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137・初めての夜会⑮
しおりを挟む「追従していた彼は、何人目かの伴侶だよ。確か彼女自身の孫と同じぐらいの年だったはず。彼女、あんな感じの連れ歩くのにちょうどいい、線が細い、暑苦しくない見た目のがタイプなんだよ」
アクセサリーか何かなのだろうか。
孫と似た年齢の伴侶。
それはまた随分と年の離れた夫婦である。
非常におとなしそうだった彼は、どう控えめに見てもラルよりもよほど年上に見えた。
それでも30か、きっと40には届いていない。
しかし、彼が孫だというのなら、もしや彼女の年齢は場合によっては100を超えているのではないだろうか。
ならばこそあの成熟しきった妖艶さも頷けるというものだろう。
髪の色は鮮やかな青。目は琥珀。色味からしてもおそらく魔力は多い。
俺は小さく頷いた。
「アンセニースの社交界で言うと生き字引みたいなものだから、結構、彼女の存在は大きいんだ。あの反応でわかるとおり、陛下曰くの無能でもないしね。フィリスが、彼女に認められたのは大きい」
ラルの言葉を裏付けるように、今のやり取りを見ていたからだろう、寄越される視線は少しばかり変化している。
「今ので随分とふるいにかけられた感じもするね。ひとまず、今のやり取りを見ていただけで、視線から棘が減った人たちに関しては、無能ではないと判断して問題ないんじゃないかな。少なくとも彼女には追従するだろう人達なのは確かだから、表立って何かしかけてきたりはしないはずだよ」
なるほどと俺はやはり小さく頷いた。
余程先程の彼女の存在は大きかったのだろう。わからないでもない。それぐらい存在感のある女性だったのは確かだ。
「逆に言うと、さしづめまだまだ刺々しい視線を送ってき続けてるやつらは無能候補ってことだな」
「そうとも言うね」
ならばと今度は俺の方から囁いた言葉に、ラルも小さく頷いた。
そして二人して気付く。
「はは。言っている傍から。……来たね」
ラルの告げる通り、またしても近づいてくる気配。
今度は男性だ。
貴族らしい傲慢さが見た目にも滲み出た男。
彼女よりよほど狡猾そうな雰囲気を持っていて、かつ、俺へと注がれた視線は、刺々しいというよりは、気持ち悪いことに、悍ましくも非常に好色そうな、それでいて侮蔑を孕んだそれだった。
いったい俺はこの男に。どのように見られているというのだろうか。
想像するだけで怖気が走る。
視線からでもわかるそれは、ただひたすらに気持ち悪いばかりだった。
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