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続編的番外編
x-8・鉄道旅①
しおりを挟む「へぇ、鉄道を利用するのか」
大公邸を辞す俺たちに、そのまま当たり前の顔で着いてきたディルは、駅舎に着くなり、何だかもの言いたげな顔をした。
「そちらの方が早いからね」
先程からのディルの態度に、思うことが勿論あるのだろうラルは、どうやら俺とディルを話させないことにしたらしく、さりげなく俺を隠しながら物凄く余所行きの声でそう答えた。
にこっと柔らかい微笑み付きだ。
(こえぇ~……)
その笑みはいっそ内心でそんな風、怯えてしまいそうなほどだったが、対するディルは面白そうに片眉を上げて。
「ふぅん?」
だなんて、小さく笑っている。
なんとなく、舌なめずりせんばかりの雰囲気を感じて、俺はぶるっと背筋が震える感じがした。
えっと、いや、なんだろうか。
なんとなく、ではあるのだけれど、でも。
なんとなく、ラルとディルを話させたくない、そう感じてしまう。
ディルの態度は、俺に対するのよりもよほど友好的に見えた。
少なくとも、開口一番のもの言いたげな雰囲気はすっかり鳴りを潜めて、純粋に面白そうだと思っていそうな声音に聞こえる。
なのにそれがなんとなく、もやもやとしたものを俺に連れてきたのである。
俺の顔が曇ったのがわかったのだろうラルが、心配そうな顔をして、そうしたら俺はなんとなく視線を伏せてしまった。
ラルがディルから視線を外し、くるりともう駅に待機した状態となっている、乗る予定の列車の方へと向き直る。
俺を包み込むように抱き寄せて。
「さっそく乗ろうか」
と、周囲にいる者達を促した。
さっと、ディーウィが一歩先に立ち、オーシュが俺達とディルの間に入った。
使用人たちも合わせて移動を始めた直後、後ろから、
「ふんっ」
なんとなく不機嫌そうに鼻を鳴らすディルに気付いたけれど、俺は勿論振り返らなかったし、ラルもやっぱり全くそちらを見ないままだった。
と、言うかそもそも間違いなく、ディルは俺たち全員によい印象を持たれていないのである。
ある意味当然のことだろう。
同行を許して、鉄道にも共に乗る許可を出しているだけ良いと思って欲しい。
おかげでチケットだって、急遽一枚、ディルの分を余分に買うことになったのだから。
買ったのは当然、俺たちの連れている使用人の一人である。
俺のすぐ傍には侍女に抱えられたナティ。
それと実は今回は、ディーウィとオーシュの間に生まれた、ナティより二つ年上の男の子を連れてきていて。ディーウィはその子を抱き上げていた。
今回の人員の中に幼子が二人、という所も、もしかしたらディルには思う所があるのかもしれないな、なんて考えながら乗り込んだ列車は、当たり前にコンパートメントをいくつか貸し切っていて。
ディルは仕方なしに同じコンパートメントに乗り込むことになってしまっているのだった。
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