【完結】初めて会うイケメンの旦那が甘やかしてくるんだが。ちょっと待ってこれどんな状況?

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
217 / 236
続編的番外編

*x-18・二人きりの馬車にて⑤

しおりを挟む

 ラルの手が俺の体を弄る。
 ラルに触れられるとそれだけで、どこに触られたって気持ちよくて。

「ああ、フィリス、フィリス、可愛い、素敵だ……フィリスっ……んんっ、」

 くちづけの合間、感極まったように囁かれる声に笑った。
 あまりにいつも通り過ぎて。
 でもいつもよりこんな風、我を忘れたようになるのがちょっと早いかな?
 ラルも興奮しているということなのだろう。
 馬車が揺れる。
 だがそもそも、公爵家うちで用意した馬車であるし、結界もかけてある。
 そして道も、慣らされ切った大きな街道。
 揺れは、それほど激しくはなかった。
 むしろ衝撃を吸収できるような結界の所為もあって、ほとんど揺れていないように感じられるほど。
 内からも外からも、両方の衝撃を吸収できる結界だからだ。

(馬車の中ってことを忘れそうだな)

 思ったけれど、狭いことに変わりはない。
 四人乗りの車内。
 座席には尻がかろうじてかかるかかからないかぐらいにずり下がってしまっていて、落ち切って、大きく開かされた足の間にはラル。
 ついでに片方の足は、ラルのかたの上に乗せられてさえいる。
 ラルは多分、床に片膝を着いていて、片手で俺を抱きしめるよう腕を俺の体に絡め、手の先は尻を揉んでいて、もう片方の手は俺の後ろ頭を掴んで、ぐしゃぐしゃと細い髪の毛をかき乱していた。
 少し乱暴になりがちな仕草にも、男らしさを感じてきゅんとしてしまう。
 かっこいい、そう思うのだ。
 俺の服はいつの間にかすっかり開けられて、辛うじてそでを通しているだけといったような状態、スラックスは脱げて下がり、片方の足首に引っかかっていた。
 すっかり皺だらけになってしまいそうだが、まぁ、状態回復だとかの魔術を使えばおそらくすぐに戻せるだろう。
 ラルの服も、俺が掴んだりなんだりしているから皺だらけで。
 なんだかお互い、切羽詰まっているといった雰囲気で、体を寄せて、くちづけを交わし合っていた。
 ラルの指が、俺の尻の間を探る。
 ひとりでには濡れたりしないその場所は、ここ数日ラルを受け入れていない所為ですっかり閉じ切っている。
 ここで更に先も、と思うなら、このままでは当然難しいだろう、触られて初めて思い至って、名残惜しくもラルとのくちづけを解くべく、ラルの髪の毛を引っ張った。

「んっ、フィリス?」

 頭皮に感じた痛みに、流石に気付かないわけがなかったラルが、怪訝そうに、だけど逆らわず俺の望むがまま、俺を口付けから解放する。
 はぁはぁと荒く、上がり切った息をほんの少しだけ整えた。そうしてようやく口を開く。

「はぁ、はぁ、ん、……ぁ、ま、って……はぁ……このままだと、流石に、だから……」

 少しだけ、集中する時間が欲しかった。
 俺は別に魔法だとか魔術だとかは苦手ではないけれど、ことこう言う場面でよく使用する、身体操作を駆使して、その場所に潤いを足す魔術は、何度やってもなかなか慣れず、少しだけ集中しなければできないのだ。
 多分、その場所は濡れたりしないという意識が俺の中にあるままだからなのだと思う。実は毒物を他の物に変えたりだとか、治癒魔術を行使したりするのよりも俺にとってはこれの方が断然難しい。
 少なくとも、くちづけと快楽に酔わされていては上手くできず。

「え? あ、ああ……」

 ラルはようやく思い至ったようで、少しだけ気まずそうな顔を見せた。
 変わらないなぁとなんだか微笑ましく思った。
 ラルはいつだって何年経っても、俺に触れる、それだけで、頭の中がいっぱいになってしまうようなのだ。
 こういう時は何もかもが上手く考えられなくなるとも言っていた。
 色々と上手く気遣えなくなるのだと。
 実は俺はそんなラルが、それぐらい俺に夢中になってくれている証のように思えて、ほんの少し嬉しかったりする。
 それはそれとして。
 毎日のように体を繋げているなら、そもそもそこはそこまで閉じたりしないので、綻びやすく、そこまで集中して、だとかは要らないのだけれど、なにぶん数日ぶりである。
 少しばかり意識して魔力を練る。
 そうしたらそれほど難しくなんてない。

「んっ……」

 途端じわ、湿ってくるような感触が少しだけ気持ち悪い、でも。

「ぁあ……」

 ぐちゅん、感極まったような嘆息と共に、ラルの指が容赦なく俺の腹の中へと沈み込んできた。

「ぁっ! ん、んんっ……っ、ぅっ、」

 勿論、ラルの手は乱暴という風ではなくて、でもかと言って余裕があるというわけでもなくて。
 そもそも、俺の太腿の辺りに押し付けられているラルの股間は、当たり前のようにすっかり熱く硬い。

「ぁっ、ぁっ、んんっ、んぅっ、ぁっ、」

 ぐちゅ、ぐちゅ、ちゅくん。
 お腹の中を刺激されると、どうしても小さくとも声が出てしまう。
 そんな俺の首筋に口付けながらラルが、不意に小さく肩を揺らした。
 笑っている。

「ラル?」

 名を呼ぶと、ふと顔を上げて。

「ああ、ごめんね。今更なんだけど、思い出して」

 そう告げてくるラルの視線は柔らかいから、そこまで悪い気はしなかった。
 思い出す?

「何、を……?」
「いや、僕達の初めてを」

 初めて会った直後の、あの馬車でのことを。
 本当に今更だと、俺は少しだけ口を尖らせた。
 そもそもそう言って、たった今、誘いかけていたのだから、てっきりラルも同じように思い出しているとばかり思っていた。

「ふふ、ごめんね、でも君が誘ってくれたから、もうそれだけで頭がいっぱいになってしまって……過去のことなんてそんなもの、思考がそっちまで巡らなかったんだよ」

 だって君はいつだって、が一番魅力的だから。今、目の前にいる君、それだけで俺は感極まって、他なんて考えられなくなるんだ。
 だけどそんな風、情熱的に囁かれたら、じゃあ、まぁいいかと思ってしまう。
 俺も随分と絆されたなぁなんて思いながら、俺は、小さく溜め息を吐いて、改めてラルを引き寄せた。

「……わかった。じゃあ、もういいから、なぁ、ラル……早く……」

 続きを。
 そう、ねだると同時に、ぐりゅん、ひときわ深く、腹の中を指で探られ、俺はビクンっと体を強張らせた。
 高く、上がりそうになった喘ぎは、すかさず塞がれたラルの唇の中へと吸い込まれていく。

「んっ、んんっ! んっ、!」

 口の中と腹の中と。両方を刺激されたらもうそれだけで堪らなくて、身をくねらせて悶える俺を、ラルは今度こそ手を緩めず、そして慌ただしく。情熱的に暴いていったのだった。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

繋がれた絆はどこまでも

mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。 そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。 ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。 当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。 それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。 次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。 そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。 その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。 それを見たライトは、ある決意をし……?

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

処理中です...