ヴァーチャル・ラブ ~いつもあなたを好きでした。~

楠瀬 飛鳥

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本編

母の荷物

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母が他界した。

最後は、笑顔で眠るように旅立っていった。
親族の悲しみとは裏腹に、病院では事務手続きが始まった。
死亡確認、証明書の発行、葬儀社への連絡・・・。

“人は死んだら終わり。”
確かな事実だけど、そこには人の感情という残された者の心の整理の時間が欲しいと思う。

「AM9:00に、葬儀社がご遺体を運びに来ることになりました。それまでにお荷物をまとめて下さい。」
何とも、非情な言葉だった。病院からすると日常なのだとは思うけど、『こっちの身になったら・・・』と思いつつ、『こっちの気持ちになったら、仕事にならないんだろうなぁ~』と自問自答していた。

そんな時だった。

「一旦、母ちゃんの荷物をまとめたけど。」
と姉が僕に状況報告をしてくれた。

「あ~、ありがとう!」

「そんでこれだけど?」
と姉が、いつも母が使っていたエコバックを見せてきた。

「これって、いつも母ちゃんが使ってたやつだよね?」

「そうそう、母ちゃん、ちゃんとしてて、もし入院になった時に!って、入院道具をまとめててくれたんで、入院の時に私が持ってきたんだけど。。。」

『へぇ~。』と思った。母が入院する際も僕は出張で、入院の付き添いは姉がしてくれていた。
それに、入院道具をまとめていた母が意外過ぎて驚いた。料理は好きだったら、とにかく整理整頓、掃除が苦手な母だったからだ。

「んで、何か問題でもあんの?」
「この紙袋、実家で見たことないんだけどさぁ、あんた何か知ってる?」

「はぁ~?僕が母ちゃんの持ち物なんて、知ってる訳ないじゃん!」
「だよね、でも、中に入ってる箱にあんたの名前が書いてあるんだけど。。。」
「は?え? なんで?」

そう言って、渡された紙袋を見て、血の気が引いていった。。。
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