乙女ゲーム?悪役令嬢?王子なんて喜んで差し上げます!ストーカーな婚約者など要りません!

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
26 / 43

25・パターン4、仲のいい従兄弟⑥

しおりを挟む

 従兄弟はとても悩んで悩んで、ひとまず今日の所はこれ以上ごねるのはやめたようだった。

「……~~っ、わかった、なら今日! 必ず時間を作ってくれよ!」

 基本的には素直な性質なのである。
 スペリアのことに関して、リジーに何か言ってくるようなことさえなければ、好感が持てる人物だと思えるだろうぐらいに、従兄弟はつまり、いい人で、だからこそスペリアに振り回されていると言えた。
 少しばかり、正義感が強い所もあるのである。
 加えて、自分の中にある真っ当な価値観・・・・・・・にどうやら絶対的な自信があるらしく、だからこそスペリアのことが理解できないのだろうなとそう思った。
 否、スペリアのことなんて、理解できる人はほとんどいないと思うけれども。
 従兄弟が引いたので、当然その日もスペリアの行動は変わらず、わざわざ休み時間の度に廊下まで出て、そこから魔道具を片手に教室をのぞき込んでは、

「ああ、リジー! 今日も可愛いよぉ!」

 などと、まったく潜めていない声で呟きまくっていた。相変わらず丸聞こえである。
 その度に従兄弟の眉間のしわは深くなっていって、リジーはいつも通り気持ち悪いなと思うばかりなのだった。
 翌日登校してきた従兄弟は、前日までよりもずっとずっと苦々しい顔をしていて、だが、リジーに何か言ってくることはなく、スペリアのいつも通りの言動を、まるで親の仇かのように睨みつけるようになっていた。
 いったい何があったのか。全く知りたくはなかったが、宣言通り、スペリアが時間を取ったのだろうことだけは明らかで、程なくして従兄弟は結局、実家のある国の学園へと、再度編入することになりこの国から去っていった。
 つまり、リジーとしては、それほど迷惑をかけられたりはしなかったなと思うのだけれども、ここで問題となるのは、仲が良かったはずの従兄弟でさえ、スペリアを説得できなかったようだという事実。
 傍から見ると、決して悪い人物というわけではなかった従兄弟でさえ駄目だったのだ。それ以外でスペリアに影響を与えられるような、同性の友人・・・・・なんて存在が現れるとは思えない。
 うん、これもダメだなとリジーは頷いて、もう少しだけ考え続けた。
 友人もダメ、なら、部下ならどうだろうか。騎士とかそういう。
 ちらとスペリアを見る。
 相変わらずスペリアはリジーから見える場所にいて、そして。
 スペリアの傍らには、騎士。
 護衛なのだろう、はっきりと傍に控えている時もあれば、着かず離れず、見えない場所から見守っていることもある存在である。
 騎士もダメだったんだよなぁ……と、リジーは彼のことを思い出し始めたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

処理中です...