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続編的番外編
x-26・大公との通信②
しおりを挟む『はい。そもそも、あの者を紹介させて頂きました、私の人選が誤りでした。庶子とはいえ、半分は血のつながった兄ですから。信頼を寄せている部分もあったのですが……そちらにご迷惑をおかけしているというのでしたら、こちらとしてはそのようなこと、もちろん本意ではございません。如何様に対応頂いてもよろしいかと』
ディルが今後どのような目に合おうとも、自分は一切関知しない。
そうとも取れる彼女の発言に、どうやら本当に、俺と父への監視よりも、ディルの態度をこそ問題視している気配が伝わってきて、ならばと俺は少しだけ考えた。
そもそも、俺と父のやり取りが監視されていようがどうだろうが、構わないと言えば構わないのだ。だがそれは同時に、その監視役がディルでなくともいいということでもある。
(うーん、一応、意図を汲んで水を向けておこうか……それとも)
少し迷った。
ディルを思い出す。
どう考えても俺を嫌っているあの態度。
別にリリフェステに対しても彼女に対しても思い入れだとかは何もない。同時に恨みなども。だが、それはそれとして、だからと言って、ディルを好きにしていいと言われても、何故こちらがそれをせねばならないのか、そう思う部分もあった。だから。
「……もし、必要なのなら、代わりを寄越して貰ってもこちらは構わない。彼にもそちらから伝えてもらえれば」
俺達の方がディルに何かを伝えるのではなく、そちらで伝えて欲しい。
その方が間違いなく、多少なりとも彼の怒りがこちらから逸れるのは確かだった。
そもそもこちらから彼に何かを言って、逆上されたりするのも面倒くさい。
やらかした者の始末は、是非、彼女側でどうにかして欲しかった。
女性大公は一瞬、目を見開いてい驚いて。だけど、ややあって小さく頷いた。
『宜しいのですか?』
なにせそうなるとその代わりが来るまで、ディルはこちらに居続けることとなる。
こちらとしては早く、ディルと離れてしまいたいことに違いはない。
しかし、あと数日であれば。
構わない、そうも思った。
もとよりここに来るまでの約一ヶ月をなんだかんだと共に過ごしている。
全く騒がしいばかりだったが、それがあとたった数日延びた所で、大きく意味など変わらないことだろう。
今更、今更なのだ。
彼女側で俺と父との動向を把握しておきたい。
そう思っているだろう心情も理解できるからこそ、それで彼女が安心できるのなら、いくらでも把握してくれていいとも思っていた。
おそらくディルではそれどころではなくなってしまうだろうけれども。だから、むしろ他の人員が来た方がよいというのもあった。
「構わない。明日、父の元を窺う予定でいる。そこで現状の確認をするつもりでいるのだが、実際に父が今度どうするのか、そういう判断や提案などを実行するまでには、少しばかり時間を要することだろう。だから、」
必要なら、そちらも、それまでにディル以外の人員を寄越してくればいい。
ここは彼女の治める国なのだ。
亡くなった国とは言え、他国の王族の動向が、気にならないわけがない。それが理解できるからこその俺の言葉。
俺の意向は、正しく彼女に伝わったのだろう。
『感謝いたします。あの者にはこちらから新たに人をやり、伝えることと致しましょう。そのままその者にあの者の引継ぎも任せます。そちらが我が国にいらっしゃる間だけとはなりますが、どうぞ何くれとなくご利用頂けるだろう者を今度こそは間違いなく手配いたします。ですから』
ディルへの怒りを、リリフェステという国には向けないで欲しい、そういった所だろう。
俺は心得たという代わりに頷いた。
「わかった。その者を待とう。それまではこちらからは彼を、出来るだけ刺激しないでおく」
俺の返事に、彼女はほっと安堵したと言わんばかりに微笑んで。
『そうして頂ければ助かりますわ。本当にこの度は重ね重ね申し訳ございませんでした』
重ねての謝罪を寄越してきたのだった。
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