216 / 236
続編的番外編
*x-17・二人きりの馬車にて④
しおりを挟むくちづけは今朝ぶりだ。
流石にその先までとなると、昨夜は出来なかったけれど、くちづけぐらいは交わしている。
だって、気持ちいい。
ラル曰く、
『堪えられない』
んだそうだ。俺に口付けずにはいられないんだって。
その先もほんとは毎日毎晩でもしたいし、ずっと離したくないと何度も言われた。
俺もラルと肌を合わせるのは全く嫌いではないから、時間やタイミング、状況が許す限り応じるようにしている。
そんな風にしてラルと初めて肌を合わせたのは馬車の中。
今と同じ、二人っきりの馬車の中で、だったのだ。
勿論、その日の夜、宿で初夜をやり直したけれど、二人の初めてが馬車の中だったことは間違いない。
思い出して興奮した。
あの時はどうしたんだったっけか。
我慢できないと言われて頷いた。
それで、何がどうなったんだったか。
なにぶん10年以上前の話。
詳細まで覚えているわけもなく、俺は途中で思い出すのを放棄した。
(まぁ、いいか。今は今で楽しめば)
いつも通り、ラルのくちづけは激しく、頭がぼうっと惚けてくる。
気持ちよくて堪らない。
「ぁっ、ん、ん、ぁん、んぅっ、ん、ら、るぅっ……! んっ!」
俺の方からも、ラルの頭を引き寄せて、ねだるようにくちづけに夢中になった。
もっと、もっと、もっと、気持ちいい、もっと!
俺がそうして、くちづけだけに夢中になっている間にも、器用なラルは俺の衣服と自分の衣服を手際よくくつろげていっていて、気付いた時には俺は下半身には何も身に着けておらず、遮るもののない肌を、ラルの腰へと絡みつけていた。
その足に、ラルの手が触れている。
肌をなぞり上げられてぞくぞくした。
掴まれたかと思うと、ぐいと押し広げられ、もともと俺はラルを挟むような体勢でいたのだけれど、硬くなった腰を、もっと更にと押し付けられる。
「んんっ!」
下肢の間、敏感な部分が刺激され、俺は思わず、びくんっ、体を震わせていた。
狭い馬車の中だ。
周りには護衛がいて、子供たちの乗った馬車も並走している。
次の鉄道へ向かうまでの、そんなに長くもない時間。
なのに俺とラルはこんなことをしている。
その事実に堪らなく興奮した。
悪いことをしている、そんな気分になって。
否、夫婦なので、この行為は何も悪くなんてない。
ただ、走る馬車の中というのか、あまりに日常とかけ離れていて、興奮せずにはいられないのだ。
「んっ、んっ、んぁ、ぁんっ、ぁあんっ! んあっ! んっ!」
俺の口からは、感じ入ったくぐもった声が、ひっきりなしに漏れていた。
7
お気に入りに追加
1,829
あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

狂わせたのは君なのに
白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり

そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる