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16・パターン3、他国の公女④
しおりを挟む「わたくしはあの、ドゥナラル公国の公女ですのよ! わかっておりますの?! たかが公爵令嬢の分際でっ」
何様なのかと思ったら、公女様だとでも言いたいのだろう。
公女。
それはそれほど高い地位だっただろうか。
彼女は、あのと言っていたけれど、リジーの記憶では確か、ドゥナラル公国と言えば小国である。
しかも大国の属国。まさか大国の権威まで、自分の国のものだとでも思っているのだろうか。
「我が国の背後にはあの、大帝国が控えておりますのよ!」
どうやらそのまさかであるようだった。
背後。だから何だというのだろう。こちらは独立した大国である。
確かに、ドゥナラル公国の宗主国である帝国には敵わない。だが、あの帝国はそういった権威を振りかざす行為を好まないはずだ。否、そういうようなことをするような者がいるからこその属国なのか。
守護結界に守られた帝国には、おそらく足を踏み入れることさえできないのではないだろうかと思われる公女。
帝国はともかく、彼女の国そのものとでは、我が国は国力差があった。
少なくとも間違いなく我が国の方が上。そんな我が国の公爵家をこの公女は侮りすぎている。
流石に面白くない気分でリジーはさてどうしたものかと考えた。
そもそも、この公女の言っていることは意味不明だ。
リジーは一度としてスペリアを独占したことなどない。あれはむしろ好き好んで自分から独占されようとしている。自分を撮らせているといったが、リジーは逆にやめて欲しいと思っているのだが。
でも多分、そんなこと言っても無駄なのだろうなとリジーは思った。
なんだか勢いが凄かったからつい、ついてきてしまったけれど、ついてくるのではなかったとすでに後悔でいっぱいだ。
こんなわけのわからない糾弾を受けるだなんて。
何よりもリジーが頭が痛くなりそうだと思う原因は、案の定当然のように、近くの壁際に隠れられてもいないのに一応は隠れるようにして佇んでいるスペリア。
勿論、いつも手にある魔道具はこちらに向いているし、間違いなく公女の言葉は全てスペリアに届いている。
証拠に、
「わけわからないこと言われて戸惑うリジーも可愛い!」
などという相変わらずな言葉が耳に届いた。
しかし多分何故かそれはこの公女には届いていないようなのである。
何故だろう、自分が言葉を発することだけでいっぱいいっぱいにでもなっているのだろうか。
「ちょっと、貴方聞いておりますの?! なんとか言ったらどうなんです?!」
公女は明確に怒っていた。
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