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34・パターン5、近衛騎士⑨
しおりを挟むその後いったいどうしたのか。……――何故か彼の騎士は、気付けばスペリア2号と化していた。
何故だ。
リジーは全くわからない。
だが、リジーをわかりやすく追い掛け回す存在として、彼の騎士が加わったのは本当で。
とは言え、あくまでも騎士がしているのはスペリアの補助だ。
おそらくあの事件をきっかけとして、よほどあの騎士は態度を改めたのだろう、今ではスペリアもあの騎士を配送とはしておらず、むしろ多分一番頼りにしているのではないかと思われるほど。
「ねぇ、貴方スペリアのこと、好きだったんじゃないの?」
リジーはズバリと訊ねたことがある。そうしたら、
「好きです! お慕いしています! 今も……ですが、それとリジー様を崇拝する気持ちは別物です。ああ、尊い御身を拝し奉れる幸福。それは何という僥倖でしょう」
などとうっとりと拝み始められたのである。まるでリジーが神か何かにでも見えているかのようだった。
正直に言おう。
大変に物凄く気持ち悪かった。
スペリアに対して抱く気持ち悪さと同じだ。
リジーは人間だ。
そりゃあ、確かに公爵家という高位貴族の生まれで、見た目も能力もある程度の自信なら持っている。
だが、それでもただの人間である。
少なくともそんな風に、拝まれるような対象でなどあるはずがない。
スペリアも大概気持ち悪いと思っていたけど、これはこれで気持ち悪いわね……。などと遠慮なく眉をひそめたのだが。
「ああ、その愁いを帯びた眼差し。侮蔑のこもった視線さえなんと尊い!」
などと、スペリアと同じような反応を返された。
リジーは諦めた。
これはもう、そういう存在になったのだと認識しよう。
ついでに過去の自分の行動も後悔した。つまり、気まぐれなんて起こすものじゃなかったな、と。いっそあのままスペリアがあの騎士を遠ざけるのを放っておけばよかった。
だが、後悔しても後の祭りだ。
「ああ、スペリア様、ご覧ください、リジー様が!」
「ああ、本当だね! あはは。何か後悔でもしているのかな? そんな苦み走った表情まで天使だなんて……!」
「全くですね! なんて尊い!」
つまり煩いのが二人になったのである。
とは言え、あの騎士は基本的にスペリアほどうるさくはない。ただ、スペリアの補助に徹して、ひたすらにリジーに崇拝の眼差しを注ぎ続けてくるのである。
いや、やっぱり結局気持ち悪いことに変わりはないな。
リジーは思った。
つまり、騎士だとか男性だとか、そういう人間もまた、リジーの思うような結果にはならなさそうなのだった。
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