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25・パターン4、仲のいい従兄弟⑥
しおりを挟む従兄弟はとても悩んで悩んで、ひとまず今日の所はこれ以上ごねるのはやめたようだった。
「……~~っ、わかった、なら今日! 必ず時間を作ってくれよ!」
基本的には素直な性質なのである。
スペリアのことに関して、リジーに何か言ってくるようなことさえなければ、好感が持てる人物だと思えるだろうぐらいに、従兄弟はつまり、いい人で、だからこそスペリアに振り回されていると言えた。
少しばかり、正義感が強い所もあるのである。
加えて、自分の中にある真っ当な価値観にどうやら絶対的な自信があるらしく、だからこそスペリアのことが理解できないのだろうなとそう思った。
否、スペリアのことなんて、理解できる人はほとんどいないと思うけれども。
従兄弟が引いたので、当然その日もスペリアの行動は変わらず、わざわざ休み時間の度に廊下まで出て、そこから魔道具を片手に教室をのぞき込んでは、
「ああ、リジー! 今日も可愛いよぉ!」
などと、まったく潜めていない声で呟きまくっていた。相変わらず丸聞こえである。
その度に従兄弟の眉間のしわは深くなっていって、リジーはいつも通り気持ち悪いなと思うばかりなのだった。
翌日登校してきた従兄弟は、前日までよりもずっとずっと苦々しい顔をしていて、だが、リジーに何か言ってくることはなく、スペリアのいつも通りの言動を、まるで親の仇かのように睨みつけるようになっていた。
いったい何があったのか。全く知りたくはなかったが、宣言通り、スペリアが時間を取ったのだろうことだけは明らかで、程なくして従兄弟は結局、実家のある国の学園へと、再度編入することになりこの国から去っていった。
つまり、リジーとしては、それほど迷惑をかけられたりはしなかったなと思うのだけれども、ここで問題となるのは、仲が良かったはずの従兄弟でさえ、スペリアを説得できなかったようだという事実。
傍から見ると、決して悪い人物というわけではなかった従兄弟でさえ駄目だったのだ。それ以外でスペリアに影響を与えられるような、同性の友人なんて存在が現れるとは思えない。
うん、これもダメだなとリジーは頷いて、もう少しだけ考え続けた。
友人もダメ、なら、部下ならどうだろうか。騎士とかそういう。
ちらとスペリアを見る。
相変わらずスペリアはリジーから見える場所にいて、そして。
スペリアの傍らには、騎士。
護衛なのだろう、はっきりと傍に控えている時もあれば、着かず離れず、見えない場所から見守っていることもある存在である。
騎士もダメだったんだよなぁ……と、リジーは彼のことを思い出し始めたのだった。
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