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42・最後の希望⑧
しおりを挟むそしてリジーは、ウィジー王女の方が、遠慮してしまって動けないのならと、スペリアと話すことにした。
放課後、スペリアを校舎裏に呼び出す。
何故校舎裏なのかというと、呼び出しの定番だと耳にしたためだ。
なお、呼び出しは、
「スペリア! 放課後、校舎裏にいらっしゃい。私と一緒にお話しましょ」
などとごくごく普通の声量で告げるだけで事足りた。いっそ呼び出しというよりは独り言のようだったのだが、聞いていないわけがないのでこれでいいはずだ。
実際に、
「え、リジーとお話し? 勿論! 必ず行くよ!」
と、相変わらず廊下ら応えが返ってきたので何も問題ないだろう。
ちなみに、一緒にお話しとは言ったが、二人きりと入っていないし、二人きりになどなれるはずがない。
現に放課後、校舎裏を訪れるとスペリアの外にも護衛がいて、何なら騎士も控えていたし、リジーの側にはヴィテアがいた。
心配でついてきたということなのだが、何処の世界に婚約者とお話しするのに、親友を伴う人間がいるというのだろう。リジーは全く気にしないし、いっそ自分達らしいとさえ思っている。
スペリアにも勿論、そんなこと気にした様子はなかったし、むしろ目の前で記録用魔導具を構えながら至近距離でこちらを見ている辺り、これはこれでどうなんだろうと思うばかりだった。
だいたい全部すべて今更ではあるのだけれども。
「ああ、リジーからの呼び出しとか初めてだね! 記念すべき初呼び出し! 全て余すことなく記録するからね!」
スペリアはうきうきとそんなことを言っていて、本当にリジーの話をまともに聞くつもりがあるのだろうかと疑問に思うほどだった。
もっとも、記録しているのだから、聞き漏らしたりなどはしないだろう。
気にせずリジーは口を開いていく。
「スペリア!貴方ウィジー王女に乗り換えなさい」
すっぱりきっぱりそう告げると、一瞬、当たりが明確に静まり返った。
ほんのつい今まで煩いほどだったスペリアまでもがしばらく何も反応しないでいる。
ヴィテアはリジーの隣で、
「うわぁー……」
と、小さく呟いていた。
いったいどういう意味なのか、リジーがスペリアに何を言うつもりなのかぐらいわかっているのではないかと思っていたのだが、そうではなかったのだろう。
リジーはここでスペリアに何を告げるつもりなのかなんて、口に出していなかったのだから余計に、だ。
「うん?」
スペリアは魔道具を構えたまま、リジーの様子を記録する手を止めずに小さく不思議そうに首を傾げた。
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