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続編的番外編
x-12・鉄道旅⑤
しおりを挟む勿論、そんなことは適うはずがない。
否、おそらくラルもディーウィも止めはしないだろうし、むしろ俺はいなくてもいい、いっそディルと引き離したままでいたいとも思っているかもしれない。
しかしディルがリリフェステの大公の異母兄であり、この旅行の本来の目的や俺の立場、あるいは旅行中という、どうしても接しなければならない状況を考えると、そんなことは当たり前に不可能だった。
ならここで俺が一時的に席を外したところで、ディルからの辺りはきつくなる一方なのだろう。とは言え、このまま此処にいても何も変わらないかもしれないが。
ラルがにこと笑う。
ディルに向かって。全く笑っていない笑みで。
しかし、そんなラルに笑顔を向けられたディルはなぜかさっと頬を赤く染めて、ふいと僅か視線を逸らした。
(え?)
それはいったいどういう反応なのか。
確かにラルはかっこいい。かっこいいが、しかし。
今の笑顔はただ恐ろしいだけだったと思うのだが。もしやこの男、おかしな趣味でも持っているのだろうか。
恐ろしい雰囲気を突きつけられて悦んでしまう趣味?
わからないし、正直全く考えたくもなかった。
ラルも気付いたのだろう、途端、顔を思いっきり顰めて嫌そうにしている。
そりゃそういう顔にもなるだろうと物凄く思った。
「……さっきの話の続きだけどね。まったく違うし、君の言っていることは根底からしておかしいんだよ。僕が言いたかったのは、フィリスを尊重しろってことだ。それがどうしてフィリスが管理するのどうのという話になるんだ。フィリスの出自を思えば君が取っているような態度が良くないことぐらい、それこそ子供達でもわかるようなことじゃないか。それを僕はわざわざ口にして指摘してあげたんだよ」
ついでにとても不快だとね。
しかしラルがこんな言い方をするのも珍しい。
ラルはどうやら自分の感情だとか考えだとかを、一切何も隠さないで行くことにしたらしかった。
(おいおい、一応、大公の異母兄だろ、いいのかよ)
大人の対応というものが必要なのではないか、一瞬思ったが、とは言えそもそも、あれだけ無視したりしていたのだから今更なのだろうとも思い直す。
ラルの言葉には思いっきり棘しかない。
ディルが流石にむっと鼻白んだのがわかった。
「出自だどーだって、そのビショーネンがそんなに尊重しなきゃいけない存在に思えないから、なら責任でも取ってんのかって俺は言ってんだよ」
要はつまりどこまでも、俺が気に食わないというだけの話なのだろう。
ディルのまったく悪びれない言葉に、またラルの怒りが増したようだった。
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