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続編的番外編
x-10・鉄道旅③
しおりを挟むいや、どうしても何もない。
ただ単に不快だったということなのだろう。
この男もこの男である。
なぜまたここでそんな発言をするのか。
いい加減、理解して欲しい。
それがよくはないということを。
俺のことが気に入らないのだろうなというのはわかる。
ビショーネンだとかお嬢ちゃんだとか、初めからまるで俺を馬鹿にするかのような発言ばかり繰り返していて、それで俺を大切に思っているラルやオーシュ、ディーウィがこの男にいい印象を抱くわけがない。
否、はっきりきっぱり怒りを抱いている。
俺は正直これぐらいの悪意に晒されたところでどうとも思わないので、いったいこの男は何がしたいのだろうかと首を傾げるばかりなのだけれど。
(うーん、これは……俺が応えなきゃいけない、の、か……?)
ビショーネンなどと、名指し? されているし。
ラルたちは相手にするつもりがないようだし。
いくら無礼で、普段は冒険者をしているのだと言っても、ディルがここ、リリフェステ公国大公の庶子とは異母兄で、他ならぬ大公の推薦により、この旅に同行することとなったのも間違いない話。
無下にし続けていいとも思えなかった。
だから、
「いや、こちらの対応以前に、」
「そもそも、そう言った対応を取られるだけの言動を自分がしたのだという自覚はないのかな?」
俺が応えようと口を開いた矢先、その続きを奪うかのように、先程までまるで無反応でいたのは何だったのか、ラルがぴしゃと言い放った。
ちなみに声音はあくまでも柔らかい。
その柔らかさがやはりなんだか恐ろしかった。
「へぇ? 俺はそこのビショーネンに話しかけたつもりなんだけどな?」
ラルが構ってくれて嬉しいのか何なのか。応えたディルの声がどうしてか弾んでいる。
全く何も理解できないが、ひとまず、今自分は口を開かない方がいいのだろうなということだけは理解できた。
少なくとも、ラルは俺にディルと話して欲しくないのだろうなと。
ならば俺だって別に無理にディルと話したいわけではない。
「そもそも、対応如何だとかをどうしてフィリスに言うの? そこからしてどうかと思うのだけれど」
「あんたが言ったんだろ? 大公閣下。この中で一番尊重されるべきなのはそいつだって。つまりこの集団のトップはそこのビショーネンってこった。ならそのビショーネンには、この集団全部を管理する責任がある。違うか?」
どうやら初めの自己紹介時、ラルが俺の出自がどうとか言ったことを上げ連なっての発言であったらしい。
と、言うかあの時も、俺が仕切るのが気に食わないという言い方だったからラルがああいったに過ぎなかったのだけれど。
それがどうして俺が管理するだとかどうとかいう話になるのだろうか。
と、言うかこれはいわゆる家族旅行だ。管理も何もない。
隣でラルの気配がどんどん尖っていくのがわかって、それがただひたすらに恐ろしかった。
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