【完結】初めて会うイケメンの旦那が甘やかしてくるんだが。ちょっと待ってこれどんな状況?

愛早さくら

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続編的番外編

x-29・父の屋敷①

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 ディルは明確にぷりぷりと怒っていた。
 当たり前だ。
 俺がディルに結局何も返事をしなかったからだ。
 そして起こったままそれでも俺に着いてき続けてきた。
 これでもかというほど、隣で俺を罵りながら。俺はそれらを半ば聞き流すようにして歩き続けた。
 たまたま行き会っただけの街の人たちが、時折、俺とディルを見て、ぎょっと目を見開いたりなどしていたが、そんなものに構えるわけがない。
 俺はただ先へと急ぐだけ。
 たった数分、されど数分。
 なんだか妙に長く感じる数分間だったのは間違いなかった。

「ここだな」

 やがて見えてきた一軒の屋敷の前で俺はぴたりと足を止めた。
 辺りの気配を探る。
 屋敷の中にあるのは、覚えのある魔力。
 父の物だ。
 他にはおそらく見知った者などいないけれど。
 屋敷は元国王が済むとは思えないほどにこじんまりとして見えた。
 とは言え、周りの家々と比べるとそれなりには大きい。
 屋敷と言って差し支えない程度には見えた。
 父について国を出ていた、老齢の侍従が結局そのまま父の面倒を見てくれていて、この屋敷も彼が手配したのだと言っていたのだったか。
 確か数人、護衛や侍女も共に過ごしていると聞いている。
 きょろと辺りを見回すと、ドアノッカーのようなものがあったのでそれを鳴らした。
 ディルは俺の半歩後ろで、辛うじて口は閉じていたけれど、ふてくされた顔をして立っていた。
 俺が今日訪れることはすでに父に知らせている。

「はい」

 おそらく侍女なのだろう、女性の声がしてドアが開けられた。
 なのに俺を見て目を見開いて驚いている。
 そんな風に驚くような要素などあっただろうか。俺はきょとんと首を傾げた。
 ディルが後ろで呆れたような溜め息を吐いていたが、これもまた意味が解らない。

「ああああ、あ、あの、も、もしやリオル様、ではなく、フィリス様、でいらっしゃいますか?」

 何故、母の名が出るのか。ああ、そうか俺の顔が母に似ているからか。
 一瞬疑問に思ったが、すぐに納得して、俺はこくんと頷いた。

「ああ。今日訊ねることは知らせておいたと思ったのだが……」
「も、もちろん、お伺いしております! ど、どうぞ、こちらへ!」

 話はちゃんと通っていたらしい。緊張した様子の侍女に促され、俺は父の住む屋敷へと足を踏み入れた。
 またしても後ろから溜め息。やはり意味が解らなかった。
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