処刑されそうになったので逃げ出したら狼から溺愛されました

瑚珀

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✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀

建国から今日こんにちに至るまで、
歴代最初で最後であろう最悪の皇女として名を馳せたスカーレットは、
妹達のせめてもの情けから国民に見せしめにされる事なく、妹達にだけ見守られる中…その生涯の幕を閉じた



処刑から1週間足らずで、国はかつての緑溢れる豊かな国に戻っていた

そして、フィオナが女帝となり国を治める様は、前皇帝を彷彿とさせる程立派だった
騒動もあってからは、親交のなかったガルアス帝国とも仲を深め、文字通り“家族”となった


第4皇女ルビーのその後はと言うと、顔に大きな傷跡が残ってしまったが、そんなものは気にならないほど美しく明るい女性に成長し、
昔から親睦のあった幼馴染のような存在でもある公爵令息から先日求婚プロポーズを受けた


皆それぞれの道を幸せに、自由に生き始めている







✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀


 「アリシア」
 「あら、ルークさん」
肩を並べる2人は窓の外を見つめている

 「見て…ここからだと私の母国が見えるのよ」
 「そうだな、増築してよかった」
ガルアス帝国の城はアリシアとルークが住む為に増築され、以前よりも更に高さを増した巨城となっていた
 「ルーク、アリシア様」
 「兄さん」
 「ケイレブ様、いらっしゃってたのですね」
扉に身体を預けこちらに手をヒラヒラとさせるケイレブ

彼も今や、このガルアス帝国を治める皇帝陛下だ

 「身体はどうだい?」
 「お気遣いありがとうございます、とても快適ですし…夫の手厚いサポートがあるので不自由ありませんよ」
くすくすと笑いルークにもたれ掛かるアリシア
彼女を支え、尻尾をパタパタと嬉しそうに揺らすルーク
 「そのようだ」
2人の様子に笑みを零すケイレブは、本題があったと思い出したようにアリシアを見る



 「その、姉上…フィオナ様はお元気ですか?」

騒動の際、フィオナを献身的にサポートしていたのは妹のアリシアとルビーだけではない
 
国の再建の為の人員派遣や、公務についての知識が浅いフィオナに、隣国の第1皇太子として知り得る公務についてを教授していた
全面的に彼女の力になろうと尽力してくれたケイレブ
 「はい、元気ですよ…お手紙も来ましたので」
 「そうか…なら、いいんだ」
そう言ったケイレブの尻尾は、そわそわと落ち着きがなった
心做こころなしか頬が紅潮しているようにも見える

 「……もしかして、ケイレブ様…フィオナお姉様の事を好いているのですか?」
 「なっ…!!」

ビク!と耳と尻尾を張ってたじろぐ彼の姿を見て確信するアリシア
 「そうならそうと仰っていただければ…」
 「いや、僕なんかが彼女の隣に立つ資格は…彼女は美しい上に聡明で、それでいて謙虚で…一緒に過ごしたあの一時ひとときはまるで春の木漏れ日の中そよ風に吹かれているような、温かな気持ちで」

うっとりと言葉を並べるケイレブ…この姿をフィオナに見せてあげたいと嬉しそうに微笑むアリシア







✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀

 「まさかケイレブ様がフィオナお姉様をとは…」
 「そうか?俺はすぐわかったぞ。姉君を見た時の兄さん、かなり挙動不審だったし尻尾もブンブンだったぞ」
 「え!よく見てらっしゃるのね…」
 「逆に見てなかったのか?」
 「…私はルークさんしか見てなかったので」
ぷんと小さく頬を膨らませるアリシア
 「…そんな可愛らしいことを言うと食っちまうぞ?」

 「そんなにうなってもダメです。まだもう少しの我慢ですよ…

がびっくりしてしまう」

大きく膨らんだお腹を愛おしそうにさするアリシア

 「…もうすぐ会えるんだな」
 「そうですよ、きっと貴方に似てふわふわな子ですよ」
 「何を言う。お前に似て愛らしい柔らかな子だろう」

笑い合いながら寝台の上で産まれてくる我が子の姿を想像しながら夜を過ごす



今夜は、美しい満月だ



   ーFinー
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