【完結】初めて会うイケメンの旦那が甘やかしてくるんだが。ちょっと待ってこれどんな状況?

愛早さくら

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191・無能の行く末⑪

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「悪かったよ。でも、ま、一回ぐらいはな」

 わざわざ呼び立ててもらったし。
 視界の端で、一応はと、この場に控えさせていた、そもそも俺を呼びに来た侍従が青くなってガタガタと震えていた。
 それを視線で示すと、ディーウィは心得ているとばかり小さく頷いていたけれど、敢えて何も言葉にすることはない。

「あれ今後どうなるんだろうな」

 今日訪れた子爵は、何も別段、罪に問われただとかいうわけではなかった。
 何か犯罪を起こしたというわけでもない。……――少なくとも、今回のことに関しては。
 だが、それがなんだというのだろうか。
 今後、彼はおそらく、領地の経営が何もかもうまくいかず、いっそ収監された方がましだというような目にさえ合うかもしれないとそう思った。
 俺は別に彼を、そんな風に貶めたかったわけではない。
 とはいえ、結局すべては彼自身の言葉が招いたこと。それが理解できなかったのは、彼自身の問題で、俺はそれに対して何を思うこともなく、彼が今後どのような目に会おうとも、馬鹿だなぁと思うだけ。それ以上の興味もない。

「まぁ、でも……ラルに知らせるよりまし、か……?」

 今日のことに関しても、対峙したのが俺なのは、男にとって良かったのか何なのか。少なくともラルなら、あのような言葉だけで済んだかどうか。
 俺はすでに、意外にも俺の伴侶が少々、激しやすい所がありそれなりに手段を択ばない人物であることを知っていて。
 もっとも、結局、報告は届いてしまうのだろうから、遅かれ早かれ結末は同じだとは思う。
 つまり、あの男が今以上の苦境に立たされるのだろうことは、間違いないということだった。

「いやぁ、でもなぁ……」

 今日のことに関しては、あの子爵よりむしろ。
 思うのは今もガタガタと震えるばかりの見慣れない侍従。
 より、ラルの怒りが向くのがどこなのかなど、明らか過ぎるというものだろう。
 だけど俺は彼のことだって取り立てて庇いだてしようなんて思えなくて。俺みたいなののことを薄情って言うんだろうなとは思っても、興味が持てないのだから仕方がない。

「フィリス様、いつまでこちらにいらっしゃるのですか」

 ぼんやり思考を巡らせていたら、流石にディーウィに促され、

「ああ、うん、戻ろうか」

 素直に頷き、室内に戻った。
 その後、俺があの子爵のこれからの話など聞くことはなかったけれど、そんなもの、聞くまでもないことだったろうと思う。
 他の8人も似たようなもの。
 少し後、十数個・・・の貴族家が爵位や領地を返上したりなどしたらしい上、リヒディル公爵領が幾つか・・・増えたとのことなのだが、結局それら全てにも俺はついぞ一切の興味をも持つことがないままなのだった。
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