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127・初めての夜会⑤

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 ただ、流石に外に出たいというのには難色を示されて。

『もう少し待って。今はまだ、いろいろと落ち着いていないし。フィリスなら大丈夫だとは思うんだけど……どうしても心配なんだ』

 そんな風に言われると、反対を押し切って、などとまでは思わず、ならいいと結局引き下がった。
 元々俺はそれほど外出を好んだりなどしていない。ただ本当に暇なのだ。だから言ってみたに過ぎず、別にそこまで外出したかったわけではなかった。
 一応もう少しいろいろ落ち着いたらラル自身が連れて行ってくれるということなので、それを待つのでいいかと思っている。
 そんな風に、言ったこと全てが叶うとまではいかないけれど、可能な限り、俺の希望に沿うようにしてくれているのは確かだった。
 ついでに俺の世話自体も率先して従って、一部ディーウィにまで牽制しているような様子を見せた。
 俺の身の回りの世話はディーウィの仕事なのだ。
 俺は基本的に出来ることは自分でしてしまうのだが、公爵邸で過ごすに相応しい服装ともなると、ナウラティスで研究に没頭していた頃の、平民と同じような服だったり寝間着のようだったりするような適当な物などではすまず、場合によっては人の手がないと難しい部分に留め具があったりして、そういった服装を用意したり整えたりがつまりディーウィの仕事の一つ。
 そんなディーウィの仕事を、ラルは度々したがるのだった。
 かと思えば決して手際がいいわけではなく、人の世話など焼き慣れていないのが明らかで。そうまでして俺に尽くしたいのかと思うと、悪い気がしないのも本当の話。
 そういった細々としたことがそれはもう多く積み重なって、俺はなんとも言えない心地になっていた。
 誰かに、こんな風に扱われたことは初めてだ。
 コリデュアでは本当に放置されていたし、父王は俺をかわいがってはくれていたとは思うけれど、そこまで俺に関心があったわけではなかった。ただ見かけたり、王城で行き会ったりした時に頭を撫でられたり、抱き上げられたりしたことがある程度。父はあれでも王として忙しく、子供に構っている時間などなかったのである。
 おそらくは母のもとへと通うために、国にいる間は余計に忙しくなっていたのだろう。
 人との触れ合いなどそれぐらいで、5歳になる前は使用人が当たり前に世話を焼いてくれていたと思うのだけれど、おぼろげながらやはり接触は最低限だったような覚えがあった。
 甲斐甲斐しい世話など、本当に焼かれた覚えが全くないのだ。
 ディーウィは従者で、あくまでも従者としての距離感を逸脱した触れ合いなどするはずもない。
 その辺り、やはりラルは様子が違っているように思えてならなかった。
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