この結婚、喜んでお受けします!~婚約者をボコした皇女は隣国の皇帝に嫁ぎます〜

瑚珀

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1 皇女と婚約者

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 「愛しているよイヴィ」

 「私も愛しているわ、ヨハネス」


仲睦まじく肩を並べる若い男女


1人はアダムス帝国の公爵家令息 ヨハネス・フォトン

そして、もう1人はデイビス帝国の第一皇女、

イヴリン・クラーク・デイビス



幼い頃から両親の愛を間近で見続けてきた皇女は、
一途に愛し愛される2人に憧れていた


そんな彼女にも、6歳の時に縁談が持ち込まれ

この15年、愛し愛される婚約者として振舞っていた。

今この瞬間も、愛する彼の腕に寄り添い
彼から囁かれる愛の言葉に胸が締め付けられていた


ヨハネス公爵令息は、同年代の中でも一際目を引く容姿を持ち、

おまけに謙虚で聡明な男として有名だった

 「君からの愛を僕一人が独り占めしてしまうなんて、
神様に嫉妬されてしまわないか心配だよ」

優しく微笑むヨハネス。

 「まぁヨハネスったら!」

幸せで顔を綻ばすイヴリン



彼女の弟 第一皇子アレンがあと1年で成人となり
皇位を継ぐ

そうなれば、イヴリンは正式に婚姻を結ぶ事ができ、公爵夫人として

愛するヨハネスと生涯を共にできる


そう信じていた…






 「何を、してらっしゃるのかしら?」


 「!!!?!イ、イヴィ!?」


婚約してちょうど15年目の今日、
愛する彼にサプライズをしようと

こっそり公爵邸にやって来たイヴリン

手に持っていた手作りのクッキーを入れた箱がミシミシと音を立てる。

 「…随分と、仲がよろしい様ね?そちらの令嬢と」

 「ち、ちが、いや…これは…っ」

 「だってそうでしょう?服も着ずに
肌と肌を密着させて寝転がり…あらあら、

汗まで滴っているではありませんか。

随分と激しく運動されたのねぇ」

笑顔を絶やさないイヴリン


初めて見る婚約者の凍ったような笑顔に恐怖で震えるヨハネス

 「イ、イヴィ…話を、」

 「皇女の婚約者ともあろう者が…
正式な婚姻を結ぶ前に不貞とは…」

 「わっ…わたし、帰りま」

 「お座りなさい」
 
 「ぁ…ハイ…」

ガタガタと震える裸の令嬢

ゆっくりとヨハンに近づくイヴリン

 「イ、ヴィ…?」

縋るように涙目で見上げてくるヨハネス

 「歯、食いしばりなさいませ」


バゴォンッッ"

鈍く重い音が寝室に響く

 「ヒィッ」

 「さぁ…ご令嬢。貴女も無罪ではありませんのよ?」










 「で、ヨハネス公爵令息とコニー伯爵令嬢を殴り飛ばしたと…」

 「はいお父様」

頭を抱えるのはイヴリンの父である皇帝 イーサン

その傍らには笑いを堪えきれない弟 アレン


 「やり方は褒められたものではないかもしれませんが…

婚姻前の、しかも皇族の婚約者が不貞となれば、処分を考えなければいけませんね陛下」

冷静にその場を収めるのは皇后 エラ


 「申し訳ございません、お父様、お母様…」

 「…辛かったわね、イヴリン」

優しく娘を抱きしめるエラ

 「今日は、もう休みなさい」

 「…はい、失礼致します」

部屋を後にするイヴリン。


 「父親としてはその屑野郎をぶん殴って処刑してしまいたいが、

皇帝としては…これから忙しくなりそうだな」

 「あら。どんな時もお支えしますよ」

 「…君は、本当に頼もしいな」






部屋で寝台に横たわるイヴリン

もう21歳だというのにこの騒ぎ…

この国の令息達は私が不貞を行った婚約者を
ぶん殴った暴れん坊皇女と既に噂している事だろう

そんな私にこの先、婚約者など現れるはずない


 「2人みたいになりたかっただけなのに…」


涙ぐむイヴリンは窓から見える夜空を見上げたまま、眠りについた
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