乙女ゲーム?悪役令嬢?王子なんて喜んで差し上げます!ストーカーな婚約者など要りません!

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
16 / 43

15・パターン3、他国の公女③

しおりを挟む

 学年が違う以上、公女とリジーとの接点など、まったくと言っていいほどほとんどなかった。
 そのはずだった。
 しかしそもそも、学園内で特定の誰かと仲良くしようとした場合、学年やクラスが違うと、交流を持てる機会は登校時と休憩時間、放課後しか存在しない。
 つまり、スペリアと仲良くなりたい公女は、登校時と休憩時間、放課後、その全てにおいて、リジーの教室へと顔を見せに来たのである。
 正確にはスペリアに付き纏った。
 例えば。

「おはようございます、スペリア様。いい朝ですわね。校舎まで共に登校致しましょう?」

 など、校門の所で待ち伏せしたり。

「スペリア様。昼食をご一緒にいかがです? 我が国自慢のシェフが、腕によりをかけましたのよ」

 などと誘いかけたり。

「スペリア様、これからお時間はおありになりますか? 見聞を広げる為にも、ぜひ、この国の案内をしてほしいのです」

 などなど、図々しくもねだってみたり。
 それら全てをリジーは無視した。だって関係がなかったので。そもそも、誘われているのはスペリアである。リジーではない。
 だが、スペリアが声をかけられて、リジーが無関係でいられるはずもなかった。
 なにせスペリアはスペリアなのだ。彼は何も偽らない。

「おはよう、公女殿。ちょっとそこをどいてくれないか、邪魔なんだ。リジーが撮れないじゃないか。ああ! リジーが見きれてしまった! 撮り直さないと!」

 と、朝はほとんど無視に近い対応をしたし、否、むしろはっきり邪魔だと言っていたし、

「申し訳ないけど、昼食を食べるリジーを撮るのに忙しいんだ。僕には悠長に昼食を摂る時間なんてないよ」

 と、昼は昼で片手間で食べれるサンドイッチなどを口に詰め込みながら告げ、

「それはいいね、でも案内はぜひ他の者に頼んではくれないか。僕は放課後のリジーを撮らなくてはいけないからね。それ以外にもやらなければならない執務なども山積みなんだ」

 と、放課後だってきっぱり断った。
 理由が全てリジーである。
 リジーリジーリジーリジー。
 結果、リジーが公女に目の敵にされ始めるのに、さほどの時間などかからなかった。
 公女はついにスペリアに誘いをかけるのではなく、リジーに文句をつけることにしたようだった。

「ちょっとそこのリジーとやら! 公爵令嬢だか婚約者だか知りませんけれども、ちょっとスペリア様を独占しすぎじゃありませんこと?! あまつさえ高貴なスペリア様にあれほどまでに自分を撮らせるだなんて……いったい何様のつもりです?!」

 昼休み、急に呼び出され、怪訝に思いながらもついていった先で、そんなことを言うこの人の方こそ、いったい何様のつもりなのだろうかとリジーは思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

侯爵令嬢の置き土産

ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。 「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。

すべてを思い出したのが、王太子と結婚した後でした

珠宮さくら
恋愛
ペチュニアが、乙女ゲームの世界に転生したと気づいた時には、すべてが終わっていた。 色々と始まらなさ過ぎて、同じ名前の令嬢が騒ぐのを見聞きして、ようやく思い出した時には王太子と結婚した後。 バグったせいか、ヒロインがヒロインらしくなかったせいか。ゲーム通りに何一ついかなかったが、ペチュニアは前世では出来なかったことをこの世界で満喫することになる。 ※全4話。

処理中です...