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134・初めての夜会⑫
しおりを挟む勿論、それを周囲に気取られるような真似などせず、それでも俺に伝わってきたのは、俺自身がラルの存在にここ数ヶ月で慣れてきているからなのだろう。
これぐらいなら察せられる。
「本当に大丈夫だよ、ラル」
俺はラルが安心できるようにと微笑んだ。
確かに、俺はそもそも注目を集めることそのものに慣れていない。
むしろ幼少期は存在をない者とでもされているかのように育って、ナウラティスではただの学生で、少しばかり社交の場での経験はないわけではないが、そんなもの数えるほどだ。
それにあの国では、好意的な視線ならまだしも、こんなに刺々しい眼差しを誰かに注ぐような人間は全くと言っていいほど存在していなかった。
国が違えばこうも違うのか。いや、違う、ナウラティスが特殊なだけだ、証拠にコリデュアでは、これほどまでではなくとも似た視線に覚えがある。特に他でもない王妃からの視線がつまりこれをもっと更に強烈に毒々しくしたものなのだから。
それら全てを理解しているのだろう、ラルの気遣いがわからないわけではなかった。
だけど、本当に。こんな視線ごときを気にするほど、極端な話、俺は他者に興味がないのである。
正しく言うなら、他者に自分がどう見られているのか、ということそのものが言ってしまえばどうでもいい。
どのような思惑で、どのような眼差しを俺へと注いできていようとも、直接、俺の元へと届かない視線ごときが、いったい何だというのだろうか。
興味もなければよく知りもしない誰かにいったいどう思われていようとも、俺は全く気にならない。
直接何かを仕掛けてくるようなら、それは勿論、別ではあるのだけれど。
否、実の所、これまではその上で更に彼らが俺に具体的に何をしてくるのかなどということも含め、興味がなかったのだが、それに関しては少しばかり、最近考えがわかってきた自分を自覚している。
もし彼らが俺を害したら。
それを気にする者たちがどうやらいるらしいことを、理解できるようになって来たからだ。
そういった者たちというのは、総じて、俺にとっても大切だったり重要だったり思える者たちばかりで、俺はそういった相手が辛そうにしていたりだとかするのを見たくはないのである。
俺がどうにかなって彼らがそのような顔をするというのなら。俺はそもそもそんな状況に陥らないように、気をつけなければならないのだろう。
今、ラルにこんな雰囲気をさせてしまっていることも。やはり良くはないことなのだ。
ただ、今ばかりは俺自身でどうにかできる状況ではなくて。今、俺が出来ることは、ラルを安心させるように、大丈夫だと示すことだけだった。
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