上 下
147 / 236

145・不快な結果と③

しおりを挟む

 そこから数日はとくに何事もなく過ぎた。
 とりあえずそれまでと変わらず暇だったことだけは確かで、俺はやることもなくむばかりの日々。
 相変わらずラルは俺を一歩も歩かせないと言わんばかりの態度のくせして、夜ばかり激しく、おかげで俺はほとんど毎日、昼近くになるまでまともに起き上がることすらできなかった。

「仲がいいのは良いことですよ」

 などとしれっと言ってくる辺り、ディーウィは俺が夜、ラルと仲良く・・・していることについて特に反対していないらしい。
 俺自身が拒絶していないというのも大きいのだろう。
 自分も受け身のくせに、俺の苦労をいまいち理解しないなと恨みがましく思ったが、同時にだからかとも思い直す。
 確かに、ラルとの激しい夜は俺を疲弊させているのは確かなのだが、その実、ラルは今では充分に俺を気遣ってくれていて、俺は毎晩とろとろに蕩けてしまって、むしろ場合によっては自分から望みさえする有様。俺の不調だって、主に睡眠不足と怠さ程度であることがディーウィには伝わってしまっていた。
 なお、俺の不満は夜の激しさよりむしろ退屈の方である。
 それを考えると午前中だけでも潰れるのはそう悪いことでもないのだろうか。
 否、それとこれとはまた別の話のはずだ。

「ところでフィリス様、また招待状が届いておりますが」

 相変わらずいつものサンルームのある居間のような部屋のソファで。ディーウィにより、思いっきり姿勢を崩してだらしなく腰掛ける俺へと示されたのは、あの夜会以降、数多く届くようになった茶会への招待状。
 余程に俺が気になるのだろう。
 だけど、そこに記された名前はどれもこれも知らないものばかりで辟易した。
 うーん、これはこの国の主だった貴族に関してだけでも知っておくべきだなと反省した。
 一応夜会前に、そういった事前の知識の詰込みは必要なんじゃないかとラルに申し出てみたのだが、ラルはそんなもの覚える必要はないというばかり。

「この国の貴族なんて、ろくなのいないんだから、フィリスが覚える必要なんてないよ。重要そうな人物は、僕がその都度、伝えていくからね。そもそもフィリスは社交とか得意じゃないだろう? 僕はフィリスに苦痛なことを我慢して行ってほしくなんてない」

 などとまで言ってきて、ひとまず今は身重でもあることだし、夜会まではいいかと引き下がった。
 ラルの言うとおり、全く社交など気が進まなかったというのもある。
 だけど同時に俺だってわかっている。
 この国でラルの伴侶、公爵夫人として生きていくのなら、そんなわけにもいかないということぐらい。
 だから俺は必要に迫られてという辺り、情けない話ではあるのだが、この招待状を送ってきている送り主たちのことだけでも、知っていかなければなと思っていた。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章2025年1月18日より投稿予定 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

囚われ王子の幸福な再婚

高菜あやめ
BL
【理知的美形宰相x不遇な異能持ち王子】ヒースダイン国の王子カシュアは、触れた人の痛みを感じられるが、自分の痛みは感じられない不思議な体質のせいで、幼いころから周囲に忌み嫌われてきた。それは側室として嫁いだウェストリン国でも変わらず虐げられる日々。しかしある日クーデターが起こり、結婚相手の国王が排除され、新国王の弟殿下・第二王子バージルと再婚すると状況が一変する……不幸な生い立ちの王子が、再婚によって少しずつ己を取り戻し、幸せになる話です

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

処理中です...