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第二幕
2-7・会いたい、それは
しおりを挟むその日以降、俺の休日は全て、あの、いつかのおでかけ先を探すことに費やされることになった。
少しでも似た場所なのではと思った所にはどこへでも足を運び、周辺をくまなく歩きまわる。
「違う。此処も違う」
探しているのはあの日、見た景色。あの日、然乎さんと回った場所。
「麻菊ー。最近付き合いが悪いぞ」
相変わらず用もないのに休日出勤に付き合わせようとしてくる上司からの、休日出勤のお願いは、軒並みすべて断るようになっていた。
付き合いが悪いと言われても。そもそもがおかしかったのだ。
仕事もないのに、休日に出勤していただなんて。
「すみません、土日はちょっと用があって……」
殊勝に謝りながら、しかし断固として断る。
「なんだなんだ、彼女でも出来たのか?」
にやつきながら下世話なことを聞いてくる上司に俺は辟易した。
彼女などいない。
俺がしていることは、あのおでかけ先を探すことだけだ。
「いや、あの、そういうんじゃないんですけど……」
彼女。そう言われて思い浮かんだのは他でもない然乎さんだった。
でも、俺はこれまで彼女をそう言った目で見たことはなく、何より彼女は女子高生。まだ子供だ。その上、神様を自称する気味の悪さまで備えていて、彼女だとかなんだとかの対象にはなり得ない。
だけど。
「……ちょっと、探してる人がいるんです。手がかりが、少なくて……」
でも、会いたくて。
気が付けば俺はそんなことを口からこぼしてしまっていた。
からかう調子だった上司が、妙に沈んだ様子の俺に気付いてか、少し神妙な雰囲気へと変わる。
「そういうんじゃなくて、探している相手?」
確かめられて頷いた。
「それは女か」
「女性では、ありますね」
声も何もかも女の子だった。まさか女装だったなんてことはあるまい。
「うーん。お前が自覚してないだけで、それだけ気になるってことは、そういう対象なんじゃないかと思うがなぁ……」
首を傾げながらの上司の言葉に、俺はきつく眉根を寄せた。
古い人は、まったく男女と見ればすぐに色恋沙汰と結び付けたがる。
俺が然乎さんのことが好きだなんてそんなもの。そんなもの。
あり得ない。言い切ることが出来た。だけど。
会いたい。
そんな欲求の切実さを、どうして恋じゃないなんて言えるのだろう。
自分で自分がわからない。
ただ、今俺が出来ることは、これまでのように、霞を掴むような感触の中、あのおでかけ先を探すことだけなのは確かなのだった。
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