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147・不快な結果と⑤
しおりを挟むいずれにせよ知識がいる。
俺の絶対的な見方といえる存在なんて、オーシュとディーウィの二人しかおらず、オーシュはあくまでも護衛であり、そういったことは全く得意ではない。そしてディーウィも俺の身の回りの世話を一手に引き受けてくれていて、そのようなことを調べる余裕などあるはずがなかった。
圧倒的に信頼できる人間が足りていない。敢えて言うならラルだけれども、彼を煩わせてばかりもいられなくて。
かと言ってこの屋敷の者たちでさえ、まだまだ信用しきれないのも確か。
流石に毒物の混入などはなくなっているし、ラルも警戒を強めてくれている。
ここ数ヶ月で新しく雇い入れた人材もおらず、怪しい者などは今の所見つかってはいないのだが、だからと言って信用に足るかと言えばそれはまた別の話。
こと、こういう知識だとか情報だとかに関しては、やはり最低限信用できる者から得たいというのが実際の所で。
諸々を踏まえ、ラルに教えを乞うことも出来なくはないのだけれど、公爵家当主というものは、それほど暇ではないのである。
この幾つかの招待状の送り主ぐらいなら、それほど多くもないので、休憩と称して日に数度、ラルが俺を構いに来た時にでも聞けばいいだろうけれど、どうせなら他についてもこの機会に一緒に把握しておきたい。そうなると流石に、ラルに教えてもらうには、時間を取り過ぎてしまうだろうと思われた。
ただでさえラルは俺を構い過ぎて、仕事を疎かにしがちとなっているようなのだ。そんなことは俺としても本意ではない。
後はなんだかんだで、必要ないだろうとか何とか言って丸め込まれてしまいそうな予感もする。
俺があまりそういったことが好きではないのは確かなのだ。それを見透かしているラルは、俺を甘やかそうと……否、囲い込もうと? するだろう。
つまり俺自身、率先して知るのは気が進まないのだけれど、そうしなければならないだろうなと思っているわけで。
「ラサスさんにお聞きになられてはいかがですか? 流石にあの方なら信用できましょう」
結局、ディーウィの口から出てきたのはこの家の執事の名前で。俺としてもそれしかないだろうと思っていた所だった。
「あー、うん。あの人も忙しそうだから、気が進まないんだけどなぁ……」
「ラル様におうかがいするよりましでしょう。と、言うか、フィリス様。そんな風に色々と理由をつけて、後回しにしようとしないでください」
必要だ、わかっている。しなければならないと思っている、それも本当。
だが、実際の所、ラルが見透かしているように、俺はこういうことをどうしても煩わしく思ってしまって。つい、色々と理屈を重ねて出来ない理由を探そうとしていることを、結局はディーウィにぴしゃりと指摘されることとなったのだった。
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