約者を
ぶん殴った暴れん坊皇女と既に噂している事だろう
そんな私にこの先、婚約者など現れるはずない
「2人みたいになりたかっただけなのに…」
涙ぐむイヴリンは窓から見える夜空を見上げたまま、眠りについた
1
お気に入りに追加
358
あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
王子様に恋をした【完結】
Saeko
恋愛
趣味は料理の平凡OLの私が王子様に恋をした。
彼とお付き合いをして一生懸命尽くしてきた王子様は、実は御曹司だった。
身分違いの恋が成就と思いきや、彼は幼なじみの令嬢とご婚約‼︎
ショックで立ち直れない私は、フラフラと道路に飛び出してしまい…
※改訂版 完結致しました。
※数話ですが、加筆も致しました。
※誤字脱字は、極力無いよう見直しを致しましたが、それでも漏れはあるかと思います。何卒御容赦下さいませ。
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
【完結】契約結婚。醜いと婚約破棄された私と仕事中毒上司の幸せな結婚生活。
千紫万紅
恋愛
魔塔で働く平民のブランシェは、婚約者である男爵家嫡男のエクトルに。
「醜くボロボロになってしまった君を、私はもう愛せない。だからブランシェ、さよならだ」
そう告げられて婚約破棄された。
親が決めた相手だったけれど、ブランシェはエクトルが好きだった。
エクトルもブランシェを好きだと言っていた。
でもブランシェの父親が事業に失敗し、持参金の用意すら出来なくなって。
別れまいと必死になって働くブランシェと、婚約を破棄したエクトル。
そしてエクトルには新しい貴族令嬢の婚約者が出来て。
ブランシェにも父親が新しい結婚相手を見つけてきた。
だけどそれはブランシェにとって到底納得のいかないもの。
そんなブランシェに契約結婚しないかと、職場の上司アレクセイが持ちかけてきて……

やんちゃな公爵令嬢の駆け引き~不倫現場を目撃して~
岡暁舟
恋愛
名門公爵家の出身トスカーナと婚約することになった令嬢のエリザベート・キンダリーは、ある日トスカーナの不倫現場を目撃してしまう。怒り狂ったキンダリーはトスカーナに復讐をする?

あなたの事は好きですが私が邪魔者なので諦めようと思ったのですが…様子がおかしいです
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のカナリアは、原因不明の高熱に襲われた事がきっかけで、前世の記憶を取り戻した。そしてここが、前世で亡くなる寸前まで読んでいた小説の世界で、ヒーローの婚約者に転生している事に気が付いたのだ。
その物語は、自分を含めた主要の登場人物が全員命を落とすという、まさにバッドエンドの世界!
物心ついた時からずっと自分の傍にいてくれた婚約者のアルトを、心から愛しているカナリアは、酷く動揺する。それでも愛するアルトの為、自分が身を引く事で、バッドエンドをハッピーエンドに変えようと動き出したのだが、なんだか様子がおかしくて…
全く違う物語に転生したと思い込み、迷走を続けるカナリアと、愛するカナリアを失うまいと翻弄するアルトの恋のお話しです。
展開が早く、ご都合主義全開ですが、よろしくお願いしますm(__)m

【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。
キーノ
恋愛
わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。
ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。
だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。
こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、押しと穏やかに過ごしますわ。
※さくっと読める悪役令嬢モノです。
2月14~15日に全話、投稿完了。
感想、誤字、脱字など受け付けます。
沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です!
恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる