21 / 43
20・パターン4、仲のいい従兄弟①
しおりを挟む公女はあの後、誰が呼んでいたのか……――ほぼ間違いなくスペリアだけれども、駆け付けた王宮騎士により何処かへと連れて行かれた。
滞在許可を出さないと言っていたので、本当に国外へと追い出したのだろう。荷物も何もなく、あのまんま。
あの場にいた公女の侍従らしき男は、連れて行かれる公女を助ける様子など見せず、なんとも言えない顔で見送って、リジーとスペリアに頭を下げて、早急にその場を去っていった。帰還命令が出ていると言っていたので、国に帰ったのだと思う。
なお、公女自慢の小公国からは、数日のうちに早急に正式な謝罪が届いた。しかも、帝国との連名で、である。
属国の不始末に宗主国が出てきた形だ。彼の帝国らしいなとリジーは思った。それにより件の小公国が宗主国からどのような制裁を受けたのか。そう言ったことはリジーの知る所ではないけれども、何もなかったとは思えない。公女の教育を誤り、国外に出してしまった責任を取ったのだろうと深くは考えないこととする。
なんだか恐ろしくて、想像したくもなかったので。
とにかく、そんな風に思い出してしまったので、ああ、高位貴族もダメなんだなと思った。
あと、後は……何があるだろうか。どのような存在なら可能性があるのか。可愛い元平民の少女、気位の高い貴族令嬢、他となるとどんな。
ああ、そうだ、女の子がダメなら男の子ならどうだろうか。あざとかわいい感じではなく、気安い態度の、親友、のような立ち位置のそういった存在。友人からの影響とかで現状が変わる可能性だとかも、なくはないだろう。
そんな少年は今まで……――いなかった、はず、と記憶を辿って、いや、いたなとリジーは思い直した。
気安い態度で、親友のような立ち位置の、スペリアとひどく近い距離間であった少年。
それはリジーとも昔から顔見知りの、スペリアの従兄弟だった。
臣籍に下った王兄の息子で、王兄自身は確か、王位を厭って継承権を放棄し国外で商売を営んでいたはずだ。そんな王兄の第三子であり次男であったスペリアの従兄弟は、リジーやスペリアと同じ年だった。
王兄は王位を厭っていたとはいえ、別にスペリアの父である現国王たる弟と仲が悪いわけではない。
双方合意のもと、非常に円満な継承権の放棄だったとも聞いている。
当然、王兄の子供たるスペリアの従兄弟たちには、はじめから継承権など存在せず、アンセニース大王国内で爵位を賜っているわけでもないことから、王族で、かつ、国王の甥とは言え、身分としては平民となった。
とは言え、親戚であることに変わりはないので、小さい時から比較的頻繁に王宮には出入りしていたと記憶している。
スペリアとも非常に仲が良く、気もあっていたはずだ。……――リジーに対する、スペリアの態度に関して、以外は。
2
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

一番悪いのは誰
jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。
ようやく帰れたのは三か月後。
愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。
出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、
「ローラ様は先日亡くなられました」と。
何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる