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15・パターン3、他国の公女③
しおりを挟む学年が違う以上、公女とリジーとの接点など、まったくと言っていいほどほとんどなかった。
そのはずだった。
しかしそもそも、学園内で特定の誰かと仲良くしようとした場合、学年やクラスが違うと、交流を持てる機会は登校時と休憩時間、放課後しか存在しない。
つまり、スペリアと仲良くなりたい公女は、登校時と休憩時間、放課後、その全てにおいて、リジーの教室へと顔を見せに来たのである。
正確にはスペリアに付き纏った。
例えば。
「おはようございます、スペリア様。いい朝ですわね。校舎まで共に登校致しましょう?」
など、校門の所で待ち伏せしたり。
「スペリア様。昼食をご一緒にいかがです? 我が国自慢のシェフが、腕によりをかけましたのよ」
などと誘いかけたり。
「スペリア様、これからお時間はおありになりますか? 見聞を広げる為にも、ぜひ、この国の案内をしてほしいのです」
などなど、図々しくもねだってみたり。
それら全てをリジーは無視した。だって関係がなかったので。そもそも、誘われているのはスペリアである。リジーではない。
だが、スペリアが声をかけられて、リジーが無関係でいられるはずもなかった。
なにせスペリアはスペリアなのだ。彼は何も偽らない。
「おはよう、公女殿。ちょっとそこをどいてくれないか、邪魔なんだ。リジーが撮れないじゃないか。ああ! リジーが見きれてしまった! 撮り直さないと!」
と、朝はほとんど無視に近い対応をしたし、否、むしろはっきり邪魔だと言っていたし、
「申し訳ないけど、昼食を食べるリジーを撮るのに忙しいんだ。僕には悠長に昼食を摂る時間なんてないよ」
と、昼は昼で片手間で食べれるサンドイッチなどを口に詰め込みながら告げ、
「それはいいね、でも案内はぜひ他の者に頼んではくれないか。僕は放課後のリジーを撮らなくてはいけないからね。それ以外にもやらなければならない執務なども山積みなんだ」
と、放課後だってきっぱり断った。
理由が全てリジーである。
リジーリジーリジーリジー。
結果、リジーが公女に目の敵にされ始めるのに、さほどの時間などかからなかった。
公女はついにスペリアに誘いをかけるのではなく、リジーに文句をつけることにしたようだった。
「ちょっとそこのリジーとやら! 公爵令嬢だか婚約者だか知りませんけれども、ちょっとスペリア様を独占しすぎじゃありませんこと?! 剰え高貴なスペリア様にあれほどまでに自分を撮らせるだなんて……いったい何様のつもりです?!」
昼休み、急に呼び出され、怪訝に思いながらもついていった先で、そんなことを言うこの人の方こそ、いったい何様のつもりなのだろうかとリジーは思った。
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