処刑されそうになったので逃げ出したら狼から溺愛されました

瑚珀

文字の大きさ
上 下
2 / 20

2

しおりを挟む

次第に騒がしくなる廊下

部屋の扉が勢いよく開かれバタバタと入ってくるメイド達
 「ひっ…!!」
 「ア、アリシア…様…!」

寝台の上で呆然と両手を見つめるアリシア
赤黒く染まったその手を見たメイド達はガタガタと震え、後退りし呟く「皇帝陛下に報告しなくちゃ」と…



続けて勢い良く入ってきたのは第1皇女と第2皇女
 「アリシア…っ!一体、どうして…?!」
 「フィオナ、お姉様…」
 「フィオナ離れて!貴女まで殺されてしまうわ!」
 「スカーレットお姉様…?どうして、」
心配して駆け寄るフィオナを引き離すスカーレット

1人の目には恐れと心配…そしてもう1人には嫌悪がはっきりと見えていた

 「どうして?それはこっちのセリフよ!!ルビーに…私達の妹に何をしたの!?」
 「…ルビー、?ルビーがどうしたのですか…?」
 「白を切るつもり!?」
 「スカーレットお姉様落ち着いて、アリシアも混乱しているわ…」
 「甘いわね!またいつになるか分からないわよ!?」


獣…?誰が??


 「こんな危ない奴と20年近くも一緒に過ごしていたなんて…早く地下牢へ監禁して!」
 「お姉、様…」
すがるようにスカーレットへ手を伸ばすアリシア
パシン!と弾かれたその手は行き場を失い、不自然に空中で留まる

 「触らないで…あんたなんて妹じゃないわ」
初めて見る姉の冷たい声と視線に、言葉を失い静かに涙を流した






✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀✿❀

仄暗ほのぐらい地下牢は水の滴る音が不気味に響き、埃っぽい匂いが鼻を刺す

…一体、何が起こったというのだろうか

状況が未だに飲み込めないアリシアは呆然と壁に寄りかかり、天井を仰いでいた

 「アリシア」
 「!お姉様…っ!」
スカーレットが檻の向こうで腕を組みこちらを見下ろし立っていた
 「何が起こったのか、知りたい?」
 「…はい、っ」
ふっと呼吸を整え話し始めるスカーレット


 「昨日の夜、ルビーが獣に襲われたの」
 「!?」
 「幸い命に別状はなかったもののまだ目を覚まさないわ…襲われたショックと耳から頬にかけた傷があと数cmで眼球に届くほど深く大きかったからね」
 「そん、な……」
ルビー…愛らしい私の妹
彼女がそんな大きな怪我を負い、しかも未だ目覚めないなんて
 「何ショック受けてんの。やったのはあんたよ」

 「………え?」

 「あんたが、ルビーを襲ったの」





今、姉はなんと言った…?

私がルビーを襲った?妹に、一生消えないかもしれないほど大きな怪我を負わせたのは…私??

 「そんなハズ…」
 「あんたの両手にあった血の跡、あれはルビーのものよ」
 「いや…そんな、嘘いやよ…ルビー…」
混乱と悲しみで涙が溢れ、狂ったように頭を抱え首を振るアリシア
 


 「…プッ」
ガクガクと震えながら姉を見上げると、肩を震わせ笑っていた

 「傑作…!こんなに上手くいくなんて!本当笑える!!」
目をギラつかせガシャン!と大きな音を立て、檻に手をついて笑うスカーレット

 「お姉様…?」

 「あんたが皇族の中でただ1人魔法が使えないのも!獣になったのも!
ぜーんぶあたしがお膳立てしてあげたからなのよ!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」 *** ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。 しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。 ――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。  今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。  それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。  これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。  そんな復讐と解放と恋の物語。 ◇ ◆ ◇ ※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。  さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。  カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。 ※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。  選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。 ※表紙絵はフリー素材を拝借しました。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

処理中です...