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22・パターン4、仲のいい従兄弟③
しおりを挟むリジーはどう応えればいいのだろうかと悩んだ。
どうにかならないのかと言われても。
「私もどう対応すればよいのか、わからないのです」
とりあえず素直に正直に心情を吐露してみる。
別にリジーだって、初めからスペリアを無視していたわけではない。これでもリジーなりの歩み寄りは試みたことがあったのだ。
結局すべて台無しにされて、諦めてしまったのだけれど。
スペリアの従兄弟は、リジーの言葉に納得した様子ではなかった。しかし、その時はまだ幼く、あくまでも苦言を呈した程度、それほど厳しく激昂したり、糾弾したりだとかいうこともなく。
「わからないのか……だが、あれほどまでに無視し続けるというのもあんまりだろう。なんとか変えるようにした方がいいと思う」
と、釈然としない様子ながら、注意を促すにとどめたようだった。
リジーも素直に頷いて、
「そうですわね、また考えてみますわ」
そう応え、その時はそれで済んだ。
なお、リジーは素直だったので、従兄弟の言うとおり、その後、幾度かスペリアへの態度を変えるべく試みてみたのだけれど、なにぶんスペリアが、
「ああ! リジーが構ってくれるなんて! 僕はこのまま死んでしまうのではないだろうか! あれ? リジー、離れていってしまうのかい? 後姿も素敵だね!」
というような調子で早々に耐えきれなくなり、結局は無視という形に落ち着いてしまった。
と、言うか、近づいたら死ぬのか。それはちょっと目覚めが悪すぎるのでやめて欲しい。あながち大げさとも言い切れないスペリアの感激っぷりに、リジーは逆に近づけなくなるような有り様だった。
いずれにせよあまりにも毎日毎日顔を見せるので、構いきれなかったとも言える。
そんなことが続くと、また見るに見かねた従兄弟が注意をしてきて、その度リジーはスペリアを持て余し、ついにいろいろな部分で限界が訪れたのは、学園に入ってから後、3学年になってすぐのことだった。
あの、他国の公女がいなくなった直後である。
そもそも、従兄弟の父である王兄は国外で商売を営んでいる。必然的に、従兄弟の生家は国外にあり、学校も、2学年が終わりまでは、そちらの方へと通っていた。
何があったのか、何もなかったのか、その従兄弟は、3学年に上がると同時にリジーたちの通う学園へと編入してきたのである。
「やぁ、スペリア! 久しぶりだね。今日から俺もここに通うんだ。よろしく頼むよ」
お互いに学校に通い始めたのもあり、実に数年ぶりの再会であるようだった。
しかし、非常にさわやかで明るい従兄弟に対して、スペリアは何処までもいつも通りで。
「ああ、君か。久しぶりだね。それはそれとして少し位置をずれてくれないか。リジーがよく見えなくなってしまう。ああ、リジーがこちらへ視線を投げている! 珍しい! 胡乱げな顔も可愛いよ、リジー!」
はぁはぁと荒くなる気持ち悪い息遣いと共に、スペリアは大変に元気だった。
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