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続編的番外編
x-20・結果
しおりを挟むさて、馬車の中であんなことをして、バレないわけがないのである。
なにせ思いっきり普通に体を交わし合ったのだ。
たとえそれが1回で、馬車内の淫靡な気配や匂い、あるいはお互いの痕跡などを、可能な限り魔術などを駆使してわからなくしたとして、それでもバレないはずがない。
とは言えもちろん、そんなものを違えず悟ったのはオーシュぐらいだったけど。
結界を張ってあったし、ディーウィや子供たちがいたのは別の馬車の中。
いくら並走しているとはいえ、隣の馬車の中で何が行われているのかを、違う馬車の中から悟るのは難しい。
勿論、それらを踏まえた上で行為に至ったのだけれども。
ちなみにオーシュにはこれは知られているな、と俺が思ったのは、ラルのエスコートで馬車から降りた俺とラルを見るオーシュの目が、あからさまに呆れかえっていたからである。
オーシュは何も口にはしなかったが、まず間違いなく、感づいていたことだろう。
例えば何をどこまで、とはわからずとも、少なくとも馬車の中で多少なり、不健全な行為をしていたのだろうな、ということぐらいには。
と、言うか、おそらく、結界を張ってあったことを悟っていたのだろうから、結界を張らなければならないようなことをしていたのだろうな、とは思われていたと思うのだ。
だが、重要なのはそれではなく。
どうやらオーシュだけではなく、ディルも、何かを感づいていたようなのだった。
(うーん、どうしたものかなぁ……)
あからさまに険を増した、いっそ睨み付けてでもいるかのような視線をディルから受けながら、俺は少しだけ途方に暮れた。
が、かと言って何かが出来るわけでもない。
(まぁ、考えても仕方がないんだが……)
それでも、なんだかややこしそうなことになりそうな気もして。
オーシュの視線は、それも踏まえての呆れであるようでもあった。
なら、ああいうことをしなければよかったのか、自問して、そういう問題でもないなと思い直す。
我ながら浅ましかったとは思う、思うけれど、でも。
ちらとラルを見た。
11年前、初めて会った時から変わらない、惚れ惚れするようなイケメンは、俺の視線を受けにこと笑う。
多分、ディルに思いっきり怒っている、それがわかるような笑みで。
(うーん……)
馬車の中で、わざわざラルに誘いをかけたのは、あからさまに機嫌を損ねているラルの機嫌を取るという意味合いがなくもなかった。
ただし、理由の大部分は、俺自身がラルとたとえ少しでも触れ合いたかったかだなのだが。
だって二人きりだったし。
そうしたら触れ合いたく思うことぐらい、夫婦なのだから何もおかしくはないはずだ。
馬車の中でああいう行為に至った。
褒められたことではなかったかもしれないけれど、何も後悔なんてしていないし、悪いことをしたとも思っていない。
だって夫婦なのだ。そして二人きりだった。なら、構わないだろう。呆れられこそすれ、誰にも咎められるようなことじゃない。でも。
その結果が、ディルからのこの敵意の増した視線。
勿論、それをラルが察しないわけもなく、そして当たり前にラルの機嫌が悪くなっていくのである。
ああ。
(うーん)
なんだかもう、ディルがいる限り、どうにもならないようなことな気がした。
そして果たしてそれは、全く何も間違っていないことなのだった。
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