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174・茶会の後②
しおりを挟む「それはそれは……過剰なご親切に頭が下がる思いです。ですが、ご安心ください。私が寂しくなることなど、今後あり得るはずがございませんし、もしそのような際にもお手を煩わせたりなど致しませんよ」
余計なお世話だ、お前には用などない、という意味を大変に柔らかい言い回しで伝えると、やはり彼も気分を害したような顔で帰って行って、他でも同じようなやり取りばかりが続くような有り様だった。
俺に近い席次だった順にそれぞれ8人が帰った後、残ったのは3人。つまりカティリュナ辺境伯と、彼女と懇意で見る限り善良そうなワスディエ伯爵令嬢とエルシェマン子爵夫人だ。
俺は三人、否、二人には何とも申し訳なく、頭を下げずにはいられなかった。
「おそらく、ご不快な思いを随分とさせてしまったのではないかと思います。しかし参加いただけて大変助かりました」
眉を下げた俺に、二人は寛容にも微笑んで。
「いいえ、私達の方こそ、貴重な体験を致しました。何より、今日のことはある程度わかっていて参加いたしましたから、どうぞお気になさらないでください。とは言え、人とはああも頑なになれるものなのだと恐ろしくは思いましたわねぇ……」
ほとり、困ったように溜め息を吐くエルシェマン子爵夫人に俺は頷いて、
「あの方たちは余程に特殊だと思いますよ。とは言え私が不慣れなことは彼ら彼女らに指摘されるまでもなく、本当のことではあるのですが」
そう、笑みを苦くする。
「あら、とんでもない! ご立派でしたわ。屹然とした態度をお崩しになられなくて……宜しかったのではないかしら。何より、リヒディル公爵夫人のおっしゃることこそ、どれもこれもおかしくはございませんでしたし……」
「ああ、私のことはどうぞ名前で。フィリスと」
「でしたら、お言葉に甘えてフィリス様。こうして他でもないフィリス様ご本人と、言葉が交わせていることの方が、私達にとっては幸運ですわ」
そんな風に言ってくれたのはワスディエ伯爵令嬢で、自分を肯定してくれる相手との会話というのは、たとえ装うばかりの社交の場と言えども、こうも居心地よくなるのもなのだろうかとなんだか面映ゆい気分になった。
その上、更に、
「そうねぇ、大変楽しませてもらったもの、お気になさらなくてよろしくってよ」
と、カティリュナ辺境伯までもが嫣然と微笑んで。
確かに、彼女に関しては最初から最後まで本当に楽しんでいたように見えたなと俺は深く、深く頷くことしかできない気持ちになったのだった。
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