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23・パターン4、仲のいい従兄弟④
しおりを挟むそんなスペリアの様子に従兄弟は途端きゅっと眉根を寄せた。
そして何故か、そんなスペリアへの注意を、リジーへと促してきたのである。
「リヒディル公爵令嬢。あれは一体どういうことだ! どうして悪化しているんだ! あれほど言ったのに、君はスペリアへの態度を改めなかったのか?!」
どういうことかと言われても。なぜこの従兄弟は、まるでリジーが悪いかのような言い方をするのだろうかとリジーは不思議でならなかった。
リジーは告げる。別にこのスペリアの従兄弟と争いたいわけではない。
「私もいろいろと試みてはみたのですが……」
どれもこれも上手くはいかなかった。
そんなリジーの言葉にも、従兄弟の険しい顔は崩れず、剰え、
「君はスペリアの婚約者だろう?! 何よりスペリアのあの行動の理由は君だ! 君以外に、どうしてスペリアを何とか出来るというんだ!」
え、そんな無茶な。
リジーの正直な感想である。
そんなに言うのなら、この従兄弟にこそ何とかしてほしかった。なにせこの男は立派にスペリアの従兄弟なのだから。
いくら家が他国にあるからとはいえ、そもそもリジーとスペリアが出会う前からの仲だというではないか。
基本的に争いを好まず、大抵の言葉なら相手にすらしないリジーは、しかしこの時ばかりは不機嫌を隠さずに言い返すことにした。
「そうはおっしゃいましても、私なりに色々試しては来てるんです。そんなに言うのなら、貴方の方こそどうにかなさったらいかがです? 貴方はスペリアの従兄弟でらっしゃるのですから」
まさかリジーが言い返すとは思ってもみなかったのか、従兄弟は一瞬、言葉に詰まったようだった。
確かに思い返してみると、リジーはこの従兄弟と接する時、無駄に争うことがないようにと、言い返すことなどほとんどしなかった。
逆に言い返すほど重要な意見だともとらえていなかったのだけれども、それはともかく。だから多分今も、この従兄弟はリジーが諾々と頷くだけだと思っていたはずだ。
いったいこの男の中のリジーはどうなっているのだろうか。
そもそもリジーは決して言われっぱなしを許すようなおとなしい人物でなどないのだけれども。ただ単に面倒くささが勝って、聞き流すことが多いだけで。
男が言葉を出せなかったのはほんの一瞬で、次には男の顔は嫌悪と侮蔑に塗れていて。スペリアに似た整った顔が台無しだった。
「言い訳はいい。結局、君はスペリアをどうするつもりもないということだな? もう結構だ。俺が何とかする」
そう吐き捨てるように言い放って、そのままリジーへと背を向けはじめる。
いや、だから初めから自分で何とかしてくれという話だったのだが。と、リジーは思いながら、肩を怒らせて足音高く去っていく男の背中を、ぼんやりと見送ることになったのだった。
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