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5・更に前の話、きっかけ。

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 さて、もっとさかのぼってみよう。
 そもそも、なぜ、あのようなことを思いついたのかというと、きっかけは通っていた学園で、主に女子生徒の間で流行っているのだと聞いた、大衆小説の話だった。

「逆ざまぁ?」

 僕にそれを教えてくれたのは、幼い頃から僕を支えて・・・くれていた高位貴族のご令嬢の一人で、色々と不自由の多い僕に、学園でも寄り添ってくれていて、気を紛らわせるためにと話して聞かせてくれた、いま彼女が好んで読んでいるという小説についてのお話の内容がそれだったのである。

「そうですわ。ざまぁを逆にし返されるというお話なんですの」

 と、言うか、そもそもざまぁとは何なのか。
 疑問が顔に出ていたのだろう、彼女はにっこりと微笑んだ。

「ざまぁというのは、よくない行いをしていた者が他者を陥れようとして、相手から逆に仕返しをされる、と言った状況の含まれたお話などを指しますの。ざまぁみろ!というような心境になることを言いますわ。逆ざまぁはそれを更に覆したお話ですわね」

 なんだかややこしい話で、よく意味が解らなかった。
 とりあえず自分なりに整理して復唱するように確認する。

「と、すると何か、たとえばの話、お前が僕に何か良くないことをしようとして、僕がそれを阻んでやり返すのがざまぁ、僕がやり返した後、更にやり返されるのが逆ざまぁということだろうか」

 それはなんだか僕が、よくない事を一方的にされるだけの話にはならないだろうか。
 一度やり返すという行動を挟んでいる所が逆ざまぁなのか。

「そうですわねぇ、だいたいその解釈であっていると思いますわ。後は、今のお話ですと、殿下の方もまた、よくないことを企んでおられたりだとか、ですわね」
「お互いによくない事を企み合っているのか?」

 それはなんだか心が荒みそうだと眉根を寄せる。
 彼女は小さく苦笑した。

「あくまでも小説などの創作物の中のお話ですもの。読者は因果応報、とでも言えばよいのか、よくない事を企んだ者が、報いを受けるのを見て、爽快感を覚えるのではないかと思いますわ。少なくとも私はそうですもの」

 華やかに微笑む彼女に、僕はそんなものなのかと、わからないなりに頷いて返した。
 あくまでもそれは、日常の中の話題の一環だった。
 そのようなものもあるのだな、と思ったに過ぎず、気に留めるようなものではなかったのである。
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