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140・初めての夜会⑱
しおりを挟むまず、見た目からして男らしく体格が良く、顔の造作だって整っている。
加えて金髪に赤い瞳をしていて、それぞれ非常に色鮮やかだ。その色からわかるとおり、魔力の多さだって高位貴族として申し分ない。
体術や剣術の武に対してどの程度造詣が深いのかは機会がなかったので俺にはわからないし、知識量や学力的なものも同様。ただ、話していて頭が悪いだなんていう風には感じなかった。
そもそもそういった能力が低ければ、この若さで爵位を継承することなどできなかっただろう。
そして俺の知る限り人格と言うべきか、性格も悪くはない。
少しばかり強引で暴走しがちなのと閨での容赦のない際限のなさを除けば、他の部分ではしっかりと思いやり深くさえ感じられた。もっともこれに関しては俺限定という可能性もなくはないが。
最後に今もこうして目にしている限り、仕草などにも品があり、礼儀やマナーなど含め、特に指摘できるような部分など何もなかった。
つまりむしろ完璧と言っていいほどの存在なのである。
そんなラルが、付け上がる。
ラルに対してそのようなことを言うこの男こそ、いったいどういった立場にあるというのか。
俺は男の紹介を受けていないし、ラルもおそらくは会えて男に俺を紹介していない。否、その前にこのような会話になったというべきだろう。
そしてどうやら顔見知りではあったらしい男も名乗ってはおらず。俺はこの男の爵位さえ知らないので、男の妥当性だとかは全くわからないのだけれど、ラルを閣下と称する辺り、侯爵以下であることは間違いないはずだ。
つまり、ラルよりは間違いなく下。にもかかわらず先程のようなことを口に出すだなんて。
確かに、これでは無能で不要だなぁと、俺は陛下の判断基準に脱帽する思いだった。
ようは俺の存在が不要な無能のあぶり出しに都合よく使われたことにもなるのだが、そのぐらいはかまわないかと、そうも思う。
ラルはこれに対しても少し不満のようなのだけれども。
そんな風に素知らぬ顔をしてぼんやりと思考を遊ばしていた俺の方へ、ここで初めて明確に男の視線が向けられた。否、ラルに話しかけられる前まで注がれていた、気持ちの悪いそれ以来改めて、と言うべきか。
そうして、俺へと向けられた視線に籠るのは侮蔑。
「お前もっ! よくもこのような場にまでおめおめと顔を出せたものだっ! それも恐れ多くもそのような髪色や目の色を装ってまでっ! 貴様のような存在そのものが我々を愚弄していると知ってのことかっ!」
そして吐き捨てられた言葉に俺はぱちくりと目を瞬くことしかできなかった。
おおっと、こちらに矛先が向かってくるのか。割と命知らずだなぁ、この人。そう思いながら。
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