処刑されそうになったので逃げ出したら狼から溺愛されました

瑚珀

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 「んん…」
鳥のさえずりが聞こえ、瞼を閉じていても朝が来たと分かる明るさに思わず顔を背けるアリシア
寝返りを打つと、顔全体がふわふわとした何かに包まれた
 「んぅ?」
 「…人の胸元でモゾモゾするな」
 「!!!!」
そこには片肘をつきこちらに身体を向ける上裸のルークが寝そべっていた
 「ル、ルークさん!おはようございます…」
 「…おはよう」

 「おやおや。一晩で随分と仲良くなったようですね」
 「あ…!」
 「兄さん…勝手に入らないでください」
にこにこと微笑みながら扉に身体を預けこちらを見る第1皇子

 「初めまして、人間のお嬢さん。ルークの兄でガルアス帝国第1皇子のケイレブと申します」
胸に手を当て丁寧に会釈するケイレブ
慌てて寝台から飛び出て、身なりを整えるアリシア
 「アリシアと申します…昨夜はご挨拶出来ず申し訳御座いません」
 「構いませんよ、ゆっくり休めましたか?」

ケイレブはグレーの毛並みに耳の間から鼻面にかけた顔中心部にクリーム色の毛が流れている見た目で赤みがかった瞳
対してルークは、漆黒のように全身の毛並みが真っ黒な見た目…瞳の色は、アリシアと同じだった


 「なにかお持ちしましょうか?ルークの部屋は面白味がないですからね、本や菓子など用意しますよ」
 「悪かったですね、面白味がなくて」
 「そんな…!でもあの…もし宜しければ、この国のことを知れる文書などがあれば、拝見させていただけませんか…?」
 「お易い御用です」
それでは。と部屋を後にしたケイレブ
再び2人きりの空間になり気まずい沈黙が流れる
 
 「あ、あの…ルーク様…?」
 「様?」
 「あ、皇族の方なので…」
 「様はいらない」
 「…じゃあ、ルークさん…」
 「なんだ?」
 「今日は、何かご予定など…」
 「特にない」
 「あ、そうですか…」
という事は、ずっと部屋にいるのだろうか?
父以外の男性と共に過ごしたことがなかったアリシアは酷く緊張していた
男性と同じ空間で1日を過ごせるのだろうか…と不安が押し寄せ既にパンク寸前だった



 「お待たせしました」
 「!ありがとうございます」
 「いえいえ。私は公務がありますのでこれで失礼します…何かあれば弟にお申し付けください」
ごゆっくりと微笑みを残しケイレブは部屋を後にする

 「こんなに沢山…」
1冊1冊が分厚く300ページは優に越えているであろう本が10冊以上運ばれてきた
それを1人で持ち運んだケイレブにも驚くが
 「何を調べたいんだ?」
 「あ、その…」

いつまた変身してしまうか分からない状況で
突然変身し、親切にしてくれた彼らを傷つけてしまったら…と怖くなったアリシア
自分の事というのは伏せて、聞いてしまおうか…

 「この国の事と…半獣人に、ついてです…」
 「!」
 「あ、でもあの…体の半分が人間で半分が動物というたぐいではなくて…その……」
 「獣人の一部を取り込んだ半獣人、だよな?」
 「えっあ、はい…そうです」
ドスンと横に腰掛けたルークは無言で本の山から適当に1冊を持ち上げページをめく
 「ルークさん?」
 「一緒に調べる」
 「ありがとう、ございます」
2人は日が沈み空が緋色に染る時間まで調べ続けた






✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀


 「…あったぁ…!」
 「あったか!」
 「はい!ここに、」
アリシアの持つ本を覗き込むルークの鼻先に触れかけ思わず顔を逸らすアリシア
 「?」
 「あ、えっと…これです!」
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