乙女ゲーム?悪役令嬢?王子なんて喜んで差し上げます!ストーカーな婚約者など要りません!

愛早さくら

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39・最後の希望⑤

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 そしてリジーは思ったことは可能ならある程度は口に出してしまう性質だった。
 だからそのものずばり、もっと積極的にいけばいいのにと王女に告げたのだ。
 ヴィテアが隣で、え、それは流石に……とか何とか言いながらぎょっとしていたが知ったこっちゃない。
 リジーの言葉に、王女は困ったように首を横に振った。

「そんな……できませんわ。確かにわたくしはスペリア殿下に好意を寄せております。少しでも近くで過ごしたくてこちらまで参りました。国のお兄様……聖王陛下は、国に迷惑さえかけないのならば好きにするといいとお許し下さって。ですが……それがなくとも、どなたかにご迷惑になるかもしれないことなんて、わたくしには出来ませんのよ」

 そう告げる王女の様子は大変にたおやかで庇護欲をそそる。リジーはもったいないと思った。
 なにこの子、ほんといい子じゃん。なんでスペリアなんかに惚れてんの? もったいない。
 思わずぎゅっと眉根を寄せたリジーの表情を見て、王女は慌てて言葉を重ねる。

「あ、あの、その、申し訳ございません、婚約者の方に好意を寄せているだなんて……不愉快なお話しでございましたわよね、わたくし、別にそのようなつもり・・・・・・・・では……」

 リジーの表情から誤解を招いたのだと気付いたけれど、だからと言ってリジーは顔を戻すことが出来なかった。

そのようなつもり・・・・・・・・ってどういうつもり・・・? いいのよ、むしろそのようなつもり・・・・・・・・でいて欲しいぐらいだわ」

 そう返しても、王女は困ったような顔をするばかり。
 本当にいいのに。
 リジーの気持ちがわかっているのだろうヴィテアも、なんと言っていいのかわからない顔をしている。
 リジーはとりあえず更に言葉を重ねた。
 だってもどかしい。こんなにいい子なのに、こんな場所まで来ておいて、もう一歩先へ進む積極性がどうして持てないのか。
 だからリジーは決めたのだ。

「本当にいいのよ! もっと積極的に行くべきだわ。安心して、ウィジー。ああ、ウィジーって呼んでもいいかしら?」
「え、ええ、もちろん。ぜひ、そうお呼び下さいませ」
「ありがと。じゃあ、改めてウィジー。私は貴方を応援するわ!一緒にスペリアを落としましょう!」

 途中、そう言えばまともに話すのはこれが初めてで、愛称を呼ぶほど親しくなかったなと思って一応愛称呼びの了解を得て、そのまま声高に宣言した。

「ええっ?!」

 驚く王女本人にも、あっちゃーと頭を抱えるヴィテアにも、

「リジー……」

 相変わらず少し離れたところで困ったようにリジーを呼ぶスペリア本人にも全く構わず、リジーは力強く頷いたのだった。

「任せておきなさいっ!」

 そう自信満々に言い放って。
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