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11・パターン2、元平民の少女②
しおりを挟む一応と心配してリジーと一緒に行動していた、こちらは今持って平民であるヴィテアはリジーの隣で共に少女の話を聞くこととなり、何とも言えない顔をしていた。
後から聞いたところで曰く、こんなのと同じと思われたくなかっただとかなんだとか。
髪の色も、多少の濃さこそ違えど似たようなピンク色で、少女とヴィテアをきょろきょろと見比べて、
「姉妹?」
と尋ねたら、とんでもない勢いで否定された。
「違います~~!! なんで私がこの子と姉妹って話になるんですか! 髪色がちょこっと似ている程度で、顔も全然違うでしょう?!」
言われて改めて見てみると、なるほど確かに違っている。だけど。
「可愛い感じって印象みたいなのが似てる。雰囲気が」
と重ねると、ヴィテアは渾身で機嫌を損ねていた。
とにかく、少女の話はわけがわからなかった。スペリアのことが好きになっただとかなんだとかは、好きにすればいいと思う。だが、何故そんな話を、リジーに訴えてくるのだろうか。
肝心の熱弁してくれる話の内容も、どれだけ聞いてもスペリアのどこが良かったのかが全くわからない。
いや、かっこよかっただとか、優しいだとかいうのはともかく、何故それで自分に気があると思ったのかが理解できなかったし、普段の行動が、リジーの所為だと言われても。
「とにかく! スペリア様にあんなことをさせるのはやめてください!」
と、まるでリジーが望んでスペリアにあんな行動を強いているかのように話されるのははなはだ心外でしかありえなかった。
まさか本気でこの少女はそんなことを思い込んでいるのだろうか。
自然と寄っていく眉根は抑えられず、どうすればいいのかもわからず。
と、言うか、やめてくれるというなら、むしろリジーこそやめて欲しいのだが。
今だって、少し離れた壁際からバレバレな様子でリジーたちの方をのぞき込んで、いつも通りに魔道具を向け、どうやら映像だか画像だかを保存し続けている。
多分ほぼ間違いなく、この会話も聞いている。
あの行動を、リジーが強要していると?
そんなわけがないではないか!
「ああ! 困惑するリジー可愛い!」
だとかなんだとかも聞こえてきているんだぞ!
あのスペリアの声はどう説明するというのだろう。それとも、スペリアの言葉自体を、この少女は理解していないだとか? 自分が好きだと思う相手が話している内容なのだが。
首を傾げ続けるリジーの反応に、更に怒りを煽られたらしい少女はまたしても何事かよくわからないことを捲くし立て、そしてついに。
「……っ! ちょっと顔が可愛いからって! 貴方なんてスペリア様に相応しくないわ!」
と、おおむねそれまではスペリアがいかに素晴らしいか、自分が彼にいかに好かれているかなどというわけのわからない妄想を繰り広げるだけだった少女が、リジーを糾弾し始めるに至った。
リジーは思った。
あ、これはまずい。と。
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