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192・後始末①
しおりを挟む子爵が来た頃から後、数週間。オーシュはひどく忙しそうにしていた。
ちなみにラルは子爵の件を知って、案の定、静かににこにこと怒り狂って、
「よくわかったよ。彼については優先的に対処しよう。勿論、あの侍従に関しても僕の方で確認しておくから、何も心配しなくていいからね、フィリス」
と、全く笑っていない目で言っていた。
俺はおとなしく抗わず、
「あ、ああ、頼んだ……」
などという外なく、あの侍従のことも、それ以降一度も目にしていない。
ラルがいったい誰に対して何をどこまでどうしたのか。知らない方がいいだろうと目を逸らした。別に知りたくもなかったので。
また、オーシュが忙しくなったのは、
「おい、フィリス、どうにかなんねぇのかよ、襲撃者の山だぞ、山。俺にだって限界がある!」
とのこと。
つまり、それより前から不定期的に襲いかかってきていた誰の息がかかっているのだかわからない者たちが爆発的に増えたということで。理由など明らかだったことだろう。おそらく今まではコリデュアの王妃、及び王妃に近しい貴族からのみ差し向けられていた後ろ暗い者達が、他の連中からも寄越されるようになったようだった。
予想の範囲内である。
周辺に影響を受けた8人、否、及び同じような者達がすごすごと泣き寝入るはずもなく、理由と思われる俺のことを狙ってき始めたのだろう。
当然、それらを撃退するのは護衛であるオーシュの仕事だ。
勿論、それは彼一人で賄っているわけではないのだけれど、俺に関しては護衛というか警護全般をオーシュが請け負っている所為で、自然、彼は目の回るような忙しさとなり、気が抜けないのもあって、妙に苛立った様子で俺にしばしば限界を訴えてくる有様なのだった。
だからと言って手を抜いたり、匙を投げたりするつもりなど初めからなく、ただの愚痴のようなものだったのだけれど、俺はただ肩を竦めて。
「適当に取りこぼしてくれてもいいよ、こっちで対処するし」
と言ってみては、
「バカかっ! お前、俺のことバカにしてんのかよ、何のための護衛だっ!」
「そうだよ、フィリス、そんなこと許可できるはずがないだろう? 手勢はこちらでも追加しておくから、それでいいかな、オーシュくん」
「ああ、こっちでも調整しておく」
などと叱られて、何故か代わりにラルがオーシュを宥めたりなどしたりしていた。
何故叱られたのか解せなかったか、ディーウィも溜め息を吐くばかり。
そうして更に数週間も経つ頃には、徐々に状況も落ち着きを見せ始め、ついには襲撃者がほとんどいなくなる頃には、実に数ヶ月が経過していた。
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