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36・最後の希望②
しおりを挟む件の王女は元庶民だった。
やばい、これだけでもポイントが高い。
この春、留学してくる予定だという他国の王女の情報を入手したリジーは期待に胸を膨らませた。
とてもいい傾向だ。王女? 素晴らしい!
前回は公女だったけれど、今回は王女だ。今回の方が立場が上だ! 実際の所は知らないけれども。
出身国はキゾワリ聖国。
ここ、アンセニース大王国からだと、リセデオ王国を挟んだその先にある国で、国交はほとんどない。
確か十数年前代変わりしていて、それまではいいうわさを全く聞かなかったけれど、代変わりしてから以降は、随分とまともな国になったのだと聞く。
その国の新しい聖王の妹、つまり、前聖王の娘なのだという。
何番目の王女なのだかすらわからないが、とにかく王女だ。
代変わりした際に、前聖王の子供や妃たちは希望に沿って、それぞれ市井に下ったりなどもしたらしく、生まれて間もなかった件の王女はその際に、彼女自身の周囲の意向で、平民として育つことになったのだそうだ。
特に問題もなく大きくなって、だが王女は何でも何処かでスペリアを見かけて、一目惚れをし、この学園に留学してくるためと、スペリアに釣り合う身分を得る為に、わざわざ自ら願って王女の身分を手に入れて、この春、此処へと留学して来るのだという。
今の聖王は、妹のそんな些細なお願いなら難なく叶えてくれる程度には、寛大な人物であるようだ。
いいことだと思う。
なんて願ってもない話だろうか。
なにせ初めからスペリアに惚れている。
それどころか随分な入れ込みようだ。
そんなもの、期待せずにいられるはずがないだろう。
よくわからないけれども、乙女ゲームだとかなんだか、巷にあふれる小説でも何でも、どれもこれもヒロインは元庶民と決まっている。
否、本当は庶民じゃなかったけれども庶民として育ったり、ひょんなことで、貴族やら王族やらの養子になったり。多分きっとそれがヒロインの条件なのではないかと思う。
庶民な何がそんなに人を惹きつけるのか全く分からないが、多分、物珍しいからじゃないかなとリジーは思っていた。
ちなみにこれをヴィテアに言うと、
「まぁ、あながち間違っていませんね。だいたいあってます」
という返事が返ってきたので、間違っていないはずだ。
とにかく、元庶民。
これだけで期待大だった。そして今の身分は王女。素晴らしい。ヒロインだ。
本当にとってもヒロインで、リジーは王女に会うのを非常に楽しみにしていた。
問題は正確かなぁと思うのだけれども、事前に調査した限り、性格にも問題がなさそうなのだそうだ。
以前にいたよくわからない勘違い女や、高慢この上ない公女様などとは違う予感に、リジーは本当に本当に王女がやってくるのを楽しみに待っていたのだった。
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