【完結】初めて会うイケメンの旦那が甘やかしてくるんだが。ちょっと待ってこれどんな状況?

愛早さくら

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184・無能の行く末④

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 とはいえ、ナウラティスの結界の基準と自身の性格がよくはないだろうことはしかし今は関係がない。
 宣言通り、程なくして呼びに来たオーシュについて裏庭に行くと、裏門と屋敷のちょうど中間ぐらい、妙に見晴らしのいい場所に、子爵がぽつんと立っていた。
 この10日ほどでいったい何があったのか、それなりによかった恰幅が、心なしか萎れて見える。
 表情も見るからに憔悴しきっていて。
 あのお茶会の時の、居丈高な様子など微塵もない。
 一気に老け込んだようにも見えた。
 ケレシーナル子爵。壮年期真っただ中といった見た目で、決して若くはない。
 だが、そこまで年配というわけでもなく、言うなればただのおじさん・・・・だ。
 それなりの年数、生きてきた自負があるのだろう、見た目が更けてきているということは、つまり魔力量が衰えてきているということなのだが、そんなことは全く気にせず、妙に偉そうな態度が目立つ人物だった。
 印象も勿論よくはなく、流石は無能とされるだけはあると思ったものである。
 取り分け、粘ついた好色そうな視線が気持ち悪かったのをよく覚えている。
 だが、今は、流石に様子が違っていて。
 さて、この子爵の背景はどんな様子だったろうかともう少しだけ記憶を辿っていくと、そういえばケレシーナル子爵領には鉱山があったのだったと思い至った。
 鉱山からは確か、良質なサファイアが産出されていたはずだ。
 それを元とした加工と商会を通した流通でそれなりの資産を蓄えていると、資料には記されていたと記憶している。
 つまり爵位の割には羽振りが良く、だからこそ随分と色々なことをしでかしているのだとか。
 もっとも付随して評判は全く良くはないとも記載されていて、実際に本人を目にすると、なるほどと納得したものだった。
 さて、この短期間で影響があったのだとすれば、加工か、流通か。むしろ両方かもしれない、そうあたりをつけておく。
 多分それらで、全く思いもよらない不利益を被ったのだろうと。
 近づいていくと、気付いた子爵が、俺の姿を認めたと同時、

「……っ! 公爵夫人っ!」

 ばっとその場に這いつくばった。
 どうやら文句を言いに来たのではなく、とりなしを頼みに来た方だったのだろう。
 なりふり構わず地面に這いつくばって、頭を土に擦り付けている。

「も、申し訳なかったっ……! この通りだっ!」

 そんな風に平身低頭いきなり謝られたところで、俺ははぁと深く溜め息を吐くことしかできなかった。
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