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32・パターン5、近衛騎士⑦
しおりを挟むスペリアはものすごく怒っていた。
わからなくはない。わからなくはないが……リジーは少し考える。
話を聞く限り、どう考えてもあの騎士が悪いし、スペリアの怒りももっともだ。
むしろ傍で見ていても鬱陶しくなってきていたあの騎士を、よくぞ今まで側に居続けさせていたとまで思うほど。だけど。
多分スペリアはこのまま、あの騎士を糾弾するのだろうと思った。
過去、以前の生徒会長や元平民の少女、他国の公女にしたように。あの騎士におそらく、何らかの罰を下す。
構わないと思う。
正直リジーには関係がない。そもそも、あの騎士はリジーを敵視していた所もある。
そんな騎士がどうなろうと、どうでもいいと言えばどうでもよくて。
ただ、魔道具が壊れたので、今、リジーはスペリアから魔道具を向けられていなかった。
こんなの久し振りだ。なんだかすっきりしている。スペリアに四六時中追い掛け回されることは、自分で思っていたよりストレスになっていたんだなとそう思った。
そうでもなければ、どうして魔道具1個壊れて、それが自分に向いていないというだけで、此処まですっきりすることがあるというのか。
だから、理由なんてそんなもので、つまりはただの気まぐれで。
まぁ、故意じゃなかったにしろ、あの鬱陶しい魔道具を壊してくれたあの騎士には、感謝ぐらいしてあげてもいいものね。
珍しくスペリアもむざむざ魔道具を壊される、なんていう不覚を取っていることだし。
リジーは一つ頷いて席を立つ。
「リジー?」
「ちょっと行ってくるわ」
不思議そうにリジーを見上げたヴィテアにひらと一つ手を振って、軽い足取りで、いまだ極寒地帯化の如く、凍り付いている廊下へと向かった。
近づくとスペリアの時に、肌がビリビリと震えるほど。スペリアがこんなに怒るのも珍しい。と、言うか、自分が見るのは初めてじゃないだろうかと思うと同時、近づくリジーに気付いていないらしいスペリアというのも、それ以上に珍しいなとリジーは感心した。
それほどあの魔道具は大事だったのか。
いや、大事だったのはリジーを保存しておく手段の方だろうか。
そんなものどう考えても要らないと思うのだけれど。
まぁいい、そんな魔道具は今、目の前で壊れているのだし。
とりとめもなく考えながら、廊下まで出たリジーは、怒り心頭のスペリアと、その目の前で這いつくばっている騎士に声をかけた。
「ねぇ、そんなに怒らなくてもいいじゃない」
リジーの声に、弾かれたようにこちらを向いたスペリアの目が、驚愕に大きく見開かれていって、この表情もあまり見ないなとリジーはなんだかおかしくなった。
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