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162・開いた茶会にて⑥

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 思った以上の劣悪さだ。
 そして今取り交わされている会話に何ら異論などなさそうな8人。
 見るからに気分を悪くしていそうなお二人をこのような席に同席させたこと自体が申し訳なくなってくる。
 と、言うか、彼女らは彼女らで正直そうだなとも思ったけれども、善良であることも間違いないのだろうと同時に判断した。
 俺の微笑みは崩れない。それをいったいどう受け取ったのか。

「公爵夫人はお美しくていらっしゃる。きっと教え甲斐がおありでしょうな!」

 まるで自分こそがと名乗りを上げたそうな様子のケレシーナル子爵の言葉に、スクエディ伯爵夫人とリドゥニア子爵夫人、加えてクワシュティン子爵令嬢までもが同意するように頷いている。
 え、いったい彼ら彼女らはどういうつもりでこの場にいるのか。
 少なくともこの8名には寄ってたかって俺を貶めたいという共通意識があるのだろうことだけは明白だった。

「今はご懐妊中でおられるのだとか。でしたらきっと魔力もたくさん必要でしょうからね」

 ぞっとしそうなほど、気持ちの悪い意図が含まれていることを言い出したのはスクエディ伯爵夫人。
 子供を育てる魔力は基本的に伴侶からのみ貰うものなのだが、そういったこの世界での常識のようなものさえ逸脱しそうな言葉で、まさかこの人は自分の子供を育てる時にも、伴侶以外の魔力を使用したのだろうかと流石にぎょっとしそうになった。
 否、俺はそういう存在だろうという貶めに過ぎないのだろうか。判断しかねる所である。

「あらあら、本当のことを言うばかりがいいとは限りませんわよ。いかに公爵夫人が飢えていらっしゃるかもしれなくとも」

 うふふとばかり微笑みながら、しかしその実、先程から話題になり続けているのは随分下世話な内容で。
 本当にこの人達は俺のことを、間違って認識したままなのだなと痛感した。
 正直このまま彼ら彼女らの話を聞き続けること自体、俺は全く何も思わないのだけれども、どんどん顔色を失くしていっている、一番遠い二人に申し訳なくなってくる。
 カティリュナ辺境伯に協力を仰ぎ、彼女と親しいだろう二人を呼んだ甲斐があったなとそうも思った。
 俺は自分の感覚が少々通常と違うことを理解している。なので、利用するようで重ね重ね申し訳ないのだが、あまりによろしくない会話の限界のようなものを、彼女らの反応で測ろうとしているのである。俺自身では全くわからないので。
 ちなみに勿論俺は、今身ごもっているお腹の中の子供を育てる魔力など、ラル以外から貰ったことは一度もない。と、言うか、そういった触れ合い自体ラル以外とは経験がないのだが、そういった部分さえ、この8名にかかれば曲解されるばかりなのだろうなと思いつつ、流石にそろそろ止めに入ることにしたのだった。
 例のお二人の顔色が流石に心配になってきた為だった。
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