【完結】初めて会うイケメンの旦那が甘やかしてくるんだが。ちょっと待ってこれどんな状況?

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
222 / 236
続編的番外編

x-23・滞在先と母について

しおりを挟む

 街では宿を取っておいた。
 一応ここでの滞在は二週間を予定しているが、場合によっては延びる可能性がある。
 それは宿にも告げておいた。
 元よりそれほど忙しい地域でもなく、ある程度、部屋は空けられるという。
 なんでも、その宿を含めこの街全体が母の管理下にあり、宿を利用するのも半分以上、母と関係がある者ばかりなのだそうだ。

「おかげでどんなに暇でも潰れたりはしないんですよ。最低限は常に維持するようにと申し付けられていますから」

 にこにこと宿の亭主にそう教えられ、俺はなんとも言えない気持ちになった。
 なお、俺が母の息子であることなどは、容姿を見ればわかることなので隠しようがなく、宿側も理解した上で対応してくれていた。

の方のご子息がお泊りになるのは珍しいことではありますね。その上、お子様までお連れになるだなんて」

 余程、俺の兄弟たちは、この街に寄りつかないらしい。
 俺自身、今回のようなことがなければ来ようと思わなかっただろうから気持ちはわかる。
 誰が、常に性行為に耽り、どれほどまともな会話であっても、行為の最中にせねばならないような、それも自分とほとんど同じ顔をした親に会いたいと思うものか。
 親のそのような行為など、目にしたくないと思うのは全く何も不自然なことだとは思わない。
 それもあって、あの母に積極的に会おうとする兄妹など、おそらく珍しいだろうから。
 今回も俺は母には会う予定がなかった。
 ラルが、

「せめて挨拶ぐらい、」

 なんて言い出したが、止めておいたぐらいである。
 それぐらいには母は、会わない方がいい人物だった。
 近くに広々とした母の離宮があるのに、わざわざ宿を取ったのも同じ理由だ。
 特に幼い子供を連れて行くような場所ではない。
 部屋がないだとか歓迎されないだとかそういった理由ではなく、単純に居た堪れなくなるだろうからというだけの話だ。
 同時に、別におそらく歓迎もされない。拒絶もなく、いっそ不思議そうにさえされる可能性があった。
 母とはそういう人なのである。
 そんな母の元へ、月に一度は様子を見に行っているという伯父には頭が下がる思いがするほど。
 反して父の住む屋敷は俺たち全員を泊められるほどには広くなく、俺たちは父の元へ、宿から通う予定となっていた。
 ディルにも一応、同じ宿、もちろん別の部屋を用意する。
 他の護衛や侍女たちより少し広めの部屋にしておいたのは、一応、大公からの紹介・・ということで、多少なり気を使った結果だった。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

繋がれた絆はどこまでも

mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。 そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。 ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。 当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。 それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。 次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。 そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。 その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。 それを見たライトは、ある決意をし……?

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

処理中です...