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175・茶会の後③
しおりを挟むそんな風にして終わった茶会で、一番俺が思ったことがある。つまり。
ラルを同席させなくてよかった。
そんなことだ。
いや、本当に。彼ら8人とラルを同席させていたならばどうなっていたことか。
ディーウィはともかく、オーシュでもまずそうだ。
もっとも、侍女や侍従が何人も傍に控えていたし、今日のことは嘘偽りなく周囲に周知してほしい旨、カティリュナ辺境伯をはじめとした3人には予め伝えておいたので、遅かれ早かれラルも、結局は耳にしてしまうのだろうけれども、それでも、その場にいるといないでは断然違う。
何事もなくと言ってしまうには、疲労を感じざるを得ない茶会であったことは確かだった。
茶会というだけあり、昼間の開催であったので、夕飯よりもよほど早い時間での散会となり、俺は終わるとすぐに、いつもいるサンルームのある居間のような一室に引き込んだ。
あまりにもこの部屋にばかりいる所為か、そこはすでに自室の一つのような扱いとなっているのだが、ラルにもラサスにも咎められないので構わないのだろう。
「あー、疲れたー」
思わずそうこぼしながらソファに身を投げ出す俺の前に、ディーウィが改めて茶を提供してくれる。
「本当にお疲れさまでしたね。随分と貴族らしい振る舞いが出来ていらして、私は感心しましたよ」
「あれ? いたっけ」
「少し離れたところに控えていました。オーシュもいましたから、会話は聞いていたはずですよ」
あの場では見かけなかったにもかかわらず、見ていたかのようなディーウィの言葉に首を傾げると、実際に少し離れたところから見ていたのだと告げられる。ついでにオーシュにまで会話が筒抜けだったとは。
つと流されたディーウィの視線の先には、思いっきり眉間にしわを寄せたオーシュの姿。
確かに、オーシュからしてみれば、あのような場に俺がいること自体、不快に思わないはずがないだろうと俺はひょいと肩を竦めた。
「お前、よくあんなの平気だったな。あんな連中、よっぽど途中でぶちのめしてやろうかと思ったぞ」
案の定、怒りも露わな低い声で吐き捨てられて俺は苦く笑うしかない。
「あんなの。そうやって怒るだけ無駄だよ。話通じないんだから。勝手に話させて放置しとくのが一番」
今日そうしなかったのは、ただ単にああして彼らの言葉を逐一否定していくことが目的の一つであったからだった。
あるいは彼ら自身に、あんなことを繰り返した先の可能性を伝えただけと言ってもいい。
なにせ伝えたところで理解しないのだから、伝えもせずに結果だけ突き付けたら余計に彼らは何もわからないままだろうと、そう、たとえほんの僅かであれ、彼らを気遣った結果だった。
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