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20・パターン4、仲のいい従兄弟①
しおりを挟む公女はあの後、誰が呼んでいたのか……――ほぼ間違いなくスペリアだけれども、駆け付けた王宮騎士により何処かへと連れて行かれた。
滞在許可を出さないと言っていたので、本当に国外へと追い出したのだろう。荷物も何もなく、あのまんま。
あの場にいた公女の侍従らしき男は、連れて行かれる公女を助ける様子など見せず、なんとも言えない顔で見送って、リジーとスペリアに頭を下げて、早急にその場を去っていった。帰還命令が出ていると言っていたので、国に帰ったのだと思う。
なお、公女自慢の小公国からは、数日のうちに早急に正式な謝罪が届いた。しかも、帝国との連名で、である。
属国の不始末に宗主国が出てきた形だ。彼の帝国らしいなとリジーは思った。それにより件の小公国が宗主国からどのような制裁を受けたのか。そう言ったことはリジーの知る所ではないけれども、何もなかったとは思えない。公女の教育を誤り、国外に出してしまった責任を取ったのだろうと深くは考えないこととする。
なんだか恐ろしくて、想像したくもなかったので。
とにかく、そんな風に思い出してしまったので、ああ、高位貴族もダメなんだなと思った。
あと、後は……何があるだろうか。どのような存在なら可能性があるのか。可愛い元平民の少女、気位の高い貴族令嬢、他となるとどんな。
ああ、そうだ、女の子がダメなら男の子ならどうだろうか。あざとかわいい感じではなく、気安い態度の、親友、のような立ち位置のそういった存在。友人からの影響とかで現状が変わる可能性だとかも、なくはないだろう。
そんな少年は今まで……――いなかった、はず、と記憶を辿って、いや、いたなとリジーは思い直した。
気安い態度で、親友のような立ち位置の、スペリアとひどく近い距離間であった少年。
それはリジーとも昔から顔見知りの、スペリアの従兄弟だった。
臣籍に下った王兄の息子で、王兄自身は確か、王位を厭って継承権を放棄し国外で商売を営んでいたはずだ。そんな王兄の第三子であり次男であったスペリアの従兄弟は、リジーやスペリアと同じ年だった。
王兄は王位を厭っていたとはいえ、別にスペリアの父である現国王たる弟と仲が悪いわけではない。
双方合意のもと、非常に円満な継承権の放棄だったとも聞いている。
当然、王兄の子供たるスペリアの従兄弟たちには、はじめから継承権など存在せず、アンセニース大王国内で爵位を賜っているわけでもないことから、王族で、かつ、国王の甥とは言え、身分としては平民となった。
とは言え、親戚であることに変わりはないので、小さい時から比較的頻繁に王宮には出入りしていたと記憶している。
スペリアとも非常に仲が良く、気もあっていたはずだ。……――リジーに対する、スペリアの態度に関して、以外は。
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