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18・茶会①
しおりを挟む昨日の今日、とまでは流石になかったけれど。
それでも、三日。たったの三日だった。
何がって? それは……――。
「王宮にこのような素敵なガゼボがあるだなんて、私知りませんでしたわぁ」
「この度はご招待頂いて……」
「うふふ。とても光栄ですわ!」
「えぇっと、そう言って頂けると、」
「あら! 当然でしてよ? 皆さまを招待しないはずなんてございませんもの」
華やかに感心した声を上げたかと思えば、他のご令嬢たちが礼を述べるのに、返そうとした僕を遮って、さも自分がこの茶会の主催かのように軽やかに言い放ったのは他でもないアレリディア嬢、その人だった。
――……そう、つまり三日前、僕の執務室へと急襲してきたアレリディア嬢が口にしていた茶会の席が実現するまでの時間が、だ。
もっとも、この対応も、もしかして仕方がないことなのかな、と僕は苦く笑うだけで口を噤む。
もとより、茶会の招待状を持ってくると言っていたのはアレリディア嬢の方であるのは確かで、その時点で彼女は、当然自分が主催するつもりであったのだろう。
おそらくは彼女自身の暮らすコーデリニス侯爵邸で。
だけど僕がそれに赴くというのは当たり前ながら許可が下りなかった。
リア様も、デオやヨーヌ、ケーシャも、はては宰相まで誰一人としてよしとはせず、僕自身も別に行きたいなどとは思わず、剰えコーデリニス侯爵家へはアレリディア嬢の行動について苦情まで入れていた。
そのような状況でもし、茶会の招待状など持って来られていた所で、間違いなく不参加となったことだろう。
それが嫌だったのか何なのか、むしろ必ず僕と共に茶会に参加せねばならないと言う硬い意志でも持っていたのか、いったい『誰』が『何』をどうやったのか、気が付くと何故か王宮の中庭、少しばかり奥まったところにあるガゼボで僕が主催となってちょっとしたお茶会を開催することとなっていて――……今に至る。
招待客の選定かな何から何まで僕は関わっていないけれど、僕の名で招待状は送ったのだと聞いていた。
勿論、僕自身、招待状をはじめ今回用意した茶葉や菓子など、そういったすべての報告は受けていたし、確認もしている。
逆に言うと確認しただけだというだけで。……――聞く所によると、手配は基本的にリア様がなさったのだそうだ。
アレリディア嬢を程よく黙らせておくための采配だと言っていたのはヨーヌだったろうか。おそらくはそれで間違ってはいないのだろう。
現に今も、僕を押しのけるかのようなアレリディア嬢の様子に、他の参加者は皆、顔を引きつらせている。
つまりこの場で、少しばかり周りが見えていないのはアレリディア嬢のみということだ。
僕はなんとか笑顔を保つだけで精一杯で、いったい何を言えばいいのかすらよくわからない。
ただ、このままアレリディア嬢に任せっぱなしにしておくわけにはいかないことだけは確かで。確か、今日の参加者の人達は、などと、それぞれのご令嬢の詳細を思い浮かべながら僕は場を取り持ち直すべく口を開いた。
いずれにせよ、婚姻式及びお披露目が終わればこのような場も持たなければならないのだろうから、それの予行練習と思うことにしようと心に決めて。
まだあと2か月ほどは先であったはずの予定外の『社交』に、なんだか胃がきりきりと痛み始めそうだった。
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