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183・無能の行く末③
しおりを挟むそんなことも考えながら、俺は思考を巡らせた。
本当は屋敷内どころか、敷地内にさえ入れるのは好ましくないのだ。
「ふぅん。……オーシュ」
「あー……裏庭か? その一角なら、まだ……いや、ちょっと待てよ。俺が行ってくる。お前は自分に結界張ってろ。んで、呼びに来るからそれまでこの部屋から出るなよ。おい、お前!」
「はいっ!」
「裏門にいるんだったな?」
「はい、おそらくはまだいらっしゃるかと……」
「わかった。とりあえず俺と一緒にこい。場所を確認してから呼びにいけ」
「わ、わかりましたっ!」
場所の選定に迷っていっそのこととオーシュに訊ねると、彼は率先して自分から請け負ってくれて、かつ、迷いながらきぱとそんなことを決め、
「んじゃ、いってくるわ」
と、年若い侍従を引き連れて部屋を後にした。
警備上の問題が含まれて来るので、いずれにせよオーシュとは相談する必要があったのである。
出ていく背中を見送って、ちらとディーウィに目を向けると、呆れ果てた顔をしている。
やはり俺が彼の子爵と会うことなど、賛同しかねると考えているのだろう。
勿論、それが心配ゆえだということぐらい、今の俺にはわかっていて。
「そんな心配しなくても……」
思わず口に出すと、ディーウィは緩く頭を横に振った。
「そういう問題じゃないんですよ。勿論、僕だって貴方に早々何かあるだなんて思っていません。でも、問題の人物の一人である子爵がわざわざあなたに会わせろと訪ねてきているなんて、ろくな要件じゃないことぐらい明らかでしょうが」
ディーウィの言葉に俺は首肯する。
「だろうな。大方、早くも状況が変わったことに気付いて文句の一つでも言いに来たのか、それとも」
懇願していた、というぐらいだから、そうではなく、取り成しでも求めに来たのかもしれない。
自らの行いを反省でもしたのか。いや、こんなにすぐに反省できるなら無能のレッテルなど貼られるはずがないだろう。ならばいったいどんな用事なのか。
想像して、やはり暇つぶしにはなりそうだなと思う俺は当然褒められた思考回路などしていないことだろう。自覚があった。
そもそも俺は、自分がなぜナウラティスの結界に弾かれないのかさえ分からない。
確かに、敵意も害意も誰かに持ったことなどない。だがそれは単純に興味がないだけで、誰がどうなろうとどうでもいいからだった。
勿論、興味の持てない相手が最終的にどうなろうと、結局はやはり気にしない。
つまり積極的に誰かがどうにかなればいいと思いはしなくても、結果的に誰かがどうにかなることがわかっていても、見て向ぬ振りが出来るということだ。
その違いは、俺にはよくわからなかった。
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